アダルト・チルドレンの叫び  第2回  ひどい言語的虐待  「幼稚園に戻ってやり直して来い」  「おまえなんか養護学級行きだ」  「あんたみたいな子供生まれたら、ぜったいすてるわ」  「あんたみたいな人と友達になってくれているんだから、感謝しなさ  い」  「あんたなんか、勉強できなきゃ、単なる変人だわ」  「おまえなんか世間からはねられるんだ」  「おまえなんかより猫の方がかわいい」  なんともひどい言葉ばかりですが、さてこれは何でしょう。  するどい人は気づいたと思いますが、これは私が受けてきた言語的虐 待の数々です。それもこれらの虐待は1回だけではありません。だいた い何回も何回も言われています。そのうえ、これはほんのごく一部です。 よくいじめっ子が言うようなひどい言葉(例えば「おまえなんか死んじ まえ」など)のたぐいはほとんど聞いてると思っていいでしょう。  こんなひどい言葉を言われるだけでもつらいですが、もっとつらかっ たのは、誰も反論してくれなかったことです。親にいたっては、学校で そんな虐待を受けているのに、なぐさめもろくにせず同じような言葉を 吐き続けるというありさまでした。  そして、期間も長いうえ、いわゆる難しい時期をほとんどカバーして いました。覚えているだけでも、まだ年齢が一桁のころから始まり、一 段落したころには成人式の振り袖をあつらえていたというとんでもない 長さです(しかもいまだに終わったとは言いがたい)。  先程「親にいたっては」と書きましたが、学校の教師の態度もひどい ものでした。クラスメートから虐待を受ければそのまねをして、親を学 校に呼び出しては(たとえクラスのほうが悪くても)私のことをひたす ら責め続けました。そして親は教師の注意そのままに、私をひどい言葉 で虐待しました。  みんな私を責めてばかりで、この年齢の子供がそんなことを言われ続 けたらどうなるかという重要なことは置き去りでした。その結果、私は 心に「深い自己嫌悪」という大きな傷を抱え込んでしまいました。  大学受験のときに自分に自信をもつことを覚えてしまったため、正直 なところ普段はその傷は見えません。一見良いようですが、見えないか ら怖いのです。極端な話、いつその傷が開くか分からないのです。何か の拍子に開いて発作を起こしたりするから怖いのです。親はその事実に 気づかずひどいときはまた虐待します。ただでさえ治りにくい心の傷な のに、よけい治らなくなってしまいます。  具体的に言うと、「どっちが苦労したと思ってるの。いつもいつも先 生に呼び出されて文句ばかり聞かされてるのにあんたは全然聞き入れな い。電話がなるたびに(注:教師はたいてい電話で呼び出した)いまだ にびくびくしなければならないこっちの身にもなってよ」などと言い返 すのです。でも、単純に考えて、30歳から40歳の間と8歳から18 歳の間では、どちらが傷つくでしょうか。答えは言わずもがなでしょう。 絶対に幼少の方が傷つきます。  先程も書きましたが、教師からの注意を受けた後の親の態度はひどい ものです。どこかの警察ドラマの警官のようなひどい誘導尋問を受けさ せられます。どこが警察ドラマの警官のようかというと、私を「悪いこ とをしたならず者」という目でにらみ、ふんぞりかえって話をしてやっ ているという感じなのです。これでは話をいやがるのも当然なのに、親 は無理矢理聞かせます。そして後で泣いていれば、なぐさめるどころか ますます責め続けて落ち込ませます。  なんだっていうのでしょう。どこか曲がった集団に溶け込めないこと が、そんなに悪いことなんでしょうか。なんだって私だけがこんなに責 められなければならなかったのでしょう。もっともな理由なんて、ある 訳がありません。そう嘆いても、時は戻って来ません。誰も謝ってくれ やしません。親にいたっては再び責めます。これでは、あまりにもつら すぎます。書いていても泣けてくるくらいです。  しかも、「傷ついた体験」というのはこれだけでは終わりません。終 わりませんが、それは引き続き次回以降に書きます。