評価p 書名 著者 出版社
★★★★★ わがセクソイド 眉村 卓 角川文庫(絶版)
(ごめんなさい。絶版です。でもどこかが復刊して欲しい。ハルキ文庫あたりか!!)
 まず本作の一部をごろうじあれ。
「これをあわれというのは、いう奴の方がおかしいのだ。物質的にだけ充足し、せいたくするのだけを目的にしている連中には、この真の価値は永久に判るまい。人間の幸福というものが、そんなものできまるわけがないのだ。(…中略…)そして、彼は今それ(=幸福)をつかんでいた。その絶頂にあった。
 彼はレーザーガンを床に置くと、もう一度きつくユカリを抱きしめて、接吻をした。
 最後の接吻だった。それで彼は、本望であった。 」
 ネタばれでもなんでも、筋を解説しないとこのかれの独白とその後の文章の響きが伝わらないと思うので、書かせて下さい。筋書きと上の情景のシチュエーションは以下の通り。
 未来の社会でソープランドならぬセクソイドセンターというアンドロイドが相手をする風俗が存在した。そんなところに絶対行きそうもない堅物の主人公は、友人たちにそそのかされて、引っ込みつかなくなって一度いってみると1体のアンドロイド(=ユカリ)にはまってしまう。
 ずっと通い続けているうちにアンドロイドの性格改造処理がユカリに施されてしまうことを知った主人公は耐えられずユカリをセクソイドセンターから奪いだす犯罪を決行。機械の性格改造を人格の抹殺と捉えたんですね。(←ここら辺がSFしてます。)しばらく幸せに家庭をもってくらすが、居場所がばれて止む得ず人を殺してしまう。
 上のシーンはいよいよ追いつめられて、死を覚悟する直前の独白。
――書いててあらすじはむちゃくちゃだなと思うのだけど。忘れられないアンドロイドものです。このすぐ後のラストシーンもすごいとおもいました。主人公が死んだあと、アンドロイド・ユカリは取り囲む機動隊に銃を発砲するのです。ロボット工学3原則からはありえない展開でユカリの意志の発動を感じます。
 この「セクソイド」もそうですが、機械が意志をもつのはSFの真骨頂。愛であれ、叛乱であれ、SFにしか許されていない劇的なドラマだと思います。(実は海外まで含めるとたくさんあるんだけどエドマンド・クーパーの「アンドロイド」に始まって、映画の「A.I.」とか、「マトリックス」シリーズだってそうですね。日本のじゃこれが一番好きです。)
 さて眉村卓さん。もう古いです。とても沢山書いていて、ハルキ文庫などにたくさん作品が甦っているのですがそこから漏れている本作が僕は一番すきです。角川春樹さん。こいつをお願いしますよ。「消滅の光輪」?「時の旅人」? 違いますって「わがセクソイド」です。
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