アダルト・チルドレンの叫び  第1回  「自分」が殺される  最近、私の頭の中はかの有名なタレント・今田耕司さんのことでいっ ぱいである。といってもファンになったというのとは少し違う。好きで 夢中になったわけでもない。ではなぜ頭の中が一杯になるかというと、 テレビで見せる彼は生まれついた本来の私の姿と限りなく似ているから である。  特に、「マジカル頭脳パワー」での彼はまさしく本来の私そのものと 言っていい。ただでさえとかく人目をひき目立つ(?)のに、さらに目 立つ行動に走ることがある。時に理性より先に言葉が出る。だからいる だけでにぎやかになる。  ところが、こんな本来の姿に気づいたのはほんの2〜3年前のことだ。 それまでは自分の中でも、こんな性格であっちゃいけないと思っていた。 というより、「思わされていた」という方がより正確だろう。  私の親は私に対し、勝手な理想像を作り上げている。そして、私をその 通りの人間にしようとした。理想像に近づきそうなことを強制し、遠ざか りそうなことは排除した。はっきりいって私にとってはそれがきつかった。 何しろその理想像というのが本来の私からかけはなれていたのみならず、 全く逆といってもよかったからだ。  年齢に従って人並みに育ち、どんな集団にもとけ込め、目立たず、まわ りと同じような行動をする。幼稚園児、小学生の頃は皆と楽しく遊び、中 学生・高校生になればおしゃれに目覚めファッション雑誌などを読む。そ してどこかの女子大の英文科などへ進み、いつのまにか料理や洗濯や掃除 などを覚え、人並みの年齢で結婚し、夫をたてて良妻賢母になり…という のが、おおかた親の理想像だろう。しかし私の運命はそれとは大きくかけ はなれた。人目を引く、目立つ性格。まわりと同じような行動は大嫌い。 くだらんことでいじめにあい、クラスにはとけ込めなかった。おしゃれに 目覚めた同級生たちの派手な格好が大嫌いで、高校卒業の頃までおしゃれ はしなかった。大学は出身高校で前例のなかった北大数学科へ進み、そこ でも目立ちまくった。料理や洗濯や掃除は教えなきゃ覚えない。結婚した って良妻賢母になる気などないし、年齢よりタイミングだと考えている。  私は、親が理想をもつことをどうこういいたいわけではない。理想像を 押し付けるなといいたいのだ。私の場合みたいに、その理想と実際が全く 逆であったならあきらめなくてはいけないと思う。なのに、私の親はこり ずに理想像を押し付ける。しかも、その理想像についていかれなければ、 父親からはものすごい力で叩かれ、母親からはものすごいイヤミを言われ る。口答えすれば「おまえなんか世間から捨てられるんだ」と一体何回言 われたことか。あまりにも頭が固すぎる。そんなこと言ってたらそれこそ 今田耕司さんなんてどうなるのかと言いたくなってしまうが、その程度で は聞き入れないであろう。これでは、まるで私の「自分」という人格を殺 しているようなものである。  突拍子もない書き出しから始まってしまったが、これは私の文章の特徴 なので勘弁していただきたい。さて、何のためにこの文章を書き始めたか というと、決して親の愚痴を言いたいわけではなく(一見そう感じられる かもしれない)状況を整理したいのだ。私が親のどういうところにどのよ うに腹が立っているのか、話しただけでは整理がつかなくなる。文章にす れば、いくぶん整理がつく。  また、もちろん状況を整理することで、どのようにすれば解決するかも 探っていきたい。したがって、何回で終わるなどは全く未定である。気が 済むまで書かせていただきたい。  この文章に対する意見なども歓迎している。とはいえ、全く私の立場を 考えずに親を擁護する意見は内容上困るが(というより私がぺしゃんこに なりかねないからなのだが)。家族のあるべき姿というのを、じっくり考 えていきたい。