評価p 書名 著者 出版社
★★★★★ 警視庁心理捜査官 黒崎視音 徳間文庫
 ちょっとふるーい作品みたいです。敬愛する福井晴敏さんのサイトからのリンクで著者と本作品の存在を知りました。ずっと、一度読んでみたいなと思ってました。よんだらこれ最高。そこでご紹介。

 警視庁心理捜査官って面白いお仕事してそうですね。その手のネタを扱った作品の一つです。この作品ではその捜査官は見た目思いっきり若い童顔の女性エリート。ノンキャリアたたき上げのたむろしている捜査一課に専門家として招聘されるも、無視されたり、怒鳴られたり、セクハラすれすれの問題発言で悩まされたり・・・。
 読んでやっぱ一番最初に頭に浮かんだのは「羊たちの沈黙」シリーズですね。でも、ひろいオフィスルームを与えられ、FBIではど偉い権威になっている心理捜査官と違い、この作品では(日本らしい)閉鎖的で男尊女卑の警察の中でヒロインが思いっきり苦悩にあえぐのです。そこらへんは印象的ですね。
 二枚目でちょい年上の「部下」が聞き込み地取りのパートナーになるところもいいですね。彼はいいやつです。ヒロインの実力を見抜き、しっかり彼女を支えます。自制心の強い彼女が唯一わがままを言ってしまうところなんかはいいシーンですね。彼はとにかく聴いている。とてもやさしい。彼女と行動をともにすることで彼自身も立場が危うくなることがあるけどそれでも信念に従って彼女のサポートに回る。
 さて、追いかけているのは悪質なレイプ魔。ヒロイン自身も幼少期にレイプ未遂の目に遭って、大きなトラウマを背負っている。そのトラウマが彼女を心理学の世界に向かわせた。自分の抱えてしまった闇の部分をたぶん苦しく思いつつ、かつずっと理解したいと考えている。心理状態のことで誰かから嫌味を言われるたびに「そうよ。あたしはそういう女よ。」と受け入れざるを得ない。そういうつらさを想像させてくれる文章の運びに感激しました。主人公の人間がよく見えて読み応えあるな。
 また、警察小説としても、彼女がプロファイリングしながら、犯人像を絞っていくところはなかなかシャープな感じでかっこいいです。最後には犯人の居場所まであててしまう。
 組織社会の中で追い詰められて、彼女はとんでもない単独行動にでて、危険と暴力にさらされてしまいます。ぼろぼろになって犯人の手中に落ちながらレイプの憂き目にあったことから、それ以後の追い詰められた精神状態をまとめて、絶叫します。まるで世界中のレイプ犯を告発するように叫びます。
 ここまでヒロインをぼろぼろにしなくてもなぁ。と思いつつ。これは新しいフェミニズムの小説なのかと思わせられる説得力。
 華奢だけど、骨太な強さのあるヒロイン。過酷な組織社会とヒロインの持つストイックな正義感が対照的で作品が光ってると思います。
 はやく読んでおけば良かった。最近一番のヒットですね。
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