TV番組「マネーの虎」にでてくる起業家達ってアホが多いなといつも思うのですが、成功者であるスポンサーは「やっぱ違うな」と本書を読んで思いました。
堀ノ内さんは何度も事業を初めては失敗して、一度はホームレスにまで落ちぶれたそうです。どん底とはそのホームレス時代の体験をおっしゃっているようです。ごみ拾いして集めた雑貨をピカピカに磨き上げて売る商売を15坪の店ではじめて、どんどんと成長し今では100億超の年商を上げているとのこと。会社の名前は「生活倉庫」。本書を見るとその商いはキャシュフロー万全のとてもスピーディなビジネスのように思います。
さて著者の堀ノ内さん。僕はマネーの虎よりずーっと前にテレビに出ていたのを思い出しました。その番組では、リストラされた夫婦みたいな人たちが著者の運営する「生活倉庫」のフランチャイズを始めることになって店を開くまでのいきさつが紹介されてました。その番組では、スタッフが新フランチャイジー夫婦と一緒にミニバンでゴミ漁りにいくとき、後ろから堀ノ内さん自らが後をつけていって、彼らが拾い残しているものを拾い上げていきます。(そちらにもテレビのスタッフが同行しています。)ゴミ漁りなので真夜中です。夫婦はそれなりに何か考えながらやっているように見えるのですが、ゴミ漁りが終了した後に、堀ノ内さんが同じコースを後からつけていって集めたものを見せて「あんたたちらこんなに売れそうなものを拾い上げてないじゃないか! 宝の山が見過ごされているよ。 商売への執念あんのか!」みたいな雷を落としてました。テレビなので、確かに先にゴミ集積所にいった夫婦が見過ごしていたものが後陣の堀ノ内さんによってもってこられたのがわかります。「先攻」の夫婦より、「後攻」の堀ノ内さんが集めたものの方が磨けば売れそうな気がしましたね。そのときの感想は「リストラから這い上がろうとして一念発起するんだからそのぐらいの執念必要だよな。」と思いつつ、「リストラされちゃうような人物にここまでの執念を求めても可哀想。真夜中に何かするだけでもしんどいだろうに・・・。」とか、「ゼロからの起業って大変だな。サラリーマンは幸せだ。」とか、「この社長さんも大変だな。こんなやる気のない人たちを叱咤激励して仕事の精神を叩き込んでいくんだから・・・。」と止め処もなく色んなことが頭に浮かびました。そのときは起業なんて、自分と何も関係ないと思いながら、「商売ってそういうもんかぁ」ととても印象に残ったのを覚えています。
さて肝心の本の方ですが、とにかく凄い「商売方法?」が次から次へと語られています。何が凄いかって言えば、(ご本人自身がかかれている通り)倫理もくそもないめちゃくちゃさですね。ほとんど詐欺みたいな商いもなさっています。でもお客さんのニーズはある意味ちゃんと満たしている。本書読了後に堀ノ内さんの商売への態度が商人のあるべき姿のように思えるから不思議です。
堀ノ内さんの商いで「詐欺まがい」と思ったのは、例えば、「あとでお届けします」といった売約済みの商品を後から来た客に売ってしまい、その後、同じ物を探してすでに売約した客に売るという方法です。同じものが探せなければ類似品をだしたり、類似品も見つからなければ「あれは壊れていました」と商機ロスを選択するというのです。恐ろしい商法だと思いますがいかが? 堀ノ内さんはこれを「売約済みのテープレコーダーを3倍に売る」と称してます。
詐欺とはいいませんが、「そんなのあり?」と思うものに、手元に1万円しかないときにそれを手付金として10万円借りて、商材を仕入れ、すぐに売って借金を返すという話がありました。(「一万円しかないお金を10万円に見せられますか?」というサブタイトルのエピソードです。)今日とか明日のレベルで「利ざや」を確定するわけです。株式の信用取引みたいなもんですね。「信用取引に手を出す人間はいつ首くくることになるかわからんぜ。」とどこかの相場師がいってたのを思い出します。仕入れた10万円の商材が売れなかったらどうするんでしょうね。まあでも他人の業績である株価に金を張り込んでやる信用取引に比べりゃ、自分で努力してなんとしてでも「売る」という方法の方が誠実ですね。信用取引は社会的に何の財もサービスも生みませんが、この商法は10万円の商材が売り手から買い手に移動しているだけ本来の経済活動ですから。
「無」から「有」を生む。小さいがいびつな一歩をとにかく踏み出す。非常識を覆してしまうほどの誠意を見せろ。とにかく速さにこだわり突風で勝負せよ。肉体労働ができない人に頭脳労働はできない。計算して得られる答えは所詮「勘」には勝てない。・・・・と諸々の箴言が惜しげもなく語られます。
本書を読んで商売始めてみようかと本当に思いました。色々しょっているもの(仕事・家庭・・・・)があって大変ですが、諸々の艱難辛苦を読まされてなお「いびつな一歩」がとても魅力的に思えます。僕は転職がその「いびつな一歩」にあたるのでしたが会社に属している限りここまでダイナミックにはやれません。
「マネーの虎」に出る人はこれ読まなきゃだめですね。たまに見るんですが、ほとんどのケースが「ノーマネーでフィニッシュ(by吉田栄作)」なのでがっかりです。常識のある人には、ちょっと話が進むと今日は「ノーマネー」で終わるな・・とすぐわかるんですよね。経営学を勉強する必要ないと思いますが、事業を起こす執念があれば「もうちょっとなにか考えてるだろう」とか、「もうちょっと社長にふさわしい人間性があんじゃないの」と考えちゃいますね。金の無心をしに来てるのにちょっと突っ込まれるとキレちゃう馬鹿の話なんか聞きたくないし・・・。番組のコンセプトは面白いのでもっといい人参加させましょうよ。・・・いないのか? この本がたくさん売れれば、日本は逞しく生まれ変われると思います。わが国にかけているコンセプトが一杯詰まっています。一つ一つの是非はさておき、サラリーマンも含めて色んな人にとって得るところのある「良書?」だと思います。
|