評価p | 書名 | 著者 | 出版社 |
★★★★★ | 邂逅の森 | 熊谷達也 | 文藝春秋 |
うーん。濃厚な物語です。(もう読んだ人いっぱいいると思いますが・・・。とっくに読んでたんですが、身辺にえらい変化があって今頃の紹介です。) 東北地方のマタギの話です。明治から大正位の時代設定です。山の神を恐れ、迷信深く、経験と勘に支えられた絶妙な判断に基づく狩をするマタギ衆。じっくり盛り上がる文章から、狩人たちの息遣いが生々しく感じられます。 主人公がまじめ一辺のマタギなのに地主の家の箱入り娘に夜這いをかけるのは面白いですね。平凡にマタギの人生を送るはずだった男に波乱ある人生をもたらします。 登場人物に二人の女性が出てくるのですが、そのうちの最終的に主人公と添い遂げる遊女上がりの妻に凄く魅力を感じました。この人が主人公に対し叫び、本音を吐露するところがとても印象的です。 重たい物語です。一人の人間をこれだけ執拗に翻弄する運命は文芸として芸術の極みと思います。芥川賞は最近変なのが多いですが、直木賞はいいですね。今回他の候補をあまり読んでないですがこれは凄いです。 私事になりますが、最近子供ができたり、理不尽な出来事があったり、人生って長いんだなと思うことが沢山ありました。そうなった今だからと思いますが、こういう濃厚な物語を読むと心に沁みるものがあります。 こんな重厚な物語もっと出てきて欲しいです。これからはこの本みたいな路線が流行るかもしれませんね。 |