アダルト・チルドレンの叫び  第9回  大きすぎる犠牲  「いじめは人格を破壊する」と誰かが書いていた。はっきり言ってそ の通りである。たいてい、いじめられっ子は悪者にされる。そして味方 してくれる人もいなくなる。これは子供にとって、予想をはるかに越え てつらいことだ。そしてもし、行くとこ行くとこいじめられ続けて幼少 時代をすごしたらどれほど傷つくかは、経験した人でなければわからな いだろう。  言うまでもなく、それは私のことである。当然(?)両親はそのつら さがわからない。そのつらさを出せば、なんでいつまでもぐだぐだ言う のと言われるのがオチである。  幼少時代に受けた心の傷はあまりにも大きすぎる。そのために払った 犠牲もあまりにも大きすぎる。  前にも書いたが私は幼少の頃、すごい言葉の暴力の波の中で育ってき た。馬鹿だのあほだのは序の口で、幼稚園に戻ってやり直してこい、赤 ん坊以下だなどほんとにひどい言葉をあちこちから浴びせられた。  しかしその時、親が考えたことは私をなぐさめることではなく、どう したら言われなくなるか、それだけだった。そして、言われないように と同じような言い方で注意するのである。それだけでも傷つけられてい ると思うかもしれないが、私は聞き入れようとした。けど、わからなか った。違う言い方で注意してほしかったのである。事実、違う言い方で わかったことは数多い。  ところが、親は自分たちの言うことを実行しないからだとすごい暴言 を浴びせるのである。聞く耳を持たない大馬鹿者だとか。聞く耳がない んじゃない。聞こうったってわからないんだよ。わからなかったら実行 のしようがないじゃない。それに、わかりにくい説明をしているとは思 わなかったんだろうか。みんなそう言ってるから? ふざけるな。みん ながどうこうより、わかりやすいかどうかのほうがよっぽど重要だよ。  その結果私は、自分を肯定的に見られない、自分が役に立ってないと いたたまれない気持ちになる、得意なことでつまづくと大きなショック を受ける、などのさまざまな精神障害を抱え込んでしまった。  これも前に書いたが、その親の呪縛から逃れようと、私は北大数学科 に入った。最初はよかった。ところが3年生になったとき、内容の難し さに参ってしまった。それは私一人ではなく、むしろ全員がそう感じて いた。ところが私はそれゆえに精神的に参ってしまったのである。  親は全然分かっていない。それが幼少の頃の言葉の暴力からきたとい うことに。あんたは勉強が出来なきゃただの変人だ。そんなひどい言葉 による心の傷のあらわれだということに。  そして、私は数学の世界から離れることをすすめられた。相当悩んだ が、結局受け入れて就職することを決めた。それについての親の態度が またひどい。「いやー、やっと就職してくれたわ」何を考えているんだ。 私は数学の才能がないから就職をすすめられたのではない。精神的にあ まりにもよくないからだ。そしてそう追い込んだのは親だろうに。つら いんだよ。心の中の大きな炎が消えかかっているようで、当然心身とも に響く。それだけで親が憎くなる。  私は今割り切って、いっそ3年ほど働いて心の傷を癒し、精神的に強 くなって数学の世界に戻ろうと思っている。幸福なことに、今の職場で はそれが十分できる。最近、精神的にどんどん強くなって行く自分を感 じる。そのたび、この選択は間違っていなかったと思うのである。  また、精神科に通い、セラピーも受け、パソコン通信で書き込んだり していろいろ癒す方法を試行錯誤している。それに関しては次回以降。  しかし、そういうことを親は逃げているという。いいかげんにしろ。 私は自分の責任でないことを苦労して乗り越えようとしているのに。