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★★★★★ 邪馬台国はどこですか? 鯨 統一郎 創元推理文庫
 創元推理の短篇賞に応募して、敗れたそうです。宮部みゆきさんが本作の「邪馬台国」をとても高く評価したみたいです。表題の「邪馬台国」の他、色々な歴史珍説が登場人物たちの語りで繰り広げられます。
 この人の作品は2作目です。ミステリアス学園というこれまたすごいメタフィクションを読ませてもらいましたが、デビュー作の「邪馬台国はどこですか?」(たぶんそれなりに話題になったと思います。)の方がお勧めです。これを最近古本屋で買って読んだのですが、リアルタイムで読んでなかったのが恥ずかしいほど面白い。
 作品はほとんど会話文で占められています。活きのいい会話だと思います。会話の舞台はカクテルバー。歴史研究している教授と講師、正体不明の男、バーのマスターが登場人物。その中の正体不明の男が独壇場でウルトラ歴史珍説(というより、与太話)をまことしやかに語っちゃう。知的なギャグの本。
 曰く「お釈迦さまはインポで家庭不和だった。」(罰あたるぞ、おいおい。)、「邪馬台国は岩手県にあった」(これマジかも?)、「聖徳太子と推古天皇と蘇我馬子が同一人物だった。」(うーむ。「人麻呂の暗号」よりは説得力あるぞ。)、「本能寺の黒幕は信長自身」(これは今ひとつ乗れなかったぞ)、「勝海舟は催眠術師」(伝奇小説かこれは? 荒俣宏さんにこのネタ料理してもらおうよ。)、「ゴルゴダの丘で死んだのはイスカリオテのユダだった。」(これ凄い。マジですごい泣ける小説になるよ。パロディのネタにするのがもったいない位のウルトラ与太話。)
 結構根強いファンがいるみたいですね。鯨さん。与太話の天才です。メジャーになれないのはお釈迦さまの罰じゃないかと思うくらい面白いです。どうやって思いつくのか想像もつかない凄い与太話。余人にかけぬ作風をしっかり持っている。邪馬台国の話はまじめに検討する価値があるんじゃないかと思われるリアリティを感じます。ちゃんと歴史ミステリになっている。
 登場人物の個性も面白いですね。「ハードカバーじゃなくて、文庫で読みたい」そんな感じです。退屈な待ち時間とかにこっそり出して読んで、心の中で笑いたいです。さて、本作古いけどまだ現役で売れてます。創元推理文庫の良い所は面白いのが長く売られること。感謝してます。本作はお奨めです。
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