全滅志向の戦闘バランス 私が敵キャストの戦力を調整する際に何を意識しているかについての覚書です。 他の作者さんとはちょっと違う考え方なんじゃないかな、と思ったので文章に起こしてみます。 自作品の戦闘バランスを設定するうえで、私は以下の点に気をつけています。 ■「シナリオ全体でその戦闘がどれくらいのウェイトを占めるか?」 一口に戦闘といっても様々なパターンが考えられます。思いつくままに例を挙げてみると ・読み物の中に配置されたワンポイントとしての戦闘シーン、ストーリーに関わる中ボス、そしてラスボス ・ダンジョンの中でのランダムエンカウント、固定エンカウント、あるいはボス戦 ・戦闘に主眼を置いた作品での戦闘 ……などなど。 これらは、たとえ同じ敵パーティとの戦闘であっても、全く別物としてデザインされるべきです。 差別化する方法としては 勝利までのラウンド数、パーティの被害規模、技能カードの消費状況、自動選択カードで勝てるか など多くの要素がありますが、その中でも私が中心に考えていて また他の多くの作者さんがあまり考慮していないと思われる要素がこれです。 ■「どの程度の全滅率であれば許容できるか?」 この文章を読んでいる人の中には どんな場合であってもプレイヤーキャラクターが負けることはストレスでしかなく一切許容できない、と 考える方がいるかも知れません。 あえて言い切ってしまいますが、それは違います。 敵キャストの戦闘力を表現するのに全滅率は、安直ですがそれゆえ非常に有効な表現方法なのです。 かといって闇雲に強い敵を出せば強敵になるわけではないのも自明です。 では、どういう時に全滅率を上げても良いのか。幾つか例を挙げてみます。 ・物語の中で強敵、絶望的状況として描いておく 最も多く使われる手段です。こうすることでプレイヤーは戦闘にあたって多少なりとも身構え 仮に敗北したとしても、ある程度仕方ないこととして捉えることができます。 ・ストーリー上冒険者にとって予想外の事態が生じた場合 当初の依頼とは別の強力なモンスターが出現した、味方だと思っていた人物に裏切られた、など 予想外の状況を武力行使で乗り切れることは稀です。 普通の筋書きなら戦闘を避けるよう画策しますが、それが失敗したとなれば 全滅に繋がったとしてもおかしくありません。 ・2回目の方がうまく戦える場合 特にギミックを多く用いた戦闘では、プレイヤーがシステムに不慣れなために 効率の良い戦い方を見つけるまで事故死することが多くなります。 このような場合、やり直すことでプレイヤーが要領を掴むことが出来るため全滅することに意味が出てきます。 ・プレイヤーが戦闘バランスに関与できる場合 プレイヤーが(報酬増や戦力温存のため)自主的に厳しいバランスを追求したことで全滅したとしても それはプレイヤーの判断ミスであるため、結果に納得しやすくなります。 # 最も単純な物であれば、シナリオ中で回復アイテムが入手できる、というのもここに分類できます。 # アイテムを持ち帰ることと戦闘難度のトレードオフというサブゲームが成立しているため # 消費アイテムをケチることで全滅しても不公平感は少なくなります。 逆に全滅率を上げてはいけないのはどんな時かというと ・直前のセーブポイントが遠い場合 文章コンテントだけならEnterキー長押しすればいいのですが 例えばダンジョン探索からやり直しとなると、プレイヤーにとって大きなストレスになります。 これを防ぐため誰の目にも明確なセーブポイントを用意したほうが良い場合もあるでしょう。 ・戦闘自体が長丁場の場合 同様に、やり直しが単純作業となってしまうため避けた方が良いでしょう。 全滅率の極端に低い戦闘だけを作っていれば、ある意味プレイヤーにとっては快適といえるかも知れません。 しかしそれでは個々の戦闘の重さを表現することはどうしても難しくなります。 たまにはプレイヤーキャラクターが敗北してもいいじゃない、と思うわけです。 というわけで以上、柚子さんのAtoZリプレイとはすこぶる相性が悪い戦闘設計法でした。(^^; 柚子さんのブログはこちら→http://yuzuponno.blog55.fc2.com/ キャラメイクの上手さ(きぐるみ可愛い!)もありますが、インターミッションのテキストがすごく好きです。 2011/04/06 # 更新祭り第4弾。柚子さんのブログが記事消滅してしまっているのが残念。