評価p | 書名 | 著者 | 出版社 |
★★★★★ | 百万回生きたねこ | 佐野 洋子 | 講談社 |
絵本です。とても長い間人気のあった絵本でネットでいくらでも書評が見つけられます。アマゾンなんて今日現在で39件です。 年とったのかな、涙腺もろくなっているのかも知れません。この絵本を読むと本屋さんで他人が周囲に何人いようが、目が潤んできます。なんでって言われてもうまく説明できないんですがとにかく泣けちゃうんです。でも説明してみます。でなきゃ書評じゃないから。 本作は何度も生まれ変わったネコの話。いっつも誰かに飼われて愛されていたネコは死んでは生まれ変わって、ドロボウになったり、サーカスにいたり、百万回生まれ変わりました。泣いたことがなく、(たぶん)元気一杯に生き抜きました。 初めてネコがノラネコとして生まれ変わったとき、ネコ(オスネコです)は女のネコたちにモてまくります。でも百万回ネコになんの興味も示さない白いネコがいます。 『「おれは、百万回も しんだんだぜ」 ねこは そういいました。 白いねこは、「そう。」といったきりでした。 「おれは、百万回も・・・・・・・」 といいかけて ねこは、 「そばに いても いいかい。」 と 白いねこに たずねました。 白いねこは、「ええ。」といいました。 ねこは、白いねこの そばに、いつまでも いました。』 白ネコのそばでくらすようになるこのシーンは最高のラブシーンですね。下手な作家さんの恋愛小説を余裕で飛びこえています。絵本って恐るべし。 百万回ネコと白いネコは幸せに暮らします。かわいい仔ネコたちに囲まれて、そしてちょっと年をとります。この幸せな様子で僕はちょっと涙腺刺激されます。ああよかったって本当に思うのです。下手な解釈つけてもよくないでしょうが、ネコははじめて自分から「他者」をすきになったのです。そして愛されるよりは愛する方の能動的な喜びに満ちている。 ところがそのすぐあとに、(絵本ならでは許される展開のはやさ)白いネコが死にます。百万回ネコは泣いて泣いて泣きまくるのです。まず、理屈抜きでこの悲しい物語に涙します。このときの絵とひらがなの醸す雰囲気は絵本という媒体のもつ威力を知らしめてくれました。 こどもに読んで聞かせて分かるのかな、大人こそこの本がいいんじゃないかと思います。 そしてラスト 『 朝になって、夜になって ある日の お昼に ねこは なきやみました。 ねこは、白いねこの となりで、しずかに うごかなく なりました。 そして ねこは もう、けっして 生きかえりませんでした。』 号泣しそうなほど泣けました。今思い返すだけで泣きそうです。 |