歴史は繰り返す。人間の本性に関して、争いや権謀術のプロセスが古代から変わらぬことを指す言葉ですが、本書を読んだ後は、自然界の生命の歴史も同じだと理解しました。数億年の歳月をかけて営まれた生物の栄枯盛衰が偲ばれます。こんなドラマを展開して見せてくれた著者らすばらしい学術活動に大いに敬意を表します。
地球では過去に5回大量絶滅が起こったそうです。2億年ン千万年前には地上の大陸は一つだったそうです。大陸がちょっとづつ移動して今の様子になり、また2億年すると一つに集まるんだそうです。未来の気候や地勢を予見して、いつ頃どんな種(スピーシー)が現れるのかを予言しています。そして、500万年後の来るべき氷河期までには人類が絶滅していると本書はクールに言い切ってます。(もっと早く別の理由で絶滅しても僕は驚きませんが・・・)面白いんでかいつまんでネタばれしちゃいましょう。(小説じゃないし良いですよね。)
500万年すると鯨なみの巨大なペンギンがフランスに現れるそうです。(ええっ!でしょ。後はずっとこんな話。)その頃にはアマゾン流域は森林が燃え尽きてサバンナになっているとのこと。そこには最後の霊長類で四つ足で走り回るライオンみたいなサルがいるそうです。ウズラの末裔は鳥のくせにアリンコみたいに地下にもぐって巣を作るそうです。(500万年ってそんなに劇的な変化をする時間なのだろうか? とも思います。アウストラロピテクスだかなんだかの猿人が350万年前に現れたんですよねたしか? でも、エジプトが5000年(=0.5万年前)だと思えば、アウストラロピテクスの頃は今と全然違う動物いたかも知れませんしそんなものかな。)
一億年するとウミウシが今のアザラシなみの巨大生物になるそうです。また、現在存在する生物に「カツオノエボシ」というのがあるそうですが、これは個体がたくさん集まって集団として一つの生物みたいに一個一個の個体が別々の役割を持って生きているらしいです。無色透明で海表に浮かんでいるのですが、こいつらが一億年すると巨大化してヨットの帆みたいになるようです。タコが地上に上がって水辺を這い回り、亀は恐竜なみに巨大化します。40センチ近い(ジガバチの末裔ですが)トンボみたいな虫がいます。(もうちょっと大きくしてくれるとナウシカ的ですね。この本ではもう人類いませんが・・。)さらに哺乳類はただ一種だけ生き残ります。その哺乳類は蜘蛛たちが卵を産み付けるために育てられています。蜘蛛が植物の種を持ってきて、閉じ込められた哺乳類にえさを与え続けています。時がくれば卵を産み付けられ苗床になってしまう。・・・残酷な話ですが、今人間が牛や豚、鶏にやってることとなんら変わんない。エイリアンも人間に卵産み付けてましたね、そういえば。
2億年すると、鳥も絶滅するとのこと。魚が空飛びます。(表紙の生き物はこの魚らしい。)興味深いイカが2種類、地上に出てきます。一つは巨大なイカで体重8トンのメガスクイド。賢くはなく、のっしのっしと地上を闊歩します。もう一つはスクイボンという生き物。大きな脳をもち、進化した吸盤つきの触手で道具を操り、ひょっとしたら人間のように論理的な思考をする可能性があり、社会生活をする。スクイボンが部族に分かれて戦争をするかもしれないとのこと。
・・・うーん圧巻です。凄いのは巨大化するとかサイズの考察がすべて科学的根拠があることですね。人間が環境を守ろうとしようとしまいときっと生き残る種がいて、今はほとんど他の種に食べられるだけの種が王様になる時代が来たり、いずれ巨大な脳があれば社会を営んだり、道具を使ったり、と繰り返す歴史が感じられます。イカが宮殿造ったり、ロケット飛ばす時代だってあるかも知れませんね。2億年っていうのがそれぐらいの時間だと思い知らされます。
少なくとも最近の2億年は今まったく見られない恐竜の時代が現れて消えたし、そのころ取るに足りない種族だった哺乳類は今我が物顔で地上をのっしのっしと歩いてる。 もしも・・・もしもですが恐竜に知性があったとして、例えばステゴサウルスの生物学者が、「2億年後にねずみの子孫が毛がなくなって直立し、ビルを建てたり、戦争する。」といったら、ティラノサウルスの恐竜くんが「あほなこといいなさんな。2億年後の世界もわれわれの天下だよ。」とネズミをむしゃむしゃやっていたかもしれませんね。われわれも2億年前にはなかなか想像できなかった生き物。2億年たったらイカが戦争する。(そのスクイボンはブッシュっていったりして)ということもあるかも。
本書の語り口がまるで見てきたように言い切っているのが面白いですね。疑問をはさみたくなるちょうどぎりぎりのところで現在も同じような生き物がいるよっと写真つきで解説してくれるし、未来の生物は結構きれいなCGでリアルです。
いやはや興味深い本です。子供から大人まで読んで欲しいですね。
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