・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 農業簿記Q&A 仕訳例題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Q: 直売所に関わる取引と消費税はどうなるのか A 具体例で考えてみます。 「生産者Aは、自家生産物(生産物価格1000円)を、直売所に販売を委託 した。  直売所は、生産物を販売した後、直ちに販売手数料(100円)を差し引い た金額を生産者Aに現金で渡した。」 1,生産者の取引は? 生産者側は、委託販売ということですので、生産物販売を直売所に配送した時 点で、「積送品」扱いとなり「売上」にはなりません。 そして直売所で売れた段階で「売上」を計上することになります。 本来、積送品の段階と、売上の段階で仕訳が必要なのですが、現実的には、直 売所からお金が入金された段階で「売上」と記帳するのみのケースが多いので はないでしょうか。 どちらの場合でも、売上のタイミングは同じになるので、実務上の問題にはな らないと思われます。 生産者が、消費税の課税事業者になっている場合は、税込みの価格(1050円) で販売を委託することになります。ちなみに売上時の仕訳は次のとおりです。    課税事業者の場合・・・ 現 金 1050円 / 売上  1000円  (税抜経理の仕訳)             / 仮受消費税 50円              販売手数料100円 / 現 金  100円 2,直売所の取引は? 直売所は、受託側ですので、受託した生産物は預かり品であり、原則は記帳対 象外になります。販売により手数料を差し引いた時点で、「受取手数料」が発 生します。 一連の記帳では、受託販売という勘定科目を使うのですが、分かり難い面もあ るため、現実的には、販売時点で仕訳する方法でも良いかと思われます。 直場所(免税事業者の場合)の販売時仕訳は次のとおりです。              現 金  100円 / 預り金  100円 3,販売時と現金受取時の時間差 期中であれば、実務的には無視しても構わないでしょうが、期末を挟む場合は、 野菜等のJA出荷と同じで、販売が確認された時点で売掛金扱いとなります。 4,その他 上記の点を踏まえて、問題になりそうな部分を上げてみます。 (1)販売表示額 生産者が、課税事業者Aと免税業者Bがいる場合で、それぞれの生産物が、全 く同一の価値だとして、同一の生産物価格を設定したとすると、 (例)  A→生産物価格1000円 +50円(消費税)→直売所表示額1050円  B→生産物価格1000円          →直売所表示額1000円 となり、これは消費者から見れば、一物二価となるわけで、混乱させる可能性 や、Aの物が売れないということも想定されます。 結局、Aは、Bよりも安く生産物価格を設定し、直売所の表示額で、1000円 とするしかないでしょう。 (例)  A →生産物価格 953円+57円(消費税)→直売所表示額1000円  B →生産物価格 1000円        →直売所表示額1000円 (2)直売所の運営形態 直売所の運営形態にもよりますが、受取手数料による収益構造の場合、その金 額から想像して、消費税の課税事業者にならないケースが殆どではないでしょ うか。 ただし、それ以前に、直売所の運営形態が、任意組合なのか、法人なのか、人 格なき社団なのか、明確にしなければ議論になりません。 特に任意組合と人格なき社団の境界は微妙ですから、組織毎の運営形態を整理 してからでないと、判断出来ないと思います。 ちなみに、任意組合なら、収益が各組合員に帰属するため、課税事業者にはな りません。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・