評価p 書名 著者 出版社
★★★★★ 四日間の奇跡 浅倉 卓弥 宝島社文庫
 1月23日現在、読みたてのほやほやです。(作品の発表年は古いですが。)
 本作に出会えたことに感謝しています。この「ミステリーがすごい大賞」なる新人賞の金賞(最優秀賞)です。新人賞にしては出来すぎです。僕の涙腺がもろくなってるのかも知れませんが、結構感涙に咽いでしまいました。美しくて、哀しくて、優しい物語です。
 元ピアニストの主人公と脳に障害を持つ少女の物語です。やむ得ずピアノを弾くことを断念しなければならなかった主人公が暖かく少女を思いやっています。目に浮かぶように鮮やかに描写されています。少女は主人公とは血縁上なんの関係もないのですが、少女が幼い頃に強盗事件から救ったことが縁で保護し、育てることになります。その事件でピアニストは左手の指を一つ失い、そして結局少女の実質的な父親になります。
 もうこれ以上ネタばらさないでという人はここで「ホーム」か「書評一覧」に戻りましょう。でもこの本買って読むように、損はしない。日本人に生まれて、あるいは日本語が読めて、この本読まないのは絶対損です。
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ネタバレでもいい!さらに大那の書評を読む




















































































 いいですか。ではネタバレ書評です。(とは言っても少しは考慮しています。)
 ネタばれ注意しながらさらに語ると、本作の重要な設定は以下のとおり。
 精神薄弱者がある特定の分野に常人の及ばない特殊な才能を示すことがあります。英語でイデイオ・サヴァン(idiot savant)といわれる症状ですが、本作で少女はこれに該当します。ピアノがとてもうまい。楽譜が読めないので、曲を聴くと暗譜ならぬ暗曲して、まったく聞いたとおりに弾いてみせるという才能の持ち主です。(この才能は相当羨ましいゾ。)
 ピアニストは少女の才能に気づきピアノを教えます。少女はとてもうまくなり、ピアニストはちょっと嫉妬を覚えながらもとても優しく少女を見守ります。ある施設で主人公はとても重要な人と会って、そこでピアニストと少女とその人物の間でとんでもない事件が起こります。事件は終わりくらいのところでとてもびっくりする展開を示します。あのキスシーンはなかなか思いつかないぞ。泣けてしまった。(でも、仕掛けはどこかで見たような気がします。筒井康隆さんの「エディプスの恋人」とかと類似かな。)そこまでの主人公の逡巡、登場人物の初恋、少女の屈託のない振る舞いが激流のように思い起こされます。うーんいい話だ。
 宝島社は完全かつ着実にに文芸界で足場を作ってますね。楡周平さんより、浅倉卓弥さんの方がおお化けするでしょう。僕はいい話だと本作に無邪気に感動していますが色々な設定をかなりしたたかに作らないとこういう作品はできないはずというのはよくわかります。作者の手のひらで踊っているわけです。張り巡らされた伏線が、(女性の単なる饒舌なおしゃべりみたいなのも含めて)よく絡み合っています。これがいきなり書けるのはすごい。新人なのでしょうか?
 よく作家は処女作を超えられないなどといわれることがあります。いままで処女作がすごかった人ほどそれが当てはまるように思えましたが、浅倉さんはそうおもえません。とても余裕で書いているように感じるのです。(違ってたらごめんなさい。)近いうち大ブレークするんじゃないかしら。本作も10万部も売れたらしいし。そういえば一年ぐらい前に新聞の書評にのってたような気もします。絶賛だったかも。
 ところで本作、予算少なくても様になると思うのでどこかが映画化してくれないかな。低迷する日本映画に嵐をもたらすかも。でも主人公は優しそうなハンサムガイでないとキマらん。SMAPとか最近の若い奴はだめだな。少女や登場人物も豪華に決めてだれかやってくれんだろうか?
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