アダルト・チルドレンの叫び  第12回  エニアグラムの教え  自分の本当の姿を知りたいと、占いをやってみる人は多い。知りたい だけなら心理ゲームという方法もあるが、占いの方が人気があるようだ。 おそらく理由は、簡単だからだろう。たいていの占いは、名前や生年月 日、血液型などで出来る。といっても正確な西洋占星術になるとホロス コープを作る必要があるから、出生地や出生時刻が必要である。  ちなみに私は出生時刻を母子手帳で調べて正確なホロスコープをつく ってもらったことがある。占いをここまでやっているのだから、心理ゲ ームに関しては言わずもがなである。エニアグラムもテレビで知り、最 初は遊びのつもりであった。  ところが、違うのである。人間を9つのタイプに分けるという、一見 すると占いのように感じるがれっきとした心理テストである。その心理 テストで、どんな人でもその9つのタイプのうちのどれかに分けられる というのである。そして、ここから先が重要なのだが、人種・性別など にかかわらずどのタイプも同じ割合(つまり9分の1)なのである。そ してどのタイプが良くてどのタイプが悪いということはない。どのタイ プもそれぞれの長所と短所をもっている。  自分の性格をさんざん悪く言われてきた私にとって、この考えはカル チャー・ショックに近いものがあった。そうなんだ。どの性格が良くて どの性格が悪いということはないのだ。  ところが、エニアグラムというのは性格の本質を見るため、後天的な 矯正によってタイプ分けを誤るケースが多いそうである。たとえば大企 業でタイプ分けの心理テストを行うと、タイプ3「成功を追い求める人」 が3分の1ほどになるそうである。社員の多い大企業ゆえタイプの片寄 りがあると言ってもこれは多すぎる。タイプ3は9分の1ほどしかいな いというのは先程書いたことだが、もっと詳しく調べると本当にタイプ 3であるのは9分の1だけだそうである。なぜこうなるかというと、タ イプ3の人間は優秀なビジネスマンと思われやすい性格だからだ。  官庁でも似たことが起こるそうだ。こちらはタイプ1「完全でありた い人」とタイプ6「安全を求め慎重に行動する人」が多く、違うタイプ の人もそういうタイプになりきろうとするのだそうだ。  ここまであげた大企業と官庁の例はエニアグラムの本(「9つの性格」 (PHP研究所))からの引用だが、私はこれにひとつ付け加えたい。 主婦はタイプ2「人の助けになりたい人」になりきろうとする人が多い と思う。またまわりもそれを求める。そして大多数の違うタイプの人々 がストレスをためてしまうのではなかろうか。  もちろん私もこのタイプ分けの心理テストをやってみた。幸いなこと に(?)今まであげたタイプのどれでもなかった。私の結果はタイプ4 「特別な存在であろうとする人」だった。ちなみに私も最初はタイプ3 かと思ってしまった。成績がたまたま良かったために勉強の努力家を強 いられたからだと思う。それを母親に言うと「やっぱりね」と言われる。 しかしなぜ、特別な存在であろうとするのか。平凡さを避けようとする のか。感情の起伏が激しいのか。頻繁に鬱状態になるのか。すべて自尊 心が低いからだ(これはエニアグラムの本にきちんと書いてある)。  本には、このことを親が知っていれば…と思うような事がたくさん書 いてある。「自信をもって自尊心を回復することが重要なテーマだ。自 信をもつと尊大になるタイプも多いが、タイプ4が自信をもっても尊大 さとは無縁だ」…このことを知っていれば、わざわざ落ち込むような言 葉で私に対して怒り続けたりはしなかったかもしれない。感情の起伏が 激しいと、いちいちつついたりはしなかったかもしれない。引きこもっ ていてもすぐなだめたりせずにほうっといてくれたかもしれない。  なにより、母親がまともに持っていたらしい「自分の同性の子供だか ら、同じ性格に違いない」という偏見が崩れる。同じタイプの子供が生 まれる確率は9分の1なのだから。母親にもやらせてみたが、結果はタ イプ2だった。当然、違う性格を持つ。なのに、さっき書いたように 「自分の同性の子供だから、同じ性格に違いない」と思っていたのだか ら、誤解が山のように生じて当然だ。今では、子育て用のエニアグラム の本もある。「子供の性格、ほんとうにわかっていますか?」  しかし、こういうエニアグラムの知恵にしろ、他の視野の広い話にし ろ、家庭に持ち込むのはいつも私だ。エニアグラムによると私が母親に 影響を与え、それが家庭に広がっていくそうだが…はっきりいって、疲 れる。あんな視野の狭い人達が相手では。