■ガチ理論派男性シナリオ作者の作る恋愛シナリオは面白いか 最近柄にもなく少女漫画なんぞを読んでいます。『君に届け』(椎名軽穂)です。 まー少女漫画はほとんど未開の地なので、いちばん無難そうな作品から手をつけてみたというわけですね。 手に取るまでは読み続けられるかちょっと不安でしたが、これはこれで新鮮です。なかなか面白いです。 「恋愛パートが特に面白くない人は主人公の成長物語でお楽しみください」という作者のスタンスが好印象です。 本作は、実写映画化もされたぐらいの作品なので綿密な人物造形と繊細な心理描写が……というわけではなく 読み進めていくと、普通に粗というか心理にいまいち共感できない箇所が (私が少女漫画文法に不慣れなことを差し引いても)ぽんぽん出てきます。 具体的なことはさておき未読の方でも分かるように説明すると、例えば 少女漫画特有の顔面アップで大ゴマ並べて、雰囲気で何となく押し切っているようなシーンがいちいち気になるのです。 さてここで私の性格なのか、それともシナリオ作者の端くれとしての性なのか 自分が作者だったらどう描くか延々と考えてしまうわけです。 ただし私は絵がからっきしなので漫画は描けません。 CardWirthという使い慣れたツールで恋愛を描くならどう作るかと考えます。 というわけで、私こう見えて表題通りのガチ理論派男性シナリオ作者ですので、 大体こんなことを考えます。情緒も何もあったもんじゃない。 ・プレイヤーキャラクターをくっつけてしまうとプレイヤーを納得させるのが大変な上に  年齢性別あれこれの分岐が面倒くさいので、カップルはNPCの方で用意します。 ・恋愛モノの様式美または慣習として「すれ違い」「恋敵」あたりは肝というか、必須要素だと思うので  他にもがちがちのテンプレで周囲を固めます。 ・ただし、これら全てを「お約束だから」で片付けず、いちいち客観的に納得のいく理由づけをします。  例えば  誤解が生まれるのは意思疎通が不十分なためなので、適当な理由をつけてカップル2人を引き離す必要がありますし  カップルの少なくとも片方は、恋敵が出現する程度に魅力的な人物として描く必要があります。 ・読み物に特化するのは色々リスキーなのでゲームとして一応成立させます。  プレイヤーにはこのカップルをくっつける過程を楽しんでもらいましょう。 ・ただし主眼はあくまで恋愛に置きたいので、心情の機微を読み取ることが攻略に繋がるようなゲームにします。 ・最終的にカップルが結ばれてエンディングを迎えるためには何かしらのイベントが必要ですので  ラスボスにあたる位置づけの何かを用意します。  またこの展開を見越して、彼らがすれ違う理由はほどほどにしておきます。 ……とここまで考えたところでふと気付いたのですが、これって『男と女の高い壁』の焼き直しですね。 面白いかどうか以前に二番煎じじゃ意味ないじゃん。 詰まらない物にはならないと思うけど、これじゃまだ物足りんなぁ。 2010/11/14 # 久しぶりに書きかけ放置テキストの蔵出し。 # 結論をあれこれ悩んでるうちに『君に届け』最新11巻まで読み終わってしまった。(^^;