列車種別レポート

このレポートは、巷にあふれる列車種別をまとめてみようと、
衝動的に書き始めたものである

1,各社列車種別使用状況

 まずは、日本にどのような列車種別があり、どれほど使用されているかを調査した。なお、直通特急、空港急行など、行き先を冠するものは省いた。順番は基本的に停車駅の少ない順であるが、上下が判断し難い場合は、独断と偏見も混じっている。

※○主要列車△朝夕のみ×少数…過去に設定有


北海道東日本東海西日本四国九州東上東武※つくば西武京成京王小田急東急メトロ都営相鉄京急名鉄近鉄京阪阪急阪神南海西鉄
寝台特急×


















寝台急行
×××




















新特急























L特急


















快速特急





















K特急























通勤特急





















特急×



準特急























ライナー




















直行























快速急行
















×
区間快急























通勤急行




















急行×××

区間急行





















快速準急























通勤準急





















準急行








区間準急





















特別快速




















新快速






















通勤快速




















快速









区間快速




















準快速
























※東武は東上線を除く

2,種別毎の特徴

※語呂に関するコメントは、私の個人的な意見が強いので、あまり突っ込まないで下さい

寝台特急・急行

 その名の通り、寝台車を中心とした編成の夜行列車。JRでしか運行されていない。特急・急行料金と寝台料金がかかる。特急・急行料金は高くないが、寝台料金が高く、豪華な旅行にしか使われていない。そのため本数も少なく、消滅が危惧されている。ただし、最近は指定席を設けて価格を下げ、利用者を増やしている列車や、逆に高級志向を極限まで進めた列車などが、今でも利用率が高い傾向にあるようだ。
 なお、寝台急行は現在2種類しかなく、絶滅危惧種の最もたるものであろう。急行と特急の差異は大きくないが、一般に急行の方が区間が短い傾向にある。

新特急

 JR東日本においてのみ、過去に運用があった。通勤のための特急、という新コンセプトから、「新特急」と名づけたのだろうが、人気がなかったのか、意味がなかったのか、いつの間にか特急と種別変更されていた。料金は50km未満の自由席のみ、新特急料金(530円。急行と同等)が設定されていたようである。ただし、特急に統合された際、50km未満のB特急料金が引き下げられており(1,010円、自由席-510円)、現在とさほど変化はない。

L特急

 JRの特急の中でも、「等間隔ダイヤで、本数の多い特急」にL特急という名が冠せられていたが、現在では形骸化しつつある。特にJR東日本では、JR東海が乗り入れるL特急「しなの」以外に残っていない。JR北海道、西日本の新設特急には、条件を満たしていてもLを冠しておらず、完全に形骸化した。JR東海、四国、九州では未だに有効であるが、そもそもLがついているかついていないか知っている人は少なく、あまり意味がない。
 L特急が始まった当初は、条件を満たした特急自体珍しかったので意味があった。ところが今ではそれが当たり前なので、いちいちLを冠する必要がなくなったと見るべきだろう。
 詳細はWikipedia「L特急」を参照。非常に詳しい。

快速特急

 最近登場した種別。未だ主に利用するのは2社しかないが、今後拡大する可能性は高い。というのも、語呂が良く、主に使用している2社が最速列車、しかも看板列車にこの種別を冠しているためである。特急より、少しだけ停車駅が少ないといった列車に使用される。料金形態も特急と同じであるが、快特「京急ウィング号」のみは、特急と違い、料金を取られる場合もある。

K特急

 このページで初めて知る方も多いはずである。当の私も初めて知った種別。京阪の朝晩ダイヤにのみ登場し、快速特急と扱いはほぼ同じである。気になるKの意味であるが、友人談によれば「京阪のKだろう」ということらしい。私もその予想を支持している。なお、K特急「おりひめ号」(行き先が普通のものと違う)もあるが、対となる「ひこぼし号」は準急だったりする。ややこしい…。

通勤特急

 一部私鉄で朝晩ダイヤに使われる。昼間の特急を、朝晩に停車駅を減らして運行するのが通勤特急、というパターンが大半である。この列車は使われ方が固定されていて分かりやすい。ただ利用者からすると、「特急とどちらが速いのかしら」ということにもなりかねないと思うのだが。

特急

 高速列車の代名詞がこの特急である。急行よりも高級感があり、JRの最速列車として使われていたので、急行を押しのけ、日本では最重要種別となっている。当然ながら、特急は特別急行の略で、英語で"Limited Express"である。また、この名称はアメリカや日本にしかなく、ヨーロッパではExpressが主流で、特に速いものには、大抵固有名詞がつく。
 JRでは一貫して「主要駅にしか止まらず、距離に比例した特急料金を、別に収受する列車」という扱いである。ただし、料金体系はA特急とB特急があり、それぞれJR会社毎に異なる。特別料金区間や、自由席料金もあったり、グリーン車は追加料金を払ったりして、料金体系は多岐にわたる。新幹線は超特急という扱いで、料金は別だが、一応特急料金である。
 一方の私鉄は看板列車に使う傾向がほとんどだが、その看板列車の立場が異なるので料金体系にしても千差万別である。大別すると、距離が短いので、急行より速いという意味しかない場合、JRと同じように長距離で、別料金が必要な場合、南海と名鉄のように、指定席を連結した列車を意味する場合と、3パターンある。
 共通していえるのは、看板列車であること、主要駅にしか止まらないことであるが、東急の特急のように、「これが主要駅?」という疑問が残るものもある。結局、特急という種別は、鉄道会社の地理条件における「看板列車」であり、地理条件を無視して統一的な定義づけをするのは難しいものなのであろう。とは言うものの、京急や名鉄のように、看板列車ですらない場合も、ないわけではない。

準特急

 京王でのみ、特急の停車駅を僅かながら増やした列車に使用されている。だが、あまり語呂がよろしくないので、特急を2パターンに分ける際「特急→準特急・特急」とするより、「特急→特急・快速特急」の方が好まれる傾向にあるようなので、今後もあまり用いられないだろう。

ライナー

 そもそもこの種別に属する列車の判別が難しい種別。時刻表に「快速」や「特急」と記載されているライナーは、基本的に固有名詞にライナーが使ってあると判断している。それらを除くとライナーが走るのはJRのみとなる。
 ライナーは乗車整理券を有料で発行し、必ず座れるようにした列車で、主に朝晩運行される。こちらは特急と違い、無料の列車はない。通勤を速く、しかものんびりとできることを売り物としている。なお、料金はバラバラである。JR東日本は500円で、グリーン車が連結されている場合もあり、着席重視である。JR東海、九州は300円前後で、速度重視。JR北海道は基本的に100円であるが、4列車のうち1列車のみ長距離運転され、その場合310円である。JR北海道の場合、乗車時間15分でしかも快速と同じ所要時間なので、存在意義が疑われるが、おそらく着席重視である。
 この中で例外といえるのが、JR東海のセントラルライナーで、1日中走らせている。そのため、存在としては名鉄の全車指定席特急に最も近い。全車指定席の快速とも言える。ただ、利用者は朝晩が多いので、結局は必ず着席できるというメリットの方が大きいのかもしれない。

直行

 K特急と並んで、無名な種別。西鉄でのみ、朝数本が運行されている。停車駅だけで見ると、特急と同等なのだが、短距離の運行で、しかも速度が停車駅の多い急行と大差がないという情けなさである。このように特殊な運行であるため、特殊な名前をつけなくてはならなかったのだろうと推測されるが、そもそもどうしてこのような列車を運行せねばならぬのか、という謎は未だ解けない。なお、西鉄大牟田線年表によると、1987年からの運行だそうで、意外と歴史がある。なお、当然ながら追加料金はない。

快速急行

 大阪周辺私鉄が好んで使う種別で、京阪を除く大阪大手私鉄全社で使われている。最近名鉄でも復活したが、東京では西武と小田急のみの運用。語呂は良いのだが、元々東京私鉄では急行の地位が高めなので、さらに上位の種別を用いる必要がないのではないか、と推測している。ただ、快速急行の設定により、大阪私鉄の急行の地位が下がった、という可能性も否定できない。
 急行より、少し停車駅を減らした、という使い方が一般的である。追加料金の設定は全くない。
※2004年12月11日のダイヤ改正により、小田急でも運用されるようになった。今後東京でも普及する可能性もある。が、小田急のせいで悪評が広まる可能性も…無きにしも非ず。なにせ小田急である。

区間快速急行

 近鉄の朝晩のみ使われる種別で、快速急行と急行の中間的扱い。確かにこの2つの種別の間にもうけようと思うと、このようにおかしな名前にせざるを得ないのかもしれない。私なら準快急とでもするが、似たり寄ったりであろう。

通勤急行

 通勤特急と同じく、昼間急行として走る列車を、朝晩に停車駅を減らし、通勤急行とするのが大半である。まあ分かりやすい。

急行

 世界的に見れば最も有名な種別であるが、日本に限って言えば地位低下が否定できない種別である。とはいえ、バリエーションが最も豊富な種別でもある。(なにせ種別の半分以上が急行を掲げているのである)
 JRでは一貫して、「主要駅にしか止まらず、距離に比例した急行料金を、別に収受する列車」という扱いである。料金が特急よりも低いため、特急よりも車両が劣悪で、停車駅が多いのが一般的である。日本人の所得が上昇し、高級志向が強まったことと、JRにとって特急料金の方が儲かる、といった理由(おそらく後者の方が強いだろうが)で、順次特急化され、現在残るのは1日1本しか運行されない場合が多い。
 例外といえるのがJR西日本で、JR各社では唯一、定期運行している。距離が中途半端で、特急だと高すぎるが、各停だと遅すぎる、といった区間で運行されている。
 一方の私鉄は、多くの主要な列車で利用されているが、快速急行の有無、有料か無料か、特急が有料か無料かで地位が大きく変わる。大阪の各社私鉄のように、快速急行があると、一般に地位が下がる。また、近鉄や小田急のように特急が有料だと、急行が追加料金のない列車の中で最も速い列車となるため、地位が上がる。そのような感じで、急行が主力か、あくまで補助かが変化する。

区間急行

 一部大阪私鉄の朝晩でのみ使用される種別。使い方は各社異なるが、共通するのは「準急より上、急行より下」といったことだろうか。また、朝晩でしか使われない点も共通している。

快速準急

 K特急、直行に次ぐゲテモノ種別である。過去小田急に設定があったようであるが、70年代に廃止されたようだ。意外なのは準急大国の東武ではなく小田急が採用していた点である。今後の情勢いかんでは、東武で亡霊の復活を見ることもあるかもしれない。
※追記
 東武は2006年3月18日のダイヤ改正で、現行有料急行の運用をやめ、特急に統合。無料の急行を新設し、準急大国の幕を閉じた。

通勤準急

 阪急の朝晩のみの運転である。準急よりも運転区間を短くしただけである。

準急行

 昔は「料金不要の急行列車」として人気を博し、現在の特急以上に長距離を走った列車も少なからずあったが、日本が戦争に突入すると、貨物が優先されたため、準急行が真っ先に削られ、戦後も復活しなかった。
 一方の私鉄は今でも急行の下位種別としてよく利用されている。特に本数が多い区間で、種別が豊富な区間で多い。ただ、消極的な利用がほとんどである。大抵は普通の補助的な役割が強く、多くは最下位優等列車である。

区間準急

 東武でのみの運行だったが、ダイヤ改正により、小田急でも運行開始した。東武では、北千住発の列車が区間準急、それ以外は準急と、運転区間の違いしかない。

特別快速

 快速の上位種別として、JR北海道、東日本、東海、九州で利用されている。使い方は2パターンある。快速も同じ区間を走っており、それよりも停車駅が少ない場合と、停車駅が非常に少ないので、快速ではなく、特別快速を割り当てた場合である。
 ただし、JRは元々停車駅間隔が離れているので、優等列車の種類が少ない傾向にあり、快速が4種類以上あるのはJR東海のみ。しかもそれぞれ1駅ずつしか停車駅の差がないので、大して意味はない。そのため、快速の上位種別である特別快速は、私鉄と違い、影が薄い。

新快速

 完全に快速の上位種別として使われる。なお、JR西日本が主に使っているが、JR東海も使っている。
 特別快速と違い、JRの通勤列車のなかでも最速といえる2箇所で使われているため、速いというイメージ自体は特別快速以上である。ただし、何を血迷ったか、JR東海が新快速から停車駅を1駅削った、特別快速という種別を設定しているので、特別快速より下だと言うイメージが強い。ここを、私は逆にすることを強固に主張したい。
 なお、JR西日本の新快速は通勤列車の中で最も速く、これより速い列車は、特急ですらあまりない。唯一JR東海の特別快速が追いつけるかといったところ。

通勤快速

 JR東日本と京王でのみ使われる。朝晩のみ運行され、快速の停車駅を少し削っている場合が多い。

快速

 元々はJRだけの種別であったが、東京私鉄でも使われるようになった。それ以外では使われていない。JRでは、料金不要で、停車駅が限られているものを押し並べて快速と呼んでいる。通勤区間では、新快速や特別快速よりも下位の扱いであるが、それ以外の地区では看板列車と呼んで良い。なお、英語表記は「Rapid」で、通勤列車とか都市列車といった意味になり、JRの使い方は適当である。
 私鉄でも使われている。最も地位が高いのは東武快速で、無料タイプの特急と呼んで差支えがないほど速い。西武快速は準急より上、急行より下で、地下鉄乗り入れ車に使われる。メトロではJRと同じ扱いである。京王、京成では、最下位種別として使われている。私鉄の場合、急行系統と快速系統が混在し、分かりづらい場合があるので、できるだけ混在させないほうが良いと思われる。特に京成と東武伊勢崎線は路線自体が近い上、意味合いが全く逆とあっては、利用者が混乱する可能性が高い。

区間快速

 一部JRでのみ使用される。朝晩のみ運行され、快速と同じ停車駅でありながら、途中から各駅停車になる、というパターンが大半。ただし、JR北海道では定期運行され、快速の下位的扱いである。他には、JR西日本に設定が多い。JR東海は一部。

準快速

 JR九州でのみ使われる、快速の下位という扱い。1時間に1本設定されているが、1時間3本の快速のうちの1本と考えるのが順当である。実は所要時間が快速と全く同じなので、停車駅が多い分、かえって快速より速いのではないか。

3,会社毎の種別使用傾向

JR

 一貫して長距離で有料のものが特急、短距離で無料の通勤用が快速と区別されており、分かりやすい。また、JRにしかない夜行列車も、種別が分けられていて明確である。ただし、会社によっては、夜走る特急、急行もあったりして、多少紛らわしい。また、国鉄時代はかなり徹底していた種別も、JR化後は少しずつ、特に快速、急行、L特急などの扱いなどで変化が始まっている。
 また、JRにしかない特徴として、特急の特別停車が挙げられる。私鉄の多くは、特急という種別が冠せられている列車は全て同じ停車駅であるが、JR特急は1列車毎に停車駅が微妙に異なる場合が多い。これはダイヤを複雑にするが、かといって中途半端な駅で全部停車させたり、全部通過させたりするわけにも行かず、現行のようになっている。また、固有名詞に「スーパー」を冠したものは、冠していないものに比べ、停車駅が少なかったり、スピードが速かったりするので、これも一種の種別と言える。

 新幹線はヨーロッパ式で、固有名詞のみである。英語では「Nozomi Super Express」であり、実は特急でない。ところが券は「特急券」である。そのため、おそらく超特急「のぞみ」が正式であり、英語が「Nozomi Super Limited Express」だと分かりづらいために上記のような英語表記になっている、と推測される。要するに新幹線は超特急なのである。…と言い切りたいところだが、注釈がある。JR各社は正式なコメントを出していない。そもそも新幹線は在来線とは全く別物、という考えが支配的なので、もはや種別などという、古臭い習慣は、"新"幹線には全く通用しない。…と考えることもできる。だから、種別は「新幹線」だともいえるし、種別はない、ということもできるし、「いや、俺は超特急にあこがれるんだ」と言うのであれば、それでも良いのではないか。(しかし、直訳すると超急行?なかなかに複雑である。最近の表記はShinkansenであるし。フランスのTGVの英語表現はどうなのだろうか?Shinkansenだったら傑作だが、おそらくTGVで表記されているのであろう)

東武東上線

 東武東上線は、東武伊勢崎線系統と全く別の系統を取っているので、このように分離している。東上線では、基本的に急行と準急しかないので大変分かりやすい。一応特急はあるが、1日1本なので、あまり考える必要がない。なお、特急は料金不要である。

東武伊勢崎線

 東武伊勢崎線は、特急が有料、他が無料という、近鉄と同じ形態を取っている。ただし、元々有料の急行だった特急は料金形態が異なるため、過去の有料急行の影を引きずっている。
 ダイヤ自体は、急行が無料となったため、大変分かりやすくなっている。メインを急行とし、サブを区間準急とするのが基本ダイヤで、あとは少数の区間快速が走ることになる。
 過去に比べ、分かりやすくなった種別構成だが、問題点がないわけではない。「区間」を冠する種別が主力として使われ、冠していない種別が朝晩にしか使われていないというのは、あまりきれいではない。また、快速系統と急行系統の混同も残ったままである。ベースとなるダイヤはかなり良いので、種別名のみの問題と言えよう。

つくばエキスプレス

 2005年8月に開業したばかりの新しい鉄道。種別は快速、区間快速、普通とあり、普通は守谷まで、区間快速は守谷から各停、快速はつくばまで快速運転という首都圏では模範的なダイヤだが、大きく異なるのは本数で、普通4本、区間快速と快速が各2本となっており、区間快速と快速がペアになっている。
 問題はやはり快速の本数が少ないことと、区間快速の停車駅が快速に比べ多すぎることである。この問題を解決するには、本数の増加で双方のペアを解消するか、区間快速をペアとして通用するほどに停車駅を減らすかである。具体的には、3-3-3ダイヤにするか、区間快速を守谷まで快速運転させるかのどちらかとなる。

西武

 特急が有料、他は無料の列車である。特急は基本的に、1時間に1本運行される。無料列車としては、東武伊勢崎線の快速と同じように、快速急行が運転される。通勤用列車は急行と準急に分かれて運行される。要するに特急≫快急>急行>準急というパターンで非常に分かりやすい。ただし、池袋線では準急と急行の間に快速が加わって紛らわしい。急行と快速の併用はよろしくないと言える。(どちらが速いか分からないので)また、快速急行の本数が少なすぎ、列車種別として中途半端な観が否めない。

京成

 特急の一部が有料で、他は無料である。朝晩のみ、通勤特急が区間特急の扱いで運行するが、大体、特急が主力で、それより停車駅の多い快速が同本数運行する。ただし、快速は地下鉄直通なのに対し、特急は上野へ直通するパターンが多い。
 京成の問題は2点ある。まず特急が有料無料に分かれていることだが、これは実際問題たいしたことではない。というのも、有料特急はスカイライナーという名が別についており、特に種別を分ける必要はないからだ。それより問題なのは快速系統と急行系統の混用であり、どちらかに統一すべきである。個人的には、快速を急行にするのが最も手っ取り早いように思える。

京王

 本数が非常に多いため、種別も多い。各種別1時間に3本しかないのも拍車を掛けている。ただし、種別には、行き先や停車駅が似通ったペアが存在し、実質1時間6本体制である。なお、有料列車はない。
 1つ目のペアが特急と準特急で、それぞれ京王八王子、高尾へ行くが、分離が終点間際であり、しかも停車駅が1つや2つしか違わず、両方合わせてちょうど10分間隔になっているため、ペアとして考えられる。2つ目は急行と快速で、快速の方が停車駅が少ないものの、行き先は同じで、相互に追い抜いたり、抜かされたりすることはない。ただし、急行は地下鉄に直通する点のみ大きく異なる。
 ペアのことに気がつきやすい特急、準特急の名は分かりやすいものの、急行と快速に関しては大問題である。どうして快速を準急にしないのだろうか。そうすれば、特急準特急と同様、非常に分かりやすくなる。
 なお、井の頭線では、急行のみが使われる。

小田急

 新宿をターミナルに持つため、必然的に近距離通勤列車としての意味合いが強いものの、路線が長く、しかも観光地に直通する箱根登山鉄道を傘下に収めているため、遠距離通勤路線や観光路線としての一面も持つ。
 観光路線の一面を反映して、有料の特急が設定され、しかも本数は、有料列車にしては非常に多い。次に快速急行がくる。快急は速いものの、本数が非常に少ない。急行は本数が多く、主力列車である。快速急行と急行は行き先が大きく小田原方面と藤沢方面に分かれ、種別関係なしの行き先となっており、分かりづらい。ただし、快速急行の藤沢方面行きに限り、相模大野で小田原方面行き急行に乗り換えられる。また、急行のうち、地下鉄直通で多摩方面に向かう列車は多摩急行となっており、急行と別扱いで停車駅も違う。区間準急は5駅程度通過し、すぐに各駅停車になる。行き先は多摩方面である。朝晩はこれに準急が加わる。
 最近の快急の設定は、その本数が少なく、行き先もばらばらであることから、ダイヤを分かりづらくしているだけ、と言う側面が強い。また、10分間隔の急行が、新宿行きと地下鉄直通に分かれてしまい、せっかくの10分間隔の意味がないという点も問題である。

東急

 どの路線も非常に短く、利用者が非常に多いのが特徴。そのため、つい最近までは、一部長距離路線で急行が走っていたのみであった。現在では、そのほかに、東横線で特急(朝晩は通勤特急に格上げ)が、田園都市線では上りの朝のみ、急行の置き換えで準急が走っている。
 上下関係は分かりやすくてよいのだが、東横線に限って言えば、特急が完全に名前だけになっている点はよろしくない。たしかに急行より停車駅はかなり少ないが、3分しか所要時間は違わず、しかも急行の追い越しすらしないような列車をどうして特急と呼べるのだろうか。そもそも、急行の停車駅が増えたから特急を設定した、という過去があるわけだから、急行と準急の方がしっくりくる。(百歩譲って快急と急行か)

メトロ・都営

 地下鉄では、各停が原則であるが、東京の地下鉄は郊外路線の延長として扱われていたり、郊外列車並みに長距離を走る路線も一部例外として存在し、そのような路線で優等列車が運行されている。具体的には、メトロの東西線(快速)と副都心線(急行・通勤急行)、都営の新宿線(急行)と浅草線(エアポート快特)である。
 東西線・副都心線・新宿線は、他の私鉄各社のような過去のしがらみがほとんどなく、かなり模範的な種別利用となっている。分かりづらい点はどこにもないし、かなり分かりやすい。メトロにおいて、急行系統と快速系統の混同は見られるが、そもそも地下鉄は路線が独立しており、何ら問題はない。また、副都心線は直通の関係で急行の方がむしろ適切だろう。
 問題は浅草線のエアポート快特で、止まらない駅がある割に追い抜きが行われず、また速度も速くないので、種別として存在意義がよく分からない。ただ、浅草線は全列車京急に直通という都合上、特急やら急行やらが種別の差があるにも関わらず停車駅が同じ点に関しては、さほど問題ない。この路線はエアポート快特が各停になればすっきりするように感じる。

相鉄

 路線距離が短く、利用者が多目という点で東急に似ている。急行と快速が運行され、行き先は異なる。重複区間では快速の停車駅が2駅多いものの、行き先が違い、しかも追い越しはしないので、急行系統と快速系統が混在してもそれほどわかりにくいことはない。ただ、快速はやはり準急の方がベストだろう。

京急

 完全に急行系ダイヤである。有料なのは快特「京急ウィング号」のみで、無料の快特も運行されるものの、固有名詞の有無があるので、この点に関しては大した問題はない。
 本線の昼間は快特と普通のみである。シンプルだが、ここで快特はいささか大げさであるように思える。(※1)本線はそれだけだが、空港線を含めるとダイヤは加速度的に意味不明になる。品川方面から来る列車は急行、快特の二種類で、快特は京急蒲田のみ停車、急行は多くの駅に停車する。ここまでは良いのだが、横浜方面から、快特と連結して走り、京急川崎で切り離され、京急蒲田で別れる特急がある。この列車は、京急蒲田まで快特、空港線内特急という扱いだが、なぜか空港線内では各停である。急行も各停なので、上下逆転現象は起こっていないが、あまつさえ種別変更し、しかも空港線内で同じ停車駅でありながら、種別が異なる列車が羽田空港に乗り入れていることになる。また、立会川への急行停車も不可解である。
 なお、特急は、朝晩になると本線でも姿を見せるが、基本的に快特の停車駅を増やしただけである。
 ここでは、快特を特急にし、さらに現行の急行の立会川停車をなくし、現行の特急を急行に切り替えれば、これ以上ないほどシンプルなダイヤになる。これで、快特は有料列車のみとなる。
 ダイヤは比較的シンプル(立地が東京であることを考えると、驚異的なほどのシンプルさ)だが、種別は大混乱している例といえる。鉄道会社の意図するどおりに乗れば問題ないが、多少特殊なルートで乗ろうと思うと、途端に混乱することになる。

(※1)都営地下鉄1号線への直通が実現した折に、東京都による、青物横丁駅の特急停車駅格上げの「強い要望」という名の圧力があったようで、最速列車を青物横丁に止めたくない京急は、特急を快特にすることで対抗したようだ。おそらく都営地下鉄の直通に対する条件として、非公式な取引があったのだろう。理由は品川区内に特急停車駅がなかったためだと言われている。それにしても、東京都のやり口は下品極まる(当時の京急はJRへの対抗上、どうしても東京都心部に直通する路線を欲しがっており、京急が断れるはずもない)が、京急もなかなか狡猾である。しかし、結果として利用者がちょっとした不便を被ったわけである。これは1968年の話であるから、そろそろ戻すことも検討したらどうか、と言いたいところだが、利用者にとっては勘違いの原因になるし、速度が落ちたのかと思われかねないので、鉄道会社としては、微妙な点である。無論、そんなことを考えなくてもいい私は変更を勧めるが。

名鉄

 近年まで特急・急行の2本立て(瀬戸線のみ準急あり)で数が少なかったたが、近年快速特急、特急、快速急行、急行、準急と一気に種類が増えた。有料のものは特急であるが、無料でも乗れる全車自由席、一部特別車と、料金必須の全車特別車の二種類がある。となると、種別は全部で、一部特別車快速特急、全車特別車快速特急、全車自由席特急、一部特別車特急、全車特別車特急、快速急行、急行、準急と、実質8種類で、なんというか混乱の極みといったところである。

 ただし線区別に見ると、京王と同じようなペアを見出すことができて、分かりやすい。本線では快速特急と特急(どちらも一部特別車)がペア、急行が快速急行と急行がペア、準急が一部区間のみ独立して運行、となっている。犬山線では、快特と特急(全車特別車)がペア、急行と準急がペアとなっている。なお、準急は各務原線に直通する。各務原線では急行と準急(線内で普通に変更)がペアになっている。瀬戸線では急行と準急がペアである。西尾線は特急(全車特別車)と急行がペアになっているが、料金必須と不要がペアになる大変珍しい例である。津島線では快急と準急があり、停車駅は2駅異なるが、線内はどちらにせよ各停に変わるので、大した差があるわけではない。また、本数も違うので、ペアというわけでもない。なお、ペア同士のものは、数駅しか停車駅の差がない。(逆に言えば、停車駅の差が少しあるということでもある)
 以上はペア中心ダイヤだが、次からはペアがない。常滑線(空港に直通する)は、快特(全車特別車)、特急(一部特別車)、急行がそれぞれ同じ本数運行される。河和線では特急(全車特別車)、急行が運行される。それ以外は各停のみである。

 名鉄は本線が実質6本あり、それらが線区により利用者、距離が全く異なり、そしてそれらの雑多な路線がすべて名古屋に直通し、また名鉄名古屋駅が終着駅という意味での「ターミナル」ではなく、単なる通過点に過ぎない(つまり、むやみに種別を変えられない)、といった諸要素が絡み合い、全体としてみると一貫性に欠ける種別となっている。おまけに途中で種別変更というのが朝を中心に存在し、特別停車駅もまだ多い。ただし、このような悪条件にも関わらず、路線毎に見れば努力の跡が伺えるので、甲乙付けがたい。
 空港線の開業により、今まで特急・急行の2本立てで、あまりペアを作らず、特別停車や種別変更があまりにも多いダイヤであったものを、ペアを増やし、特別停車と種別変更を激減させた。とはいえ空港線の種別も特殊であり、全体としてよくなったのか悪くなったのかよく分からないが、どちらかというと複雑になったように思われる。

 以上から、名鉄は、名古屋方面へ向かう際は分かりやすい種別だが、名古屋を挟んで別方面に行こうと思うと、複雑で戸惑う、そんな種別利用である。
 そのため、現行の種別は全体的に複雑で不満である。しかし、名鉄はその立地条件から「利便性」「全体の分かりやすさ」「路線毎の分かりやすさ」のどれかを犠牲にせざるを得ず、また、「全体の分かりやすさ」は優先順位が低いので、ある程度妥協しなくてはならないだろう。逆に、なんとか8種類に収めていることすら、行幸といっても良いような複雑さなのである。ただ、もう少し工夫のしようもあるような気もするのだが。

近鉄

 日本最大級の私鉄であり、長距離特急が本格的に走っている。しかし、完全に通勤路線と化している線区もあり、一筋縄ではいかない。
 有料列車はすべて特急で統一されている。ただし、特急は暗に甲乙が分かれ、2種類の停車駅パターンが存在する場合もある。この点はJRも似たようなものである。
 一方急行以下は無料である。全般に快急>急行>準急で統一されており、必要のない場合は快急、準急の順に省かれる。全体としてかなり統一されており、分かりやすい。ただし、難波線に限り、朝晩種別が倍になって、区間快速急行などという意味不明な種別が出たりもする。他線区でも、1種別が追加されたりすることもあるが、難波線ほどひどくはない。
 近鉄は全体的に良くまとまっており、分かりやすい。敢えて指摘するなら、特急の甲乙をもう少しはっきりとつけるべきであろうが、全車指定席だから窓口で説明すれば済むので、大きな問題ではない。あとは難波線の朝晩ダイヤぐらいか。

京阪

 なかなかユーモアな種別もあったりする会社である。有料列車はない。
 昼間は特急>準急で統一されている。準急の行き先は2タイプあり、準急主力ダイヤである。ところが大阪私鉄のご多分にもれず、朝晩の種別が多い。具体的には、K特急、急行、区間急行が追加される。K特急は前例がなく、よそ者には分かりづらい。
 また、準急を急行にしろと主張したいところであるが、準急の停車駅は、急行にするほど停車駅が少ないわけでないので、まあ妥当なのかもしれない。

阪急

 本線を3つ持つ大阪大手私鉄。距離が長くないので、有料列車はない。
 京都線は特急>急行、神戸線は特急のみ、宝塚線は快速急行のみだが、3時以降急行になる。線区別に見れば分かりやすいのだが、全体としては、宝塚線が急行、準急の方にすると、しっくりくる。
 朝晩はご多分にもれず、種別が増える。というより、昼間の種別はほとんど残らないので、はっきりと朝晩種別と昼種別が分かれている、と言う方が適当である。京都線は特急→通勤特急(晩は快特)、急行→快急で、それぞれ本数が減る。神戸線の朝は特急→通勤特急となり、急行も運行される。晩は昼ダイヤに快速急行が追加される。宝塚線の朝は通勤急行と急行の2本立て、晩は特急「日生エクスプレス」が運行される。
 全体としてまったくかみ合っていないので、ある程度統一した方が良いと思われる。ただし、路線毎に見ると、まあ分かりやすい。

阪神

 阪急やJRとほぼ全線が並走し、厳しい立場にある私鉄。有料特急はない。
 昼間の種別は特急>急行となっており、分かりやすい。朝晩も、準急が追加されるのみで、大差ない。模範的な種別利用である。

南海

 本線は南海線と高野線の2本あるが、性格が全く異なるため、同列で語ることはできない。
 南海線は空港線もあるため、特急が多い。特急は「ラピートα」「ラピートβ」「サザン」とあり、それぞれ停車駅、行き先が異なる。「ラピート」は空港行き・全車指定で、αよりβの方が停車駅が多い。「サザン」は一部指定であり、和歌山へ行く唯一の優等列車となっている。
 一方の高野線は全車指定の「りんかん」が走るほかは無料で、快急と急行がペアになって走っている。準急もあるが、急行と停車駅は変わらず、途中から各停になるものの、すぐに泉北高速線に入る。
 立地条件が2線で全く異なるため、種別が双方でちぐはぐな状態である。ただし、乗り換える人間はそれほど多くなさそうなので、それほど問題はない。ただ、南海線は本数の割に種別が多すぎるような気がする。

西鉄

 昼間の運用は特急>急行で大変分かりやすい。ただ、朝の直行は停車駅が特急と同じで、あまり意味がない。ただ、西鉄の特急は行き先が大牟田で統一されているため、それを乱したくないのであればそうするしかない。また、快速急行もあるが、数本しかなく、何のためにあるのか良く分からない。
 例外はあるものの、全体として模範的で、分かりやすい種別である。

4,まとめ

 張り切りすぎて、書きすぎました。渾身の作品ですが、間違えなどありましたらメール下さい。間違いだけでなく、感想や意見主張だろうが、何だろうがかまいません。よろしくお願いします。