評価p 書名 著者 出版社
★★★★ ハサミ男 殊能将之 講談社
 ふるーい作品ですみません。最近古本屋で買って読みました。評判どっかで聞いてて気になったのですが、読み逃してて、よんでみたらとても面白かったです。そこでご紹介。

 警視庁心理捜査官って面白いお仕事してそうですね。その手のネタを扱った作品の一つです。美少女ののどにハサミをつきたてて殺すという猟奇連続殺人犯=「通称ハサミ男」の話。ハサミ男が一人称で語る部分とそれを追いかける警察が三人称の語りで描写される部分とが交錯する面白い小説です。

 ハサミ男は偏執的な連続美少女殺人犯。仕事を休んでは、これはと目をつけた女の子をマークして付回し、行動パターンを読み、殺害の願望を満たそうとします。
 準備万端状態の「ハサミ男」が第三の美少女を殺そうとする直前に、その少女が誰か別人の手によって殺される。しかもいつもハサミ男がやっているのと同じ手口で。ハサミ男はその少女が誰になぜ殺されたのかを調べ始める・・・という犯罪者が探偵になってしまう。
 主人公(?)のハサミ男がなかなか異常で話に惹きこまれますね。どうも勉強のできる女の子が殺したくなるらしい。どうしてこの人はこんなに屈折しちゃったんだろ・・・と。


 たとえば・・・
 ハサミ男が手にかけた1人目と2人目の美少女はほんとに単なる優等生だったらしいのですが、この3人目だけが、お嬢様でかつ成績良いらしいけど複雑な家庭環境に育ち、お金に困っているのでもないのに援助交際してみたりとなぞに包まれてます。するとハサミ男は雑誌記者のふりをして彼女の周りにいた人物に聞き込みをする。残忍な犯罪とうらはらに彼女自身の境遇にとても人間的な思いやりを示してみたり、「娘を愛してたのよ・・・」と泣き崩れる母親にあんたのエゴが納得するように自己完結しておきなさいみたいな辛らつな一言でぴしゃりと決める。血のつながってない弟が少女を女性として見てたらしいことがわかると「別に実の姉とヤったって問題ないさ」みたいにいってみる。
 ハサミ男は精神分裂症かなにかを発症していて、かれの頭の中に博覧強記の別人格がいて、いつも葛藤してます。
 主人格のほうは野心もなにもないしがない出版社のアルバイト。
 時々現れるほうの別人格は博識でニヒルな”医者”と称する人物。
 主人格は自殺願望があって、しょっちゅう薬屋さんからへんなもの買ってきては致死量を試して、自殺に失敗すると”医者”の人格が現れて、「本当は死ぬ気ないんだろ」という罵声を浴びせる・・・。
 とまあこんな具合。小説というのは、今、真横にいる誰かが言ったら(そりゃないでしょ)と眉をひそめるような発言をする人物の内面まで描写しつくすことができるのがすごいなと思いますね。ハサミ男は変な人ですが、そんな人もいるのかも・・・と変に納得できてしまう。サイコパスっていう新人類なのか????
 ハサミ男の犯罪が猟奇的なので、警察は心理捜査官というエリートを送り込んでいくわけです。羊たちの沈黙・・・と違って思いっきり日本化されている感じがします。オチもまったく読めませんでしたし。小説ならでの犯人像の不透明さといってもいいでしょう。面白かったです。
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