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★★★★ 五人目の標的(犯罪通訳官アンナ) 佐伯泰英 祥伝社文庫
 推奨ポイントを3つにするか4つにするか迷いました。事件は今ひとつつまんないように思います。・・・が、登場人物がかっこいいのです。警察小説でキャラ萌えしてもしょうがないですが、僕はこの小説の根本清麿という男は大好きですね。犯罪者を国境越えて追っていき、処刑執行まがいの追撃をする。ダニのようにしつこいデカでついたあだ名が「ダニマロ」。警部から平の刑事に成り下がっても、正義感だけは高く持ち続ける。
 読んでいて新宿ザメを思い出しました。鮫島もかっこよかったです。鮫島は国家上級受かって防犯課のお巡りさん。あれを読んでいるときは「そこまで立場を下げなくてもさぁ」と思いました。・・・が「鮫」の方がリアリティがありました。あっちは犯罪者の方が魅力あったりして面白かったのですが・・・(毒猿がよかったなぁ。テコンドーってかっこいい。)
 そこいくとこの佐伯さんの通訳官アンナシリーズ(と呼ぶことにします。)は主人公らしきアンナは今ひとつ、事件はちょっとへんな話で被害者に同情できないのが決定的に共感できない、事件の展開になんのリアリティもない。(例えば、平刑事がヤリテ外務大臣の弱みを握ってメキシコに捜査のための出張をする。4日間で何年も昔の事件の過去を暴き、メキシコのスラム20万人の人間を束ねる影のドンを押さえてくる。黒幕犯罪者はすでに何人も人を殺しているのに、最後の一番の標的の人物をすぐに殺さずにケッタイなゲームを始める。)おまけに言えば、ユーモアの一つもない。 でも、なぜかページをめくっているのですね、不思議なことに。いつもだったら「つまんね」って積読しとくのですが。
 ダニマロの渾名に「ダニ」って言葉が絶妙なんでしょう。「ウジ」だとか「シラミ」だとか「クソ」では汚い。ダニも決してきれいなものではないですが、屈折した正義への執拗さを連想させますよね。悲しい過去も背負っている。
 アンナは僕はあまり魅力感じませんね。ハーフで美人、語学堪能、合気道マスター・・・幼少期にやたら暗い過去があるのにこんなに豊かに育って、犯罪者の気持ちも汲めていつも冷静。過去と現在のつながりが実感できなくてアンナにはキャラ萌えできません。
 ダニマロが居なかったら、この荒唐無稽な物語を最後まで読めなかったと思います。特に犯人の面が割れてからのゲームのシーンは苦痛だったと思います。ダニマロのかっこよさゆえにちゃんと読めます。話そのものはめちゃくちゃなのでアニメがかっていますが・・・お奨めしておきます。
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