ふむふむ。さすがは外山先生。子供の早期教育に重要な言葉について語り尽くして下さいます。いや子供のことのみならず、大人たちでも出来ていない多くのことをたくさん教えてくれます。あまり聞かない出版社ですが、あれよあれよと版を重ねておられます。先生の本を一部抜粋して、傍線引いて設問設けた文章を、受験生時代にいやいや読まされました・・・が、今は本当に興味を持って「まるまる」拝読させていただいてます。
いくつものキーワードがありますが、母乳語/離乳語、とアルファ読み/ベータ読みというのが言語の本質かなと思います。(その後の日本独特の敬語の使い方とかはビジネスマンなら出来てるでしょう。)
赤ちゃんに英語をやらせようとか、そんなのやっぱおかしいんじゃない? と思います。へレンケラーよろしく物の名前をさす語(母乳語)があることに気づく段階と目の前にない抽象的なことを表す語(離乳語)を正しく理解する段階があるそうです。それは何語で話すどんな民族でも必要なことだそうです。なるほどなるほど。さすれば、その区別のないまま複数の言語が母乳語(物の名前をさす語)として赤ちゃんの脳髄に刻み込まれたらおかしくなっちゃうだろうなと思います。
僕なりに先生の言っていることを咀嚼してみれば、離乳語を意識し始めることを「物心がつく」というのでしょうかね。「物の認識=母乳語の認識」、「心(抽象的なこと)の認識=離乳語の認識」といってよいのでは? 僕の幼時体験ですが、母親から「東京にはなんだってあるよ」と聞かされたときに、東京のどこかに「自由の女神」とか「ピラミッド」もさがせばあるという意味かと思いました。東京という街に「ドラえもんの4次元ポケット」のようなのがあって、その中に宇宙がまるまる詰め込まれていると思ってえらく当惑しました。(マジですよ。子供はおそろしいのだ。) もちろん母親は「東京にいれば、日常生活物資で調達できないものはない。」といいたかったのでしょうが、こまっしゃくれたガキんちょには数学の集合と部分集合のようなものが脳裏に浮かんでいます。(いいたいことが伝わんなくてくやしかったのでよく覚えています。) また、ある日、色んな日本円のコインを持ってきて、「どれが一番「オオキイ」お金?」 と聞かれたのを覚えています。子供のときの僕は直径の「オオキイ」ものを探すために全部を縦に積んで、10円ダマをだして「これ」といったのです。母親は確かそのときがっかりしていましたね。オオキイは最も価値のあるお金を述べなさいという意味だったのです。(この子馬鹿ねー。くらい思ったことでしょう。) 成人したある日、「あんたは子供のとき赤いお金が一番すきって10円玉を指差したことがあるのよ。」といわれてさっぱり意味がわからなかったことがありますが、多分このことを言ってるんでしょうね。今思えば、親は勝手に子供の能力を見くびっているいい例だなと思いました。(母に文句があるわけではありません。自分がいかにわかりにくいガキだったかと反省してます。)息子や娘が離乳語を使って脳の中に世界を作って何かを実証しようとしている様子を親はよく想像してあげねばならないと思います。子供の思考に等身大の立場で耳を傾けてやることが肝要なのかな。
先生によると赤ちゃんが母乳語(ものの名前)を覚える期間が生後30ヶ月、離乳語を覚える期間が30ヶ月とのこと。(あわせて五年? そんなにゆっくりかな? 私立の名門幼稚園行く子供ってもっと小さいときからしっかりしてるよね。僕は息子にもっと早くから、離乳語を使わせるぞ(スパルタ)。)そのくらいの期間赤ちゃんはしっかり言語教育しなきゃいけない。 子供を見くびらない。子供は子供なりに未知のことに理解を示すべく思弁的に思考する・・・という要旨みたいですね。全く同感です。(自分の幼時体験からも納得。)
さて、次は「アルファ読み」と「ベータ読み」。人は既に知っていることを読むのは簡単で早いとのこと。それが「アルファ読み」。知らないことが書いてあるものを読むのは大変でなかなか進まない。こういう読書を「ベータ読み」という。子供が本を読んで勝手に賢くなるには「ベータ読み」ができないとならないとのこと。そりゃそうですね。知ってること何度読んでも世界が拡がんないですもん。「ベータ読み」を促進するには、わけがわからなくてもなにか読ませる。(「昔の四書五経の暗記などがいい。」みたいなことをいってます。)
僕は「離乳語」「ベータ読み」の話にまったく同感しました。どちらも言葉で抽象的な事物や概念を扱うことを指しています。論理的な知性(「形式知」)を発現させるのに不可欠な技能だと思います。本読まない人(あるいは本ちょっと読むと疲れちゃう人)はたぶん「ベータ読み」が下手だろうな。・・・とね。この二つによって言語は人間に知性を与えているのだと思います。言語の本質だといってもいい。大人だって「ベータ読み」は常に鍛えないといけません。でなきゃ脳はすぐ錆びる。
外山先生が言葉に関してお持ちの「一家言」はどれも具体的で真実味があります。つづく章を読むと日本語って常に変化しているなぁと思います。自分の子には美しい日本語を教えてあげたいと切に思います。大変貴重な次世代の日本の憂慮のメッセージが溢れます。おとなも気をつけなければならないことがたくさんあります。たいへん勉強になる一冊でした。
ところで受験対策でたくさん読まされた外山先生。国文学者じゃなくて、英文学者だったんですね。
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