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★★★★ T.R.Y 井上尚登 角川文庫
 中国と日本を股にかけた詐欺師のゲーム。国を捨てた日本人の男が中国革命軍(孫文系の)に武器を渡すために再び日本に舞い戻り帝国陸軍相手に詐欺を働くという話です。
 詐欺師のチームは日本人、朝鮮人、中国人とそれぞれに思いを持ったメンバーによる複雑な編成。主人公の日本人を恨んで日本まで追いかけてくる執拗な朝鮮人の殺し屋もいてなかなかの設定。騙される側の日本の軍人もいずれも将来を嘱望された大物たち。(日本側のエリートたちはもうちょっと書きこんでほしかったかも)
 振り出しの舞台であるの上海の雰囲気(競馬場とか地場のヤクザとか)の描写から魅了されます。
 陸軍への詐欺には「日本に留学中の満州族の宣統帝の弟」っていうカードを使いますがその辺のネタが日本軍人の出世欲を上手にくすぐっている感じで、でも相手も用心深くて面白いモンです。主人公が心の中で「相手の好きな踊りを踊ってやるさ」っていうところがありますが、そのへんの書き方がうまく詐欺師の本懐を書き表してます。
 蒋介石といった大物がちょろ役で出てきたりして飽きません。
 最終的に主人公は革命に身を投じるんですが、全編通じて彼自身は決してごりごりの左翼ではないとこがいいですね。芸者のお姉さんやら、革命党のリーダーやら、色んな人が彼の見方をしてくれる。自然体で成り行き任せなのにどえらい冒険行に巻き込まれるから話に入っていけるんでしょう。
 さて、ちょっと脱線。この話って映画になってるみたい。見てみたかった。織田裕二主演? 作品を読んだ感想からするともうちょっと華奢なタイプの人がイメージに合いますね。でも織田裕二っていい作品やってますね。(去年’04年の末にラストクリスマスを英語でカバーして歌ってましたね。あれは万死に値する恥ずかしい暴挙だったけど・・・、あの名曲をあの発音で歌うかぁ?しかも全国に向けて?笑ってしまって、ホワイトアウトの名演技が僕の頭の中ですべてギャグになっちゃった。 でも役者としてはいい役をいい感じでやってますね。)  
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