TWO-OVER-ONE
by Eric Rodwell
コントロール・ビッド

1.  コントロールを示すやり取り。
2. コントロール・ビッドを認識する。
3. コントロール・ビッドを いつ 打ち切るか。
4. コントロール・ビッドの指針。
 4-1. 二人で協力する。
 4-2. ゲームを越えてコントロール・ビッドしてはならない。
 4-3. 第 1,第 2 コントロールを区別せずにビッドする。
 4-4. コントロールを下位スートから順に示す。
 4-5. コントロール・ビッド と ブラックウッドを組み合わせる。

 ブラックウッド・コンベンションは,パートナーが 何枚の Ace と 何枚の King を持つかだけを教えてくれます。したがって,どの Ace と どの King を持つかを知る必要がある場合には,コントロール・ビッドを使わねばなりません。コントロール・ビッドは,ボイドやシングルトンの場合も扱えます。
スート・コントラクトでのコントロール
  第 1 コントロール:Ace または ボイド.
  第 2 コントロール:King または シングルトン.
1.  コントロールを示すやりとり
 コントロールを示す方式は,ブラックウッドとは異なるやり方でスラムを狙います。すなわち,パートナーに Ace の枚数を訊ねるのではなく,自分の持っている Ace (あるいは何かのコントロール) をビッドして示します。すると,パートナーも自分が持っているコントロールを示します。こうして,コントロール・ビッドの応酬が続き,スラムに必要なコントロールの有無が判明すると, そこで終ります。
2.  コントロール・ビッドを認識する
 それでは,2/1 オークションの場合,一体いつコントロール・ビッドの状況に入ったか どうやって分かるのでしょうか ? どこで の取り決めが一旦成立すると,残るのは どの代で, つまり,ゲームか/スラムかです。もしも スラムに関心が無ければ,単に (取り決めたスートの) ゲームで止まる筈です。
したがって:
2/1 の後に示すコントロール.
切り札の取り決めが済んだ後は,切り札以外のスートのビッドは,コントロールを示す。
と約束します。
Opener
A K 10 8 7 5
9 8 2
K 4
A K
    
Responder
Q J 3
J 7 3
A Q J 10 8 3
Q
  
OpenerResponder
12
23
?
←Game Forcing
 2/1 システムを使っているとき,レスポンダの 2 はマラソン・ビッドであり,ゲーム・フォーシングです。レスポンダが 3 に上げると,切り札はスペードに確定します。オープナーは十分な強さがあるので スラムを狙いますが,ブラックウッドは ここでは 役に立ちません。
 ブラックウッドすれば レスポンダは Ace 1 枚を示すでしょうが,それから 5止まっても 6 に行っても,どちらも既に高過ぎます。ディフェンダがハートで頭から 3トリック取るからです。
 オープナーは,主導権を握ってブラックウッドする前に,二人合わせて 4 スートすべてに (少なくとも第 2) コントロールがあることを確信している必要があります。
 オープナーは , , については,コントロールが確実なことを知りますが, ハートについては,第 1, 第 2 のどちらかのコントロールをレスポンダが持っているか 調べる必要があります。そこで オープナーは,一連のコントロール・ビッドに入ります。
OpenerResponder
12
23
44
4Pass
← Game Forcing
← Control Bids

 もしもオープナーがスラムに無関心ならば,3により切り札が確定したとき,直ちに 4をビッドするでしょう。
 したがって,オープナーの 4 はコントロール・ビッドです。レスポンダも これに協力して,コントロール・ビッド 4で応じます。これに対して,オープナーはハートのコントロールを持たないので,取り決めた切り札に戻って,4をビッドします。レスポンダは ハートのコントロールを持っていれば 上を狙いますが,この手にはそれが無いので,4を パスします。こうして,安全なゲームの代で止まります。
3.  コントロール・ビッドを いつ 打ち切るか。
 オープナーの 4 ビッドがそれ以上のコントロールを示さないことを,レスポンダはどうやって知るのでしょうか ? 実際,必要なコントロールが揃わない場合に備えて,スラムより下の代で止まる方法が必要です。そこで,"コントロールを示している間は,切り札スートをビッドしない" と約束します。切り札に戻るのは,
     "これ以上示すものがありません"
と言う意味になります。ただし,だからと言って オークションが そこで必ず終わるとは限りません。パートナーは もっと言いたいことがあるかも知れませんが,4 で止まりたければ,止まれます。
 コントロール・ビッドを打ち切る方法は,上の方法を含めて 次の 3 通りあります。
コントロール・ビッドの打ち切りかた
(1) 取り決めた切り札スートに戻る.
(2) ジャンプしてスラムをビッドする.
(3) ブラックウッドする.
4. コントロール・ビッドの指針。
 コントロール・ビッドのやり取りは,力試しの趣き (challenging) があります。 パートナーとのあいだで,波長が合っている必要があるからです。 コントロール・ビッドを使う際の指針を以下に示します。
コントロール・ビッドの指針
 (1)  コントロール・ビッドのやり取りが始まったら,パートナーは,その手が たとえ 下限であっても,ゲームの代以下で協力する。
 (2)  ゲームの代を越えてコントロールを示すことは,稀である。
 (3)  第 1,第 2 コントロールを区別なしに示す。
 (4)  ランクの低いスートから高いスートへ順に無駄なく (up the line) ビッドする。
 (5)  切り札スートのコントロールを示さない。
 (6)  Ace と King の枚数を確認するために,ブラックウッドを使う。
 以上の指針をハンド例に沿って見ていきましょう。
4-1.  二人で協力する
 パートナーがスラムに向けてコントロール・ビッドを始めたき,それに協力する義務があるでしょうか ? もちろん,余分の強さがあれば,それを助けて一緒にスラムに行きたいと思います。自ら進んで主導権を執り,ブラックウッドすることもあるでしょう。パートナーも自分も 二人とも スラムに関心があれば,妨げるものはありません。
 他方,自分の手に (それまでのビッドで示した以上に) 余分の強さが無い場合にパートナーがコントロール・ビッドを始めたとき,自分もコントロール・ビッドをしなければならないでしょうか ? その一般的な答は:
 余分の強さが無い場合でも,何か役に立つものを持っていれば,ゲーム未満でならパートナーに協力する ・・・ ということです。
Opener
A 9 8 7 3
Q 4 3
A J 3
Q 5
    
Responder
K Q
A K 9 8 7 6 5
9 4 2
A
    
OpenerResponder
12
34
44NT
55NT
66
Pass
 ハートが切り札に決まると,レスポンダは コントロール・ビッド 4 によりスラムに関心を示します。オープナーは下限の手ですが,ゲーム未満で A を示せます。
 ダイヤモンドのコントロールは,レスポンダがまさに探していたものです。そこで,ブラックウッドして Ace の枚数を確認しても危険はありません。こうして 4 枚の Ace が確認されれば,次に King の枚数を確認して,グランド・スラムを狙うこともできます。この場合には,オープナーの答が King 0 枚なので,スモール・スラムで止まります。
4-2.  ゲームを越えてコントロール・ビッドしてはならない。
 特別の例外を除いて,コントロール・ビッドはゲーム未満に限定します。ゲームを越えるのは,ブラックウッドにより Ace と King の枚数を確認するときだけです。
Opener
A K 9 7 3
Q J 5
8 7 5
K 6
    
Responder
Q 6
A K 10 8 6 3
J 4 2
A Q
    
OpenerResponder
12
34
?
 オープナーはスペードのコントロールを持っています。しかし,ここで 4 をビッドすると,ゲームを越えてしまいます。そこで 単に 4 をビッドして,次の手をパートナーに委ねます。 レスポンダは,ダイヤモンドが止まらないことを知り,これをパスします。
4-3.  第 1, 第 2 コントロールを区別せずにビッドする。
 コントロールの示し方として,第 2 コントロールを後回しにして,第 1 コントロールに限定するペアもいます。しかし,それでは,ビッド余地が無駄になります。第 2 コントロールならばゲーム未満で示せるのに,第 1 コントロールがゲームを越えるような場合に損します(下の例)
 一般に,第 2 コントロールをゲーム未満で示すのは安全です。なぜなら,まだブラックウッドが使えて Ace の枚数を確認できるからです。
 [訳注:したがって,第 1,第 2 のコントロールを区別せずにビッドする方が好都合です。これをイタリア式キュービッド (Italian Cuebidding) と呼びます。]
Opener
A K 8 7 4
J 10 2
K Q 3
6 3
    
Responder
Q 3
A K Q 8 5
5 4 2
A K 8
    
OpenerResponder
12
34
?
 ハートが切り札に決まると,レスポンダは コントロール・ビッド 4 によりスラムに関心を示します。オープナーは ここで どうするか決めなければなりません。
 オープナーは, の第 1 コントロールと の第 2 コントロールを持っています。4 をビッドするのは ゲームを越えるので,下限の手を持つオープナーに,その積もりはありません。
 キュービッドにイタリア方式を使わない (標準方式の) 場合には,4 をビッドできず, 4 しかビッドできません。しかし それでは, が止まらないことをレスポンダが怖れて,パスするでしょう。
OpenerResponder
12
34
44NT
56
Pass
 イタリア方式を使うと, の第 2 コントロールを示せるので,オークションは遥かに円滑に進みます。
 オープナーが のコントロールを示すと,レスポンダは自信を持ってブラックウッドにより Ace の枚数を確認できます。ダイヤモンドで頭から 2 トリック取られることは無いと知ったからです。
 更に付け加えると,スペードのコントロールについては,さほど心配はありません。スペードは,オープナーが最初にビッドしたスートだからです。AK の少なくともどちらかを持っている筈です。
 ダイヤモンドの第 2 コントロールが K の代りにシングルトンであっても,全く同様にしてスラムに到達できます。
Opener
A K J 7 4
J 10 2
3
Q J 7 3
    
Responder
Q 3
A K Q 8 5
5 4 2
A K 8
    
OpenerResponder
12
34
44NT
56
Pass
 イタリア方式を使っていると,どれかのスートを跳び越えてキュービッドした場合,そのスートの (第 1,第 2 のどちらも) コントロールが全く無いことを意味します。
 したがって,次の手の場合,危険を事前に察知して スラムを避けることができます。
Opener
A K J 7 4
J 10 2
Q 8 3
Q 3
    
Responder
Q 3
A K Q 8 5
5 4 2
A K 8
    
OpenerResponder
12
34
4Pass
 レスポンダのキュービッド 4 に対して,オープナーは, の第 1,第 2 コントロールのどちらも持たないので,切り札に戻って 4 をビッドします。レスポンダは それ以上ビッドする積もりはありません。ダイヤモンドで頭から 3 トリック取られるからです。
4-4.  コントロールを下位スートから順に示す
 コントロールは,通常,下から順に一番安いスートを先に示します。これによりビッド余地を稼ぐことができ,同時に,パートナーが跳び越えた場合の状況が推測可能になります。
Opener
A 9
Q J 9 7 3
A K J 4
8 3
    
Responder
J 2
K 10 6
Q 5
A K Q 7 6 2
    
OpenerResponder
12
22
?
 レスポンダが 2 をビッドすると,切り札は ハートに確定します。オープナーは余裕のある (下限ではない) 手なので,スラムに関心を持ち,A と A のどちらかを示したいと思います。
 (1) A を示す場合。
OpenerResponder
12
22
34
?
 オープナーは 3 の代でダイヤモンドをビッドします。すると,オークションが右のように進み,A をゲーム未満で示せなくなります。ここで主導権を握ってブラックウッドを使うには,手の強さが不足です。そうかと言って,ここで 4ビッドすると,スペードにコントロールを持たないレスポンダはパスします。
 (2) A を示す場合。
OpenerResponder
12
22
23
34NT
56
Pass
 なるべく低い代でコントロールを示す方が,ずっと効率的です。 下から順にビッドすれば,オープナーは A と A の両方を示しても 未だ 3です。 ゲーム未満でのビッドの余地は十分に残っています。 これにより をオープナーが押さえていることが分かるので,レスポンダは 主導権を執って ブラックウッドを使い,スラムに行く前に Ace の枚数を調べることができます。
Opener
6 4
K Q 9 8 7 3
A Q 5
J 3
    
Responder
K 8 5
A 10 6
K J 10 8 3
K Q
    
OpenerResponder
12
23
44
Pass
 切り札が ハートに決まると,オープナーは 4 により スラムへの 関心を示します。レスポンダは余分の強さを持っていますが,(自分が K, K を持っていて) オープナーの手に A,A がどちらも無いことを知り,ゲームに落ち着きます。
4-5.  コントロール・ビッド と ブラックウッドを組み合わせる。
 コントロール・ビッドの後で ブラックウッドを使うのは,なぜでしょうか ?
その理由は,次のふたつです。
  (5a)  コントロール・ビッドでは,切り札のコントロールを示せないので,十分なコントロールがあることを確かめるには,ブラックウッドが必要だ。
  (5b)  第 1, 第 2 コントロール を区別せずにビッドしてきたので,手の状況明確にするために,ブラックウッドが必要だ。
Opener
K Q 10 7 6 3
4
Q J 5
A K J
    
Responder
J 9 8
K Q 10 6 5
A K 3
Q 4
    
OpenerResponder
12
23
44
4NT5
5Pass
 スペードが切り札に決まっても,オープナーは にコントロールが無いので ブラックウッドできません。そこで,コントロール・ビッドを開始します。レスポンダが のコントロールを示すと,オープナーはブラックウッドして Ace の枚数をチェックできます。レスポンダが これに Ace 1 枚と答えるので,オープナーは 5 で打ち止めます。
 もしも レスポンダの手に A,A のどちらかが加われば,スラムに行けるところでした。
Opener
A K J 8 5 3
A
8 3 2
A K 9
    
Responder
Q 7 2
K Q J 8 6 4
K Q
Q 6
    
OpenerResponder
12
23
44
4NT5
6Pass
 この場合,オープナーのビッド 4 を受けて,レスポンダは の第 2 コントロールを示します。これにより,オープナーは 少なくともスモール・スラムができることを知ります。もしも のコントロールが A ならばグランド・スラムが可能なので,ブラックウッドを使います。レスポンダからの回答が Ace 0 枚なので,オープナーはスモール・スラムに落ち着きます。
 Eric Rodwell:"Control-Showing Bids" (2009 March/April)
 Eric Rodwell:"More About Showing Controls" (2009 May/June)