評価p 書名 著者 出版社
★★★★★ 火怨 高橋克彦 講談社
 東北地方の古代史ってロマンですね。熱い男たちの物語りが繰り広げられています。日本版のラスト・モヒカンといっていいかも。先住民族の併合される歴史が熱くかかれます。
 高橋克彦さんの小説は本格的に読んだのはこれが初めてでした。
 以前、紹介した異形シリーズや文芸誌などにだされていた短編がなんとなく肌にあわず、何度も話題になっているのに読まなかったんです。これは吉川英治文学賞受賞作とのこと。
 つい先日平泉に旅行に行ったのでだいぶ前に評判になった「火立つ(ほむらたつ)」を読もうかなと思って本屋に行ったらもうちょっと古い時代のアテルイという人物を題材にした本書に出会いました。
 こっちから順番に読もうっと...
 世の中読む本いっぱいあっていいですね。
 歴史でならった初代の征夷大将軍、坂上田村麻呂という名前を皆さん覚えているでしょ。本作の主人公はその田村麻呂に抗った蝦夷(えみし。東北地方先住民)の英雄アテルイの物語です。
 金が見つかった東北地方に日本朝廷軍が幾度も大軍を送り込んできます。アテルイらは数千の兵で蝦夷の将軍たちをまとめ上げて、朝廷の軍を追い払います。蝦夷の将軍たちの格好いいことこの上ない。幾多のシーンで感動させられてしまう。いずれ、敗れてしまうことをしっているので感情移入も大きかったです。
 アテルイは最終的には敗者で、あまり史料も残ってないだろうと思いますが、作者の紡ぎ出す物語りはまるで見てきたようにつぶさに知謀と人望の将アテルイを描き出します。自らに数倍する大軍と20年以上戦いきったのだから、本当にこの作品に書かれているような美しい偉大なドラマがあったのかも。クールに読めば史実はもっと醜い物だったように思いますがそこは文学ですから素直に読む方が気持ちいい。
 あと、作品の雰囲気も特別です。なんか古代の香りがします。だいぶ作者が工夫してると思います。かなり架空の人物が混っていると見ました。人名の万葉仮名もカッコよく付け直しているんじゃないでしょうか。平安京に遷都する直前位の時代の話です。こんなに蝦夷の人名が残っている訳はないだろうと思います。疑わずに読むのが楽しむコツ。どうせわからない。
 お薦めです。少しクサイシーンが好きですね。(この人のがよくNHKのドラマ原作になる理由が分かった。)
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