『つばめ飛ぶ』をクリアしていただき、ありがとうございました。つばめの物語、いかがだったでしょうか。
この作品は、作者の初めての作品です。どうして作ったかというと、「一度、作者というものになってみたかった」という理由が一番当てはまります。「自分でひとつの世界を作る」というのが、とても大変だけれど、魅力があるように思えたのです。
以前、ファンタジーを書こうと、漠然と思いついていたのが、『つばめ飛ぶ』の初期稿でした。犯人(のちの百万)に捕われた父親を救おうと、主人公3人組が、犯人の住む城に乗り込む話でした。
しかし、なかなか筆が進まず、執筆中止。でも、執筆のためのファイルは、消さずに、コンピュータにとってありました。
そして、去年、RPGで作品を作るというひらめきを得て、昔のファイルを取り出して、制作を開始しました。制作にあたって、ストーリーを大幅に見直し、矛盾するところや、他のテーマが入ってきてしまうような箇所を削りました。
作品を作るにあたってコンセプトにしたのは、「成長物語」ということです。RPGでは、敵と戦うことによって、主人公が成長して行きます。『つばめ飛ぶ』は、それに加えて、内面の成長をどこまでRPGで描けるか、という試みでした。
なぞ解きよりも物語として味わってもらいたかったので、キャラクターの指示に従っていけばクリアできるようにしました。そのかわり、マップは大きくなっています。これは、ゲーム中の世界を(そしてつばめの抱える孤独を)、よりリアルなものにしたかったためです。
音楽を作る
先ず作ったのは、ボス戦のときに使われる挿入曲です。ある日、向こうからやって来て、書き留めるまで離れなかったメロディーを、クラシック数曲を参考に発展させて作りました。繰り返し演奏されるというゲームBGMの特徴から、変奏曲形式にすることにしました。
題名の『Eleison』は、ミサ曲の歌詞からとりました。「憐れみたまえ」という意味です。「同情」という言葉は、他人を理解するためのきっかけ、または手段として、ヨーロッパでは積極的な意味を持つ例があることから、この題名を選びました。この題名で分かる通り、これは百万のテーマです。
長調のエンドタイトルで使ったバージョンは、短調ができてから手をつけました。
本当は、両方とも弦楽四重奏で演奏したかったのですが、技術上の理由から弦楽器では違和感が出たため、ピアノで演奏させることにしました。
マップを作る
はるかに難航したのは空路マップです。
最初に作った版では、通常RPGに見られるような、人物と同じ大きさの街アイコンを使っていたので、マップが大量に要り、1500枚を超えました。テストプレイをしてみると、作者でさえ迷子になるという事態が発生したため、飛行高度をあげることを決意、この大量のマップをスクリーンショットにとってつなげ、縮小したのが、現在のマップです。
空路マップを作る時に、一番気をつけたのは、「描きすぎない」ということです。空以外は、手描きではない、マップチップを使ったマップなので、それと比べて違和感を覚えないように、できるだけ必要最小限の絵にとどめました。
作品中の固有名詞
作品中の横文字の名前は、ほとんど、ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハの『パルチファル』から採りました。
『パルチファル』は、高名な騎士の一人息子でありながら、「息子を危険な目に会わせたくない」という母の願いから、外界との連絡を絶たれた森の中で育てられた主人公パルチファルが、聖なる騎士団の長になるまでを描いた、ドイツの中世叙事詩です。日本語訳は、『パルチヴァール』という題名で、郁文堂から出ています。
この作品からは、「森の中でさまよう城」「城主は、自分の犯した罪のために、城の中で苦しんでいる」「主人公の、相手を思いやっての一言が奇跡を呼ぶ」というモチーフも採りました。
また、人名のうち、「キャラクター紹介」で断っていないものは、すべて、この作品から採りました。
地名のうち、「イリリア」だけは、シェークスピアの喜劇『十二夜』から採っています。「異国で生きなければならない少女が、その異国で働いて生きていくために、新しい自分になる必要に迫られる」という根本的なシチュエーションが、つばめとだぶったからです。
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