僕は大学時代物理学を専攻していました。するとある日そのことを知っている会社の友人から、「相対性理論に興味あるんですけど何かいい本ないですか?」そう聞かれて、内山龍雄(うちやまりょうゆう)先生の「相対性理論(岩波書店)」という本を貸しました。彼が優秀なプログラマなので絶対理系出身で数学好きだろうと思ってこれを貸したのです。線形代数くらいわかってれば読めるだろうと思ってました。
社会人5年もやってからそんなの勉強しようなんてすごいなと思ってお貸ししたのですが、「これ全然わかんないです。しかも前書きにこれを読んで分からん奴は相対論をあきらめろとか書いている。」と激昂して突っ返してきました。どうもかれは文系だったようですね。(経済だったようです。経済の人たちの数学力じゃ確かにきつかった。)
そこで文系の人に薦める相対論の本がこれです。「おーいK田くん。これなら君でも読めるよ。これ読んでだめだったら本当にあきらめなさい。」と上の友達にいいたい。
モノを学ぶには順序と目標いうものがあって、理系の学生経験のない人間が理系の3−4年生(下手すると大学院生)のレベルの書籍を読もうとするのはムチャです。だからほとんどの理論物理学の書籍は一般の人には読まれない。でもそんな本ばかりでは、世の中の子供たちに相対論だとか、量子力学だとか、場の量子論といった人類の資産ともいうべき知恵の存在意義も、楽しさも知ってもらえない。
物理系学生とその他の分野の世界の橋渡しをする書物はブルーバックスやニュートンとかいくらでもあります。どちらも絵がふんだんに使われていてとても読みやすい。
だけど物理学の本質はいつも数式の中にあります。ここで紹介するランダウの相対性理論入門はちょっとだけまじめな数式がついていることがいいと思います。(といっても数式がみっちりついているのはローレンツ変換だけですが、特殊相対論ならそれ以上のことはいらない。)
ノーベル物理学賞受賞者のランダウ自らが書き下ろした漫画つきの解説で頭の中の常識をぶち壊してくれたあと、たぶん愛弟子のジューコフさんの特殊相対論講義があります。
当然ジューコフさんの講義はランダウとの共同作業で生まれたのだと思います。この講義では光速一定の原理をいったん呑み込んだ上で「光速の半分の速度で走る電車の真中の光源からでた光は...」とありえないですが想像可能な思考実験で読者をゆっくりと誘導してくれます。
実は僕、本書に出会ったのが中学生のときでした。この本なら分かるかもと思って、ひっしこいて電車の長さや光の届く時刻を計算しました。分かったような気になれました。大学いったあとにも「等価原理ってなに?」って感じでなんどか読み返しました。薄いのに結構色んなことが書いてある本です。
本との付き合いは一生ですね。K田くんと同じくなんとなく分かりたい人に道しるべ的に相対論の書籍案内をしておきます。なんとしても分かりたくなればしめたものです。
(はじめて相対論にふれる人)
導入期用の名著:
ランダウ他「相対性理論入門」(本書)
マックス・ボルン他「相対性理論」
興味をもってから勉強してほしい学問分野の良書:
安達忠次「ベクトルとテンソル(新物理学シリーズ)」:培風館
安達忠次「ベクトル解析」:培風館
バーガー/オルソン「電磁気学T・U」:培風館
まじで相対論勉強する:
内山龍雄「相対性理論」:岩波書店
ディラック「相対性理論」:東京図書
他にはw.パウリやh.ワイルの本がよく名著といわれますが僕は読んでません。ちょっととっつきにくかったですね。今の物理の学生にとっては、相対論はただの嗜みとして勉強する1分野に過ぎないので、ここで挙げた本で十分と思います。
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