評価p | 書名 | 著者 | 出版社 |
★★ | 雨の牙 | バリーアイスラー | ビレッジブックス |
だいぶん前に朝日新聞で書評見て早速買いました。でもなんだかノレなくて読み終えにくかった。(そんなに厚い本じゃないのですが・・)自然死に見せかける殺人を得意とする日系人の殺し屋が被害者の娘を愛してしまう・・・と。「被害者の娘を愛してしまうぅ。」 うーん。なんだかどこかで聞いた設定。 外国人の書く恋愛はよくわかりません。主人公はピアノバーでママさんから紹介された娘「ミドリ」をいたく気に入ってしまいます。それまで、色々付き合っていた日本人のカルーイおねえちゃんたちは彼女の前では突然何の意味もなくなってしまったとかそんなことを書いてます。(「ケイコちゃんを誘い出してホテルに行けば・・・いやもはや何の意味もない。」とかなんとか。) 一方、ミドリの方も気に入ったみたいで、超人気者のアーティストなのにいきなり自分のライブに誘ったら、主人公はホールで顔パス、特別席に直行ご案内。・・・・ライブ終わってハネた後にバンド仲間に混じって打ち上げに参加しちまう。そして見かけばっちり日本人の主人公が日本語ペラペラらしいのにミドリは突然「今日は英語で話しましょうよ。」ときたもんだ。ライブ仲間は突然日米の文化論みたいなのをぶち上げて「日本の政治は土建屋とヤクザに金がじゃぶじゃぶ流れる仕組みになっているんだ・・・」とか言い出す。政治の話で座がしらけたら仲間が「君が皮肉屋だということは良く解ったよ」とか英語の三文芝居で聞いたようなセリフを抜かす。・・・ 外人さんは自分の国の話を書いた方がいいですね。僕にはまったく会話やストーリの運びが納得いかない。 一見さんに特等席を振舞って、仲間うちの打ち上げに誘う人気女流アーティストがいるか? 英語で話しましょうよ? 君は皮肉屋だねぇ? この作者はきっと白人で六本木あたりでよっぽど馬鹿な日本人女に遊ばしてもらって感覚狂ってんじゃないか・・とか。お前らモテテいいなあ。でも日系人がその待遇はないぜ。・・とか。俗っぽいいちゃもんもたくさん思いつくのですが、何よりもストーリーに納得のいく葛藤がないんです。 「俺は彼女の父親を殺した男だ・・・でも彼女は俺にとって特別だ・・・」とかね。まーったく身勝手な葛藤ばっかり。 日本の東京の描写はばっちりです。でも、日本人がまず示さない行動や言動が鼻につきます。外人ってあんな感性で会話をするんだろうか? 翻訳物の小説読んでもここまでどんくさく感じないぞ。東京に長く住んでたんだろうし、地理感覚はばっちり。おそらく日本潜伏のCIAの描写や外人ジャーナリストのことはリアルなんでしょうね。(ちなみに作中のブルフィンチなるジャーナリストと同イニシャル同名の人物がまったく同じことを言ってる本を見つけました。)しかし、そこに流れている物語は日本じゃないぞ。たのむからもっとこだわってくれ。ノレないじゃないか。 昔「SHOGUN」なる映画がありましたがその中で大名トラナガが通り過ぎる人から「こんにちは、トラナガさん。」と声をかけられてました。・・・もうストーリーも何もかも忘れてしまうほど記憶のかなたにあるのにこのシーンは(ショックで)忘れられません。おかしいでしょ? 小説って空気が大事ですよね。ストーリーなんて修飾をとっぱらえばどれもどっかで読んだようなものだし、それでいいんだけど。でもディテールが醸す入り込める世界ってものを作品に求めちゃいます。本作品の場合はなかなか入り込めなかった。舞台がアメリカかイギリスなら面白く読めたのかも知れません。期待してた分、がっかり度が大だな。 |