アダルト・チルドレンの叫び  第20回  体力が落ちて行く  また今年も、私にとっては恐怖の夏が来た。とにかく夏は体調を崩し やすい。身体が夏の暑さについていけないのだ。  実を言うと前はこうではなかった。原因はわかっている。アダルト・ チルドレンの回復その他をやっていると、精神的に疲れて自律神経の調 子が狂う。その結果どうなるかというと、暑さに耐えるために自律神経 を働かせなければならないのに働かなくて体の調子を崩すのである。  回復が進んできて次第に家庭というところが冷静に見えるようになっ てきたが、とにかく精神的に疲れるところなのである。  まず、男どもが威張り散らすから始終びくびくしてなければならない。 気に入らないことがあればにらむことから始まり、どかどか歩いてみた りリビングでひっくり返ってみたり壁を蹴飛ばしてみたり…。はっきり 言って今思えばただの勝手なのだが、母親は男どもの味方ばかりするの で本気で私が悪いのだとずっと思い込んでいた。多感な時期にずっと思 い込んでいたのだから、頭では解ってもそうそう簡単に考えが抜ける訳 がない。疲れた神経をまた使いながら辛抱強く心に言い聞かせるしかな いのである。ただでさえ疲れている神経をまた使うのだから、疲れない 訳がない。次第に体に影響が出てしまう。そして逃げるところもない。 いや、いちおうあるのだが音は聞こえてくる。というより、長年のびく びく生活の中で音に反応する癖がついてしまったのだ。しかも私は音楽 関係の趣味が多いために耳が発達しているから、しじゅうびくびくさせ られることになる。がんがんCDをかけても足音が聞こえるくらいなの だから、どのくらいか予想がつくだろうか。  そのうえ前も書いたが家事は虐待のような雰囲気がある。正直なとこ ろ時代遅れもはなはだしいのである。まず、いまどき「家事は男のため の女の仕事」という雰囲気がぷんぷんにおっているのである。さっき書 いたように、身勝手で神経さえ弱らせてしまったほどのひどい男どもの ためにやれと言われてできるだろうか。またいまどき本を読みながら料 理をして陰口をたたかれたことがある。本なんか見なくても感覚で覚え てきたと責めるのである。それほど自主性を押さえ付けてきたのに、自 分から進んでやれというのがめちゃくちゃなのである。そして私は体調 を崩して今働けないのだが、いまどき「家事は働けない人がする仕事」 という雰囲気がぷんぷんにおっているのである。実際弟などはアルバイ トをするようになってから全く家事をしなくなった。いったい、誰のせ いで体調を崩したと思っているのか。それなのに家事になかなか手の出 ない私に声なき非難を向ける。今の私の場合、責められるとそれを心か ら追い出さないといけない。それをやっているうちに疲れ果てることも よくある。  よく家事で精神的に癒される人がいるが、私はそれもできないどころ か、また神経を使って虐待的な考えを心から追い出さないといけないの である。  そしてかって母親は多感な時期の弟の前で私の悪口をべらべら言った ことがあるのである。その影響で弟は私をバカにするようになってしま った。そして今でも一番にらまれるのは私である。それなのに母親は自 分に言わないからとその事実を否定するのだ。多感な時期にべらべら悪 口を言われて、深い影響を受けない訳がない。その影響は今も意味なく 威張ったりどかどか歩いてみたり脅しをかけたりするところに現れてい る(まあこれは、父親の影響も強いと思うが)。これも神経が結構やら れ、回復にずいぶん神経を使う。  とにかく最終的に、私は自分に対する自虐的な心を追い出す必要があ るのだ。ところが家族は、いまだに私を否定してばかりいるのである。 それが本当に迷惑な限りなのである。  しかも他の理由で体調を崩したりすると心に悪影響をおよぼす。それ がつらい。夏風邪をひいたりすると悲惨である。心はふらふら、体もふ らふら、支えがなくて両方共倒れになるのがおちである。  アダルト・チルドレンの回復はずいぶん神経を使うのだが、経験者以 外でその苦労を知る人は少ない。というより、知っている人が言っても 「わがまま」と言われがちだ。本当はずいぶん疲れる行為で「自立した い」という心を支えに何とか頑張っていくのに、その疲れがどれほどの ものかわかる人はなかなかいない。  もしかしたら私が受けた傷は神経を使うようなものばかりなのかもし れないが。