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★★★★ 狼は瞑らない 樋口 明雄 ハルキ文庫
 尊敬できる父ってカッコいいです。本作の冒頭30ページくらいで、無口で強い父の面影と悲劇の少年をさっと描き出してしまいます。「お前のとうさんを誇りに思え。」という言葉に涙した少年は、やがて屍のように重く心の扉を閉ざしたハードボイルドオヤジと化して、政治家の口封じ対象としてヒットマンに追われます。山男たちが結束する姿が美しいです。山をしらん者には決してかけない物語なんでしょう。山物は色々ありますが、やっぱりカッコいいですね。屋上にさらに屋根を被せるようですが・・・やっぱりいいですね。どんな屈強な男でも、過酷な自然の中ではへばりつくゴミのようなものです。山の舞台では冬の雪も夏の豪雨の鉄砲水も一瞬にして過酷な自然を作り出す。
 最近は、なかなかかいてくれる人がいなかったタイプの本ですね。「ホワイトアウト」とか事件の設定にこった小説がいくつもあると思いますが、本作は主人公や周囲の人物の過去の生い立ちが作りこまれて良いと思います。恋愛のでてこない、強い男たちの物語です。
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