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★★★ The S.O.U.P 川端裕人 角川文庫
 ハッカーの世界がかなりリアル(そうに)書かれています。これが本当にありうるハッカーなのか分かりませんが、それらしくのめりこめるリアリティは感じます。でも、ハッカーってこんなにカッコいいの? とも思っちゃいます。
 主人公はかって世界を席巻するヒット作であるオンラインゲームの開発に携わった凄腕のプログラマー。経産省のキャリアという才媛が突然尋ねてきてセキュリティ対策の支援を頼まれます。「報酬は民間向けとしては最高額を用意できます。」と。
 コクピットのようにツールが配備されたマシンに同化するように、クラッカーを追跡するために主人公はインターネットの世界に潜り込んで行きます。
 読み終えたいまだに理解できない悪党どもの目的(僕のリテラシーが低いのか?)は抽象的です。ですが、主人公が昔作ったゲームの世界に仮想人格として切り込んで様子はリアルで面白いです。でもこれまでにも類似の作品が多いような・・・。例えば、90年代にSFで流行ったサイバーパンクみたいなのりです。(ウィリアムギブスンのニューロマンサーをちょっと思い出しました。押井守のアヴァロンも似てる。)今風に、書き込まれているけど、先見の明を思わされたニューロマンサーにはなんとなく及ばないような気がする。
 あんまりSFを読まなかった人には新鮮に面白いんでしょう。石田衣良さんが絶賛してる。(巻末の解説で褒めちぎり)
 ただ、ハッカーとして精一杯かっこいい人物を書いてみたことはわかります。その世界で未熟な者と達人の差もうまく表現されていて、「ああ駄目ハッカーって「厨房」っていうんだぁ。」と妙なところで感心します。AI人格と米国大統領の論戦なんて面白いネタをさらしてくれもします。(でもAI人格もSFでたっぷり出会ったなぁ。)
 仮想世界を探索するところはなかなかの冒険です。ちゃんとRPGの楽しさが感じられます。指輪物語やゲド戦記への立派なオマージュになっているのかもしれません。原作より現実を感じる分面白いといえるかも。一応おすすめかな。
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