評価p	書名	著者	出版社
★★★★★	スラン	A.E.ｳﾞｧﾝ・ﾎﾞｰｸﾄ	早川文庫
まず本作の一部をごろうじあれ。（パターン量産型はいかんのですが...） 「まだすっかり眠りには落ちていないらしく、ふしぎな、喜悦に満ちた思念が、心の底から湧きあがってきた。なんとすばらしいことだろう。やっとさがしあてたスランが、こんなに目のさめるような美人だなんて。 −そしてこんなに男らしい青年だなんて。− いまの思考は自分のだろうか、彼女のだろうか？――ぼんやりとかれはいぶかった。 　わたしのよ。ジョミー。」 　人間に迫害されるミュータント＝スランの少年、ジョミー・クロスのお話。 　この小説いきなり迫害の手が伸びる逃亡シーンからはじまり、すごく引き込まれました。逃亡を重ねて人間達と戦う準備を整えつつある少年ジョミーはついに純スランの少女をみつけ、彼女が美しいという思念を持ちます。 　精神感応で分かり合える２人は即座に思念で会話してしまう。すごくＳＦらしいラブシーンだなと記憶にのこっています。（ある人にそんなのただのバカップルやんかといわれて悔しかったですが。まあいいや。異性に恋愛感情を抱いて、やましいものが心中に無い人だけがこのシーンの美しさを理解してくれるでしょう。） 　本作はミュータントものの草分け。社会から迫害されるスランと追い詰める人類の指導者キア・グレイ、キアグレイ配下のクーデター、架空に作り出されたSFの世界にリアリティを与えるガジェットが目白押しでした。ジョミーの切ない戦いに思いっきり感情移入しました。 　「宇宙船ビーグル号の冒険」とかＳＦの歴史に残る名作を残している著者ですが、僕はこっちの方が面白かったですね。これが絶版になることはないでしょう。本作は古いものですがいろんなＳＦが量産されたいまでもなおお勧めです。

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