Hysteria(300.11)

 Freudが活躍した時代のウィーンは厳しい性道徳に支配さてれおり、ヒステリーが発症しやすい時代であり、場所であった。しかし、現代は性に対して開放的であり、典型的なヒステリー患者を見ることは稀である。ヒステリーは精神医学の発展に貢献し、精神分析が生まれる端緒となり、もうその役割を終えようとしているように見える。DSM-IVからヒステリーという項目が消えて、解離型のヒステリーは解離性健忘、解離性遁走に、転換型のヒステリーは転換性障害に変更されている。ここでは転換型ヒステリーを取り上げる。

【診断基準】

A.神経疾患または他の一般身体疾患を示唆する、随意運動機能または感覚機能を損なう一つまたはそれ以上の症状または欠陥
B.症状または欠陥の始まりまたは悪化に先立って葛藤や他のストレス因子が存在しており、心理的要因が関連していると判断される。
C.その症状または欠陥は、(虚偽性障害または詐病のように)意図的に作り出されたりねつ造されたりしたものではない。
D.その症状または欠陥は、適切な検索を行っても、一般身体疾患によっても、または物質の直接的な作用としても、または文化的に容認される行動または体験としても、十分に説明できない。
E.その症状または欠陥は、著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域の機能における障害を引き起こしている、または、医学的評価を受けるのが妥当である。
F.その症状また欠陥は、疼痛または性機能障害に限定されておらず、身体化障害の経過中にのみ起こってはおらず、他の精神疾患ではうまく説明されない。

≫症状または欠陥の病型を特定せよ

運動性の症状または欠陥を伴うもの(協調運動または平衡の障害、麻痺または部分的脱力、嚥下困難または"喉に固まりがある感じ"、失声、および尿閉)
感覚性の症状または欠陥を伴うもの(触覚または痛感の消失、複視、盲、聾、および幻覚)
発作またはけいれんを伴うもの(自発運動性または感覚性要素を伴った発作またはけいれんが含まれる)
混合性症状を示すもの(2つ以上のカテゴリーの症状が明らかな場合)

【病因】

 Freudはヒステリーをエディプス的な葛藤から生まれるものであるとした。思春期以降に性的葛藤から、男根期(エディプス期)への退行がおこる。そして近親相姦的な不安と葛藤に対する防衛から症状が発生するという。そこで用いられる主な防衛としては抑圧、退行、同一視、そして転換である。しかし、症例ドラから前エディプス期へ原因を求めることも考えられた。前エディプス期への原因の探求はFairbairnのシゾイド葛藤に対する防衛としてのヒステリー技術の理論に見ることが出来る。
現在はFreudの理論に疑問を呈し、ヒステリーは人格的な部分からの疾患であるという認識が広がっている。Gabbard,G.Oは演技性人格障害とヒステリー性人格障害を別の状態と見なし、前者は口愛期に母性を剥奪され、その結果として父親の気を引くために感情を劇的に露出することを学び、また父親に気に入られるために自分の性器的性愛も抑圧するようになる。その結果あらゆる性的な関係が口愛期的なものとなってしまう。しかし、後者は口愛期は問題なくクリア出来ているが、エディプス期に固着している。その結果母親から父親にリビドーの対象を移行できず、母親に男根的な愛着を持っている。そのことからくる自己愛的傷つきを避けるために身体男根という状態になる。それにより自分を飾り立て、それを誇示するための大げさな自己アピールになるのである。