アダルト・チルドレンの叫び  第11回  親は変わってゆくけれど  今まで、私の話を聞いて家庭を変えようと考えた人は数多い。しかし、 ことごとく失敗に終わっている。それでは全く望みがないと考えてしま うだろう。しかし、そうではない。最近気づいたことだが、私は親を変 えている。家庭を変えている。  カチカチの親の頭が、私によってすこしやわらかくはなった。なぜか 具体的な例を出せと言われると出てこないのだが。  しかし、どうやっても変わらない所がある。かってのひどい暴言に対 してその責任を私にだけ求めるところだ。言いかえれば、あんたが悪い からあんなこと言われたのよとしか言わない。  いったい、私をどこまで悪者扱いすれば気がすむのか。あんなに多く の人が言うんだから悪いのはこっちだ、というのがまず納得いかない。 あんな考えの片寄った集団で多くの人が考えたからどうだというのだろ う。それは多くの人と言うにはふさわしくない。考えが多岐にわたって いないからだ。それに、そもそも集団の考えだからといって正しいとは 限らない。なのに、よく中身を考えもしないで集団の考えだから正しい というのは納得いかない。  仮に正しかったとしても、あまりにも悪いところだけ数え上げすぎだ。 ろくにほめもしない。親はちゃんとほめたと言うだろうが、何をほめた。 容貌と成績だけではないか。性格を決してほめはしない。ただ欠点をつ つくだけ。  当然私の自尊心はガタガタになってしまう。それをまたつつくから許 せない。誰がガタガタにしたって言いたくなる。さんざん大切な自尊心 をガタガタにしておいて、それに伴う精神障害は責めまくる。私だけか どうかわからないが、自分でやったことが原因で起きたことを責めるの は許せない。  ・・・のわりに、私の心はそうやわにはできてないようである。自分 を肯定的にみてくれるところを見つければ、そこにはまりこんで自ら傷 を癒してきた。実際に、これで小さい心の傷はほとんど癒した。悪い所 ばかり数え上げる親のもとに生まれた子供の、生まれ持った能力と言っ てもいいと思う。この能力がなければ、この年齢まで力強く生きること はできなかっただろう。  またそして、癒せるような環境にみずから飛び込んでいく。あるいは、 癒しのステップになるような環境に。そこで失われた自尊心を回復して いくのである。  それはいいのだが、親は私のそういう能力に頼り過ぎている。家庭は 決して癒せるような環境ではない。そのために、せっかく回復した自尊 心が家庭に戻ったとたんガラガラくずれおちるという状況におちいるこ とがよくある。また、くずれおちた自尊心を立て直すのもまた大変だ。 家庭には私の自尊心をくずれさせる要素はたくさんあるが、回復させる 要素は少ないからだ。そのうち精神的にくずれおちてしまうパターンさ えある。  私が周囲をあまり気にせず行動するからといって、自尊心が強いとで も思っているのだろうか。それは大きな間違いだ。視野の狭い私の両親 みたいな人にはわからないだろうが、そういう人に限って自尊心が人一 倍弱かったりするのである。周囲を気にしない行動は弱い自尊心を隠す ための行為だとか。また、両親ともに周囲を気にしすぎるところがある ため、周囲を気にせず行動する私を必要以上に悪く見る。自信がありす ぎるからだの、他の人を馬鹿にしているだの。そんなつもりはまるでな いのだが。そんな見方をしているから本当は自尊心が人一倍弱いといっ た内面まで目がいかない。  ここ1年ほどの私の回復はいちじるしい。あとは自尊心の回復が最重 要な課題なのだが、今まで書いたようにそれが難しい。せっかく回復さ せても家庭に戻れば逆戻りするパターンが多いからだ。それでも少しず つ進んでいく。戻ったり立ち止まったりしないのが救いだ。  そのくせ親は、もっと回復しなければできないようなことを要求する。 それじゃあ回復の邪魔をするな、と言いたくなる。もっとも親は、回復 の邪魔どころか傷つけた自覚すらないのであろうが。