TWO-OVER-ONE
by Eric Rodwell
2/1 応答に対する オープナーの 2 回目のビッド

 オープナーの役割を端的に言うと,記述者 (describer) です。
オープニング・ビッドがこの記述を開始します。そして,2 回目のビッドにより, 更に 手の強さと形を絞って記述します。そのお蔭で,レスポンダは最善のコントラクトに向かって進むことができます。
 そもそも  1, 1 オープンは,広い範囲の 強さを記述します:
下限中程度上限
13 14 15 16
17 18
19 20 21
切り札は 5 枚以上で,手の形は さまざまです。5-3-3-2 型バランス・ハンドもあれば, 7-5-1-0 のような極端な形もありえます。
 1 オープンに対して レスポンダが 2/1 応答した場合に, オープナーが自分の手をどう記述するかを見てみましょう。
WestNorthEastSouth
1Pass2Pass
?
 East のビッド 2 は,レスポンダの新しいスートなので,フォーシングです。 標準システムとは違い,2/1 システムでは これはゲーム・フォーシングです。 このシステムの違いが,オープナーの次のビッドに影響を与えます。
 2/1 の場合には 既にゲームが保証されているので,それ以上の強さを ここで示す必要はありません。 したがって,そのビッドの仕方は,手の強さではなく, 手の形により分類できます。
 1. バランス・ハンド.
 2. 2NT とストッパ.
 3. アンバランス・ハンド,セミ・バランス・ハンド.
3-1. 第 1 スートを もう 1 回ビッドする.
3-2. 1-2 で ハートをサポートする.
3-3. レスポンダのマイナースートをサポートする.
3-4. 第 2 スートを示す.
3-5. 6-4 の形.
付録:ストッパ

1.  バランス・ハンド.
 2/1 応答の後で,バランス・ハンドのオープナーは,手の強さとは無関係に
2NT をビッドして,手の形を伝えます。
 たとえば,この手は下限 13 HCP です。2NT がこの手を最も良く記述します。
K 9 4
A J 8 5 3
J 8 2
A 3
 
 
WestNorthEastSouth
1Pass2Pass
2NT
標準システムでも ここで 2NT をビッドしますが,2/1 システムでは (2既にゲーム・フォーシングなので) この 2NT も ゲーム・フォーシングです。
K 9 4
A K J 8 5
A 2
Q J 3
 オープナーの手を少し強くして 18 HCP にしてみると,2 つのシステムの違いが分かります。
 標準システムの場合,オープナーは ここでジャンプして 3NT をビッドします。 もしも 2NT をビッドすると,ノン・フォーシングなので,パスされてしまう恐れがあるからです。
 2/1 システムの場合,オープナーのビッドは 2NT で十分です。
これにより 手の形だけを伝え,多くのビッド余地を残して 以後の探索に備えます。 2NT は パスされないので, レスポンダの次のビッドを聞いてから 自分の手の強さを記述できます。
 結局,オープナーの この 2NT は,下限 または 上限のバランス・ハンドを示します。 中程度 (15〜17 HCP) のバランス・ハンドは,1NT オープンできるからです。
 次のような手の組み合わせの場合,この方法の長所が見られます。
West
K 9 4
A K J 8 5
A 2
Q J 3
    
East
A 19 3
Q 3
K 4
K 10 8 7 6 2
    
WestEast
12
2NT3NT
46
Pass
 West が 2NT をビッドすると,その手の強さを (上限ではなしに) 下限だと仮定して, East は単に 3NT に上げます。 今度は,West が上限の強さ,3 枚のクラブ・サポート,スラムへの関心 などを示す番です。 この時点で,もっと 込み入った方法によりスラムを狙うこともできますが, 今は 上のような単純なオークションで済みます。このスラム・トライに対して,East は に 6 枚の長さがあるので 6ビッドします。 負けるのは A の 1 トリックだけです。
WestEast
12
3NTPass

 同じ手を標準システムで扱ってみましょう。
オークションは右のように進みます。West は 3NT にジャンプして余分の強さを示します。 East は,クラブのフィットが不確かなので,3NT より上に進もうとはしません。
 要約すると,2/1 応答の後で,オープナーは バランス・ハンドを最低の代 2NT で示します。でかい手の場合にも,同じく 2NT により ビッド余地を稼ぎ,手の強さは 後のビッドで伝えます。
2.  2NT とストッパ.
 ところで,2NT をビッドするとき,ビッドされていないスートにストッパは 必要でしょうか ?
West
A 10 5 4 3
A K 3
Q 7 3
4 2
    
East
6 2
J 5 2
A K 5
K J 10 9 5
    
WestEast
12
2NT3NT
 たとえば,この場合,West が 2NT によりバランス・ハンドを示すと, 最善のコントラクト 3NT に容易に到達します。
West
A 10 5 4 3
A K 3
10 7 3
Q 2
WestEast
12
2NT ?

 左の場合にも,オークションは同様に進みますが …
2/1 応答の後で このように 2NT をビッドするには,ビッドされていないスートに ストッパが必要だと考える大家 (たいか) が何人もいます。 それなら 2NT 以外にどんな途があるでしょうか ?
  (1)  2 は スペード 6 枚を保証するので,今は不可。
  (2)  レスポンダのクラブを 2 枚でサポートできない。
  (3)  新しいスート () を 3 枚ではビッドできない。
 (ただし,フォーシング 1NT に対しては,3 枚のマイナースートを示すことはあります)
 そこで,私のお勧めは:
2/1 GF 応答に続く オープナーの 2NT は,
ビッドされていないスートにストッパを保証しない。
というものです。
 上のオープナーの手に対して このような組み合わせでは
West
A 10 5 4 3
A K 3
10 7 3
Q 2
    
East
8 2
Q J 2
J 4 2
A K J 7 5
    
WestEast
12
2NT3NT
3NT コントラクトに達します。 どちらのプレイヤーも のストッパを欠いていますが, 3NT は最善のコントラクトです。ディフェンダは を打ち出さないかも 知れません。打ち出したとしても,4-3 の分かれとか,5-2 でブロッキングが 起こるかも知れません。
3.  アンバランス・ハンド,セミ・バランス・ハンド.
 バランス・ハンド以外の場合には,次のどれかを選択します。
   (1)  自分の第 1 スートを もう 1 回ビッド (リビッド) する.
   (2)  レスポンダのメジャースートをサポートする.
   (3)  レスポンダのマイナースートをサポートする.
   (4)  4 枚以上の第 2 スートを示す.
いずれにしても,既にゲーム・フォーシングの状況なので, ジャンプする必要はありません。
3-1. 第 1 スートを もう 1 回ビッドする.
 特殊な例外を除いて,オープナーが第 1 スートを重ねてビッドするのは,
6+ 枚を示します。
West
J 10 8 6 3 2
A 8
Q 7 3
A 3
    
East
Q 4
K 7 5
A K J 8 5
9 6 2
    
WestEast
12
24
 West は パートナーのスート に 3 枚のサポートがありますが,6 枚の メジャースートを優先します。ここで重要なのは長さであって,強さではありません。8 枚のフィットが見つかれば,East はゲームに行きます。3NT や 5 より 4 が ずっと良いコントラクトです。
 このように,オープナーが第 1 スートを 2 回ビッドするのは,単に 6+ 枚を示すのが目的であり,その強さは不明です。ゲームが既に保証されているので,ここでは どこに コントラクトが あるかを見つけるのが先決です。ゲームかスラムかは,二の次です。
 例を更に いくつか挙げましょう。
[1]  K Q 9 7 6 4
K Q 3
J 4
9 4
WestNorthEastSouth
1Pass2Pass
2
切り札 6 枚の下限の手で,West は 2 をビッドします。 レスポンダにとって,スペードが 6 枚以上という知らせは 値打ちがあります。
[2]  K Q 9 7 6 4
A K J
J 4
K 9

 他方,かなりの強さがある この手でも,やはり同じく 2です。 こうして 余分の長さを伝えることを優先します。余分の強さを示すのは,切り札が決まってからにします。
それでは,このあと オークションはどう進むのでしょうか ?
West
[1]   K Q 9 7 6 4
K Q 3
J 5
9 4
    
East
A 3 2
8 6
A K 10 6 2
Q 5 3
    
WestEast
12
23
4Pass
 West がスペードを 2 回ビッドすると,East は それを 1つ 上げて 切り札のフィットを 示します。ここでは,標準システムとは違い,4 にジャンプする必要はありません。 East は,パートナーがスラムに関心を持つ場合に備えて,  ビッド余地を残します。 けれども West は下限の手なので,ゲームで打ち止めにします。
West
[2]   K Q 9 7 6 4
A K J
J 5
K 9
    
East
A 3 2
8 6
A K 10 6 2
Q 5 3
    
WestEast
12
23
4NT5
6Pass
今度も オークションの始まりは同じです。しかし,East がスペードのフィットを示すと, West はブラックウッドを打ち上げて,Ace が 3 枚揃った場合には,スモール・スラムを 見つけます。
3-2.  1-2 で ハートをサポートする.
WestEast
12
 メジャースートでの 2/1 応答は,右の場合だけです。
 合わせて 8+ 枚のメジャースート・フィットが見つかれば,それ伝えることが 常に第 1 要件です。レスポンダの 2 が ハート 5+ 枚を約束するので, オープナーは 3+ 枚で 1つ 上げます。
West
A K 8 6 5
9 8 3
J 2
A 7 6
    
East
7 3
A J 10 6 5
A 3
K Q 8 3
    
WestEast
12
34
Pass
 West は バランス・ハンドを持っていますが,3NT ではなしに,3 を ビッドします。このように,バランス・ハンドを持っていても,8 枚のメジャーフィットあれば,それを優先します。
3-3.  レスポンダのマイナースートをサポートする.
 レスポンダが 2, 2を答えたとき,その長さは 5 枚を保証しません。また,マイナースートでのゲームは ノートランプほど魅力がありません。そこで,レスポンダのマイナースートを上げるには,通常,4 枚が必要です。ただし,強い 3 枚カードとスート向きの手では,サポートすることがあります。
West
J 6
A K 10 6 3
9 4 3
A Q 10
    
East
A K 3
J 4
A Q 5
K J 8 7 5
    
WestEast
12
3
West はレスポンダのマイナースート に 3 枚しかありません。 しかし,絵札, に集中しているので 3 に上げます。この場合には,それが East を元気づけて, 見事なスラムに達します。
West
J 6
A K 10 6 3
K J 3
9 6 3
    
East
A K 3
J 4
A Q 5
K J 8 7 5
    
WestEast
12
2NT
同じ 3 枚でも,こういうお粗末なクラブでは,そういうことはできません。 2NT をビッドして,バランス・ハンドであることを伝えます。 この場合,East は 定量 4NT をビッドして スラムに誘ってくるでしょうが, パスして 4NT に止まります。
3-4.  第 2 スートを示す.
 オープナーの手が アンバランス・ハンド,セミ・バランス・ハンドの場合には, 4+ 枚の第 2 スートがあります。第 2 スートがレスポンダのスートと一致しない場合には,
  (1) 第 1 スートを もう 1 回ビッドする.
  (2) 第 2 スートをビッドする.
このどちらを選択するかが 問題になります。
 次の手の場合には,West は 2を選びます。
8 4
A Q 8 5 4 3
K Q 10 2
3
WestNorthEastSouth
1Pass2Pass
2
2 の代の新しいスートですが,これは 余分の強さを約束するものではありません。 ハートを 2 回ビッドするよりも,第 2 スートを示す方が 優れた記述です。 ハートが 5 枚であることは初回に通知済みなので,ダイヤモンド 4 枚を加えた 合計 9 枚の形をパートナーに伝えました。
 ハート 6 枚の この手では,2をビッドすることも可能です。 しかし,それでは ハートの枚数だけしか伝えられません。記述の点で 遥かに劣ります。ハート長さを急いで伝える必要は無いのです。ゲーム・フォーシングの状況にいるので, ハートの長さは 後のビッドで伝えられます。
 こちらのハンドは,標準システムでは扱いにくい場合です。
A Q 8 3
A Q 9 5 4
7 4
9 3
WestNorthEastSouth
1Pass2Pass
2
2 に対して 2 をビッドするのは リバースであり,ほぼ 1 トリック余分の強さを保証します。 この下限の手では,それが許されません。したがって,2を強いられますが, これは良い記述とは言えません。
 他方,2/1 システムでは,2 をビッドできます。既にゲームが保証されているので, このビッドは 余分の強さを保証するものではありません。
 ただし,第 2 スートを 3 の代で示す場合だけは,注意が必要です。 これはビッド余地を多量に消費するので,何らかの おまけ(余分) を示すものと 取り決めます:
     第 2 スートが 5+ 枚である。
     15+ HCP である。
 このような おまけ が無ければ,バランス・ハンド以外でも,オープナーは 2NT を ビッドします。
 いくつかの例を見てみましょう。
WestNorthEastSouth
1Pass2Pass
?
A Q 9 7 6
2
K J 10 4 2
Q 2
 下限の手ではありますが,
 5 枚の第 2 スートを 3 の代で 3により示します。
A Q J 7 6
A 2
K J 10 3
Q 2
 おまけ の強さがあるので,4 枚ですが
 第 2 スートを 3 の代で 3により示します。
A Q 9 7 6
6 2
K J 5 3
Q 2
 第 2 スートが 4 枚で,しかも
 おまけ の強さが無いので,
(バランス・ハンドではありませんが)
2NT をビッドします。
 また,レスポンダのスートをサポートできる場合には,おまけ の強さが無くても 3 の代に上げます。 仮にこれが良いフィットであっても,ジャンプしてはいけません。そういう おまけ は, 後のビッドで示せます。
WestNorthEastSouth
1Pass2Pass
?
A J 8 6 2
K 4
8 2
K J 5 2
A K 8 6 2
A 4
K J 5 3
A Q 5 2
レスポンダのスートを 4 枚でサポートできるので,下限の手ですが 3 に上げます。 左よりずっと強い手ですが,同じく 3 に上げます。 ゲーム未満に留まる危険はありません。レスポンダの次のビッドを聞いてから, おまけの強さはいつでも示せます。スモール・スラムやグランド・スラムを狙うためのビッド余地を残します。

 既に上に述べたように,2/1 応答に続いて オープナーが第 1 スートをもう 1 回ビッドするのは, 6 枚を保証します。このとき,オープナーの手は,
   (1)  下限の場合.
   (2)  おまけの強さを持つ場合.
この どちらもありえます。ここまでのどの例も,ゲームが保証されると,どこに コントラクトが あるかが先決で,どの代で (ゲームかスラムか) は 常に 二の次になります。
3-5.  6-4 の形.
 6 枚 + 4 枚の場合は,第 1 スートを 2 回ビッドするよりは,第 2 スートを示すのが普通です (ただし,第 2 スートが非常に弱くて 2 の代で示せないときは別です)。  そして,後に 第 1 スートをビッドして 6 枚を示します。
West
A J 8 7 5 4
A K 9 3
8
9 3
    
East
10 3
7 5
A J 7 2
A K J 6 2
    
WestEast
12
22NT
34
Pass
オープナーが第 2 スートを示すと,レスポンダは 2NT が最善だと提案します。 そこで オープナーが スペードを リビッドすると 8 枚のフィットが見つかります。 ここにも 2/1 システムの特徴が現れています。2NT がフォーシングなので,レスポンダは 3NT にジャンプする必要がありません。上のようにすれば,どちらのプレイヤーも自分の 手をよく記述できます。
 ただし,第 2 スートのビッドを 下限の手に対して禁止する流儀もあります。 すなわち,第 2 スートを示すと,何か おまけの強さを示す意味になります。 この流儀には 多少の利点がありますが,下に示すハンドでは,私の流儀の方が簡明です。 なぜなら,リビッド 2 が 4 枚の第 2 スートを否定するので,
West
A Q 8 7 5 4
K Q 3
8 3
9 3
    
East
3
J 7 5
A K Q 10 5 2
K 10 2
    
WestEast
12
23
33NT
Pass
ハートの強みを 3 により示せるからです。 こうして レスポンダは安心して 3NT に行けます。
ストッパ
 (1)  ストッパとは,相手側が打ち出した場合に,そのスートの全トリックを 取ることを邪魔する (あるいは,邪魔する可能性のある) カードを指します。
 (2)  ストッパの明白な例は,A,KQ,QJ10 です。
 (3)  また,第 1 トリックが左オポから打ち出されるので,QJx もストッパです。 同様に,Kx,Kxx もストッパです。これらは,オポが第 1 トリックで他の スートを打ち出した場合,実際にトリックを取るとは限りませんが,ディクレアラが 他のスートでトリックを取る時間的余裕を与えます。
 (4)  Qx,Jxx,10xxx  を ハーフ・ストッパ (Half Stoppers) と呼びます。 二人がどちらもハーフ・ストッパを持っていると,合わせて一人前のストッパ (Full Stopper) になります。