評価p | 書名 | 著者 | 出版社 |
★★★ | かんたん!エンタープライズ・アーキテクチャ | (オージス総研)加藤正和 | 翔泳社 |
エンタープライズ・アーキテクチャ(EA)という概念には注目しています。今のところ所属する会社では許されていない考え方なのですが、節操ない会社なので、世の中が唱えだすと「うちも、前からやってました」なんてのりで宣伝始めるかもしれません。 EAについての見解を述べておきます。僕の理解は表層掬った程度とひらきなおって、あえて。「新しいシステム導入の指針になりうる概念だと思います。ですが、まだ解釈次第でいかようにも実態が変わりうるもの。PMBOKよりは示唆に富んでいるものの。使う人次第(<=当たり前ですが)。PMBOKでいうところのWBSを経営の視点からめて精密にするとザックマンフレームワークになるのかな。要はシステム導入プロジェクトの成果物チェックリスト。ちょっと経営の視点が入っているのがいいけど、センスのない人がなんぼ唱えても何にもでてこない。」と。 さて、本書ですが、オージス総研の人が書いた本を読むといつも思うこととして、結局システムを導入する側の勝手な意見がまことしやかに挿入されているように感じてしまいました。 EAって、企業の経営改善のあるべき姿を模索する概念だと思っています。必要なければ、システムの導入をしない・・・という結論もありだと思っていますのに。文中には呪文のように「全体最適化」「全体最適化」、しかもその視点は常にシステムのパフォーマンスの観点のみから語られます。小説みたいに登場人物を置いて話を進める部分と、Q&Aでトピックをまとめる部分がありますが、小説の部分では、EAの目玉である経営改革のプレゼンは内容示さない(もっというと、そもそもシステム以外の課題がナンだったのかさっぱり分かりません。)で、滞りなく済んだことにして、主人公のカノジョみたいなのが、システムが動かなくなったわ・・・みたいなこといいます。(そんなプロジェクト最初からやらなきゃいいのに・・・。)そもそも24H体制でサポートする競合コンビ二と勝負するのに「基幹システムとWebのシステムが林立していると勝負できない」という命題が突然でてくるのがまったく納得いかない。これが説明なしで本になってるのは問題。 加えて、(UMLの話はまあいいとして)、本来関係ないWebサービスの説明に紙面割いて(知ってること書きこみゃあ、いいってもんじゃないっしょ。)どうしちゃったんだろ。現場でお客さんと揉めた経験がないんだろうか?そんなもんだれも求めてないスヨ。 もし、EAが世の中で言われているような効能(システム導入に経営改善の視点をしっかり盛り込むとか。)を持つものなら、EAがだいぶん曲解されているんでしょう。 この本、EAの解説本では書店でもっとも安い。一見、分かりやすそう。・・・で買いましたが、読む人はEAのトピックを拾ってWebか何かで丹念に調べ、自分で考える必要がある。ザックマンが言おうが言うまいが、IBMやオージス総研が本出そうが出すまいが、米国のなんちゃら州で採用されようがされまいが、今、EAを学ぼうとしている人が前進させようとしているプロジェクトの課題(システム導入以外のプロジェクトも含めて)を丹念にきりほぐす方法として必要なことがなんなのかを考えることが重要だと思います。権威に踊らされないことですね。そのチェックリストや指針として、EAという言葉についてくる概念はいずれも有益な示唆だと思います。 今のEAは、まだ百家争鳴状態。自分の目でしっかり見つめましょう。僕は全然専門家ではないのですが、本書はひょっとしたら違うかなと思いますので(あるいは世の中で言われているEAが期待はずれなのか・・・)評価は★3つです。 |