評価p 書名 著者 出版社
★★★★★ パソコンで挑む円周率 大野栄一 講談社ブルーバックス
 ブルーバックスって、色々宇宙・量子論から、生命科学、工学・・・とありますが、少年向きに手を抜いたものという感が否めないもの多いですよね。
 コンピュータに関するものだけはちょっと違うなと思ってみてます。本書はその代表格。円周率πについて、アルキメデスの求め方(気が遠くなるなこりゃ。)から、江戸時代の和算家たちの仕事、手回し計算機に電子コンピュータ(お約束のENIAC話)と盛りだくさんの話があります。こういった四方山話を超えて、ちゃんとニュートン法で数値的に代数方程式を解く方法を解説し(これ自体はπと関係ないですが)、ついでπを求めるためのアークタンジェントの公式の導き方を教えてくれる。
 たぶん、中学生でも本気なら読めると思います。大人が読んでも面白い読み応えがある。プログラムの練習にこの人と同じことをやってみると面白いと思います。
 著者は1972年に大学卒業したらしいです。(僕が4歳のとき)。大学にはTOSBACとかいう大型コンピュータがあったとのこと。卒業後にコンピュータがいじれなくて、手回し計算機のジャンクを買ってきて直すだとか、NECのTK−80(知らないでしょ。)のキットを横目に見ながら、FM−8だのの8ビットパソコンを買いπの計算をはじめたそうです。
 科学を楽しむこころっていいですよね。πなんてどこでも計算されているけど、自分でやって理解してみたいという純粋な欲望は良く分かります。参考文献に挙げられているベックマンという人の本より、この人の本の方が分かりやすくて熱いです。
 以下は3万桁のπを計算したときのくだりです。
 この計算には、私の所有している全パソコンを総動員しました。FMシリーズの7,8,11は猛暑の中、クーラーもない部屋でよく頑張ってくれました。とくに、8,11は一度のトラブルも無く,ただひたすらに走り続けました。プリンタがうなりをあげて3万桁の数値を吐き出したときは、思わず拍手をしてしまいました。費やした時間は延べ170日23時間29分46秒でした。(実際には、3台を並列して動かしていたので61日18時間5分27秒です。)  ・・・・・中略・・・・・・  最後にフロッピーディスクを取り出したときには、それぞれがかなり熱を持っており、中央のリングが噛み込む部分は擦り切れているのがはっきりとわかる状態になっていました。大阪、日本橋の大安売りで買った1枚10円の2DDのフロッピーディスク。よくぞ耐えてくれたと記念にとってあります。
 熱いでしょ? とても古い富士通の8ビットマシンFM-8,7,11の3台を並列に使って、3万桁のπを計算するというんですから。もの凄いオタクぶり。
 子供に読ませるブルーバックスに下手に量子論だとか相対論だとか読ませるくらいなら、(そんなんどーせちゃんとかかれてないし)こんなの読ませるほうがいいかなあと思います。好き好きですが。勉強の姿勢にプラスのことが学べるんじゃないかな? いい本です。僕は何度も読み返しちゃってます。
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