バリアント考 大江戸バリアントのサイト大幅改装を受けて、シナリオ作者から見たバリアントエンジンについてあれこれ。 まず始めにこう言ってしまうのも何ですが、未完成品含めてこれほど林立しているというのに、 私はバリアント企画全般に対していまひとつ心惹かれるものを感じません。 そういうわけで、どういう点が私にとって物足りないのか。 逆に言えばどういう改良を期待しているのか徒然に書いてみます。 【明確なコンセプトがない、もしくは非常に分かりづらい】 例えば、ここに一つのシナリオのネタがあるとします。 それを中世ファンタジーにせず現代風あるいは和風に作れば、確かにバリアント用シナリオは完成します。 でもですよ、バリアントエンジン作ってまでやりたい事って表面の味付けを変えるだけなんですか? その世界観でしか表現できない物語とは何か。そしてそれがどう魅力的なのかをもっとアピールして欲しいです。 余談ですが、以前学園バリアントのじぇんつさんとしなさくコムのチャットでご一緒した際、 学園モノでしか出来ないことの例として「ホラーが作りやすい」ことを挙げていました。 プレイヤーキャラクターに戦闘能力がないため、追われる恐怖感を演出しやすいのだそうです。 大江戸ならプレイヤーとの共通認識として史実や御伽噺を絡めやすいという点でしょうか。 【企画者によるオリジナルシナリオおよびリソース配布がない、もしくは非常に少ない】 上記と関連しますが、その世界観の利点を誰よりも理解していなければならない企画者自身が 十分な数のシナリオを提供できていないバリアントが多いのが現状です。 私としては、エンジンを作ることが重要なのではなく、むしろエンジン完成後に魅力的なシナリオを 製作することが重要だと思うのですが、そういった認識はまださほど広くは浸透していないようです。 リソースについても同様で、世界観の幅を広げるための素材作りを企画者が行わない(出来ない)というのは バリアントエンジンとしてはかなり致命的だと思います。 素材製作能力のない人にバリアントエンジンを作る権利がない、とまでは言いませんが それならそうで素材製作者さんに最低限のアピールをする必要はあると思います。 多くのバリアントエンジンが本体画像の差し替えにだけ躍起になって その後に必要な素材についてはあまり考慮されていないのを見ると、 どうにも流行に乗ってみただけの「自分のために素材たくさん描いてね」企画に過ぎないという印象を 拭いきれません。(愛護協会から出た探偵バリアントでさえ) しかし、この点では大江戸の力の入れ方は凄いですね。 純和風シナリオを製作するにはまだまだ数が必要でしょうが、 和風要素を取り入れた中世ファンタジーシナリオなら、敷居が二段ぐらいは確実に下がりました。 専用イラボもうまく人を呼び込むことが出来れば、劇的に和風素材が増加すると思います。 【CardWirthのシステムと親和性が低い】 バリアントエンジン自体をさほど使い込んだことがないので詳しくは分かりませんが、 一つには名前と呼称の問題がありますね。カタカナ名ではさほど気になりませんが 日本名で苗字と名前の使い分けが行われていないと、それなりに違和感を感じるものです。 特に教師と生徒が1つのパーティに混在できる学園バリアントでは対処が面倒そうです。 探偵バリアントにしても、6人で集団行動する探偵にはかなり違和感があります。 中世ファンタジー世界観に最適化(というとやや大げさですが)されたシステムを 他の世界観にそのまま流用するのはなかなか辛いものがあります。 かと言って何から何まで同じにしてしまうと、表面を変えただけのエンジンになってしまいますし、難しいところです。 話はやや逸れますが、大江戸バリアントの口調称号はどう考えても多すぎますね。 当面のシナリオ増加の妨げにならなければいいのですが。 【要するに何が言いたいかというと】 バリアント企画者はエンジン完成で満足せずに、シナリオを多数製作すること。 Askシナリオリメイクも必要だが、それ以上に世界観の魅力を伝えるためのオリジナルシナリオが必須。 バリアント企画者は素材を量産すること。不可能なら最低限、素材サイトリンクの設置や 素材を作りやすい環境整備が必要。例えばネタが浮かばない人用にカード絵お題100題を作ってみるとか。 バリアント企画者は中世ファンタジーと操作感が異なるなど分かりにくい点について詳しく説明すること。 探偵では世界観の共通認識についての説明。大江戸では方言(口調称号)の対応例の紹介。 学園ではパーティの組み方(6人で固定せずシナリオごとに入れ替える)やスペシャルパワーの使用例など。 バリアントエンジンは企画するだけなら簡単だけど、実際のプレイに耐えうるエンジンを作るのは至難の業。 バリアント製作の難しさをよく知らないままに企画されたバリアントエンジンは 店シナリオ製作の難しさをよく知らないままに粗製濫造された店シナリオ群に似ている。ように思う。 Pabitさんの心構えがそのまま当てはまることが多い。 # 消失してしまったのでそのままコピペしておきます。 # ・店シナリオのスタートラインは、他の分野よりずっと後方にある。 # ・店シナリオを作るあらゆる大義名分は、「交易都市リューン」の存在で一蹴される。このシナリオだけで必要十分なカードが揃うからだ。 # ・店シナリオを作る意義はただ一つ、互いの趣味を満足させることである。 # ・店シナリオの魅力は、それぞれのカードの魅力に他ならない。 # ・カードの魅力は、威力でも値段でも機能でもない。雰囲気である。 # ・カードが魅力的でも、バランスが悪ければ見放される。 # ・CardWirthのシステムを深く理解してなければ、まともな店シナリオは作れない。 # ・店シナリオは、高い技術を持つ者でも作るのが難しい。 # ・店シナリオの評価は、他の分野よりもずっと厳しい傾向にある。 大半は否定的な内容になったけれど、今あるバリアントエンジンが存在しなければ このように「理想的なバリアントエンジン作りとは?」というテーマも生まれないわけで 今後も試行錯誤を繰り返してより魅力的なバリアントが作られると(もしくはそう改良されると)いいなと思う。 2009/03/12 # 攻撃的な文章を書くと変に疲れるなぁ。 # 本当はこんな言い方がしたいわけじゃないんだけど、 # 考えを正確に文章に置き換える能力が足りないので勘弁してください。