評価p | 書名 | 著者 | 出版社 |
★★★★★ | ナラタージュ | 島本理生 | 角川書店 |
(05/05/08)次の芥川賞 はこの「ナラタージュ」by島本理生 で決まりじゃないだろうか?このレベルの小説はそうは出てこない。 何度もノミネートされては逃した彼女はついに今度こそはとるでしょう。 主人公の女の子のこころの動きがとても繊細に綺麗に書かれていると思います。 最近の純文学って、奇を衒うような表現や、現代の闇のようなところをさらに一歩進めたすさんだものをあえて描くようなものが多いような気がしてました。でも彼女はそんな姑息なことせずにまったくストレートに主人公の感情の変化とまわりの出来事を拾っていって物語をつむぎだしている。 本作は、「ああ、女の人ってこういう風に考えるんだ」と思わされるきめ細かい描写の蓄積です。そうやって、何の変哲もないように見える物語を回想風に追いかけていくんです。じっくり盛り上がります。 最後のエピローグでヒロインが嗚咽を漏らして泣くところではがっちりとハートをつかまれてしまった。人が人を好きになるというのはゆっくりと時間が必要。そのまったりと進むもどかしい時間が本当によく表現されてると思います。恋愛小説ハヤってるけど。こいつは秀逸な傑作。 これまでの人生で惚れた腫れたにかけては必ずしもいい思いばかりでなかったという人は一度読んでおきましょう。 「懐かしい痛み」がこみ上げてくるかも・・・ |