評価p 書名 著者 出版社
★★★★★ アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス 早川書房
 けえかほおこく。・・・から始まる珠玉の名作。 ああ目頭が(うるる)...。
 ネタをばらさないと解説かけんので、ネタバレ困る人は今すぐ右上の×ボタン押して本屋でこの本を買って読むように!!一家に一冊おいておいて子々孫々まで読ませるべき本です。これ読んで屁とも思わん人はたぶん赤い血が流れてないです。
 ネタバレでもよければ下を読んで、是非、本書を買って読もう。
 


 準備はいいですか?  では。ネタバレ書評です。

 32歳のチャーリーゴードン。知能障害を持ち幼いときにあまりちゃんと親の愛を受けられなかった彼がとある脳外科手術を受け、その経過報告を綴っていくという形式でかかれた作品です。
 手法がとても実験的で、翻訳が果たして原文の雰囲気を伝えているのかなと思い、原作と、解説つきの対訳書も読んでみました。「大丈夫!」ばっちりの訳です。冒頭の適当に間違った英語の雰囲気がずんと伝わってきます。
 知能障害を持ちながら書いている拙い文章を追いかけていくと、彼が心の底に持っている色んなコンプレックスがジンジンと伝わってきます。母親にちゃんと愛情を注がれなかった彼の苦しみや周りの人に馬鹿にされても気づかない彼の純粋さが、彼のけえかほおこく(経過報告(Progress report))から、しっかりと伝わってきます。
 やがて彼の経過報告はとてつもなく知的な文章になり、彼を見守っていたやさしい養護学校のキニアン先生が恋愛の相手になります。そして最高度に知性が発達したチャーリーはやがて手術が失敗であり、いずれ自分が元より知的能力に障害をこうむることを悟ります。最後に脳外科学上の大論文を書いて、悲しい結末を迎えます。
 自分に脳外科手術を受ける前にネズミが試験体になりました。そのネズミの名前がアルジャーノンです。チャーリーは迷路を抜ける試験でネズミのアルジャーノンより成績が悪かったのです。「ねずみがあんなにあたまいいとわしらなかた。」と彼はいってました。
 知性を失い始めた彼はだんだんと自暴自棄になりますが、やがてキニアン先生や手術をした教授に心配するな、知性ある人たちの世界が一瞬かいま見れてよかったというのです。人に馬鹿にされたって、笑わせておけばいい。そうすれば友達なんて一杯できる。そういいます。最後の2−3ページは本当にすんなり心に響きます。
 最後に発狂して死んだアルジャーノン。チャーリーは「ついしん。どーかついでがあったらうらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやてください。」と最後の報告を締めくくります。そうやって彼が最後の知性をふりしぼって書いた手紙文はいつ思い出しても心を打ちます。
 ダニエル・キイス他にも色々かかれているようですが、本作の印象強くて他を読んでみようと思いません。多重人格者? 面白いのかなぁって感じで。(いいのあったら教えて下さい。)たぶん、コンプレックスに悩まされ、愛情に飢えているチャーリーの姿と、精神薄弱の世界から知性の頂点に立ち最後に再び精神薄弱の世界へ帰っていくその様子のリアルさが読者を揺さぶるのだと思います。そして彼が最後に語る文章がまた優しい気持ちに満ちているのも魅力なんだと思います。これはネタバレで読んでも全然OKな作品。本来の文学だと思います。僕はまじでしょっちゅう読み返しています。
 本作の謂れを書いておきます。アメリカではヒューゴー賞とネビュラ賞という2大SF文学賞があります。この二つを同時受賞することをダブルクラウン(二冠)といって、最高の評価をされたと見なします。まだネビュラ賞の無かった1959年に本作の元になったもうちょっと短いバージョンでヒューゴー賞を受賞しています。そして焼き直しが1966年にでました。それが本書です。ネビュラ賞をとっています。ヒューゴー賞にもノミネートされたようですが、同じアイデアの中篇がすでに過去受賞しているということで却下されました。でもいってみれば実質史上最初のダブルクラウンです。
 ヒューゴー賞の傑作集Aという本の中で、有名なエピソードが載っているようです。アイザックアシモフが「どうしてこんな傑作ができたのでしょうか?」と聞いたら、キイスは「もしそれがわかったら教えてくれませんか?もう一度あんなのを書いてみたいのです。」と言ったそうです。まあ、アシモフには絶対かけなかった作品です。あの人は登場人物の感情なんてお構いなしで将棋のコマみたいに扱うから。設定はSFだけど本作はSFなんて範疇におさめるものじゃないです。
 繰り返すのですが、一家に一冊おいておいて子々孫々まで読ませるべき本です。ちなみにこの作品映画になっているそうです(邦題:真心を君に)。色々とアカデミー賞の部門を受賞しているそうです。俳優さん(<=名前忘れました。)がリアルな演技をしようと利き腕と逆の手で字を書いたりして練習したそうです。ストーリーにほれ込んだようです。映画の主題テーマ曲Midiがいつもお世話になっているみかちんさんのHPの別館で聞けます。(下のリンクでいけます。著作権の問題があって僕はこのサイトにその音楽を置けません。JASRACの許可が要りますから。ところでみかちんさん本当に色々弾いてくれます。みんな上手ですね。)
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