TWO-OVER-ONE
by Eric Rodwell
メジャースートを上げる
1
, 1
オープンの場合,レスポンダが真っ先に考えるのは,"このメジャー
スートをサポートできるか ?" に尽きます。その理由は簡単です。メジャースートで
切り札 8+ 枚のフィットが見つかれば,コントラクトが
どこに あるかが直ぐに
分かります。残る課題は
どの代で (パートスコア,ゲーム,スラム) だけです。
[1]. ダミーの切り札 3 枚と 4 枚の違い
1
, 1
オープンは 5 枚のスートを約束するので,合わせて 8 枚のフィットがあるためには,レスポンダの手に 3 枚あれば十分です。ただし,8 枚あれば一応は足りますが, 9 枚あれば 多々ますます弁じます。
9 枚あれば,8 枚の場合に比べて,更に上を狙えるからです。
|
K 8 5
| J 7 4
| A 6 3
| K 8 6 3
|
|
|
10 3
| K Q 10 6 5
| Q 10 7 4
| J 9
|
|
|
J 7 2
| A 8 2
| J 9
| Q 10 7 4 2
|
|
|
| A Q 9 6 4
| | 9 3
| | K 8 5 2
| | A 5
|
|
たとえば 右のディールで South が
1 オープンします。North は 3 枚の切り札と 11 pts でオープナーに何かの誘いを掛けてゲームを狙います。オープナー South は,
この誘いに乗って 4
に上がるべきでしょうか ?
13 HCP + 1 LP = 14 pts のこの手で,South は微妙な判断を迫られますが,結論を先に言うと,4
はダウンします。
,
で各 2 トリック
負けるからです。
ハートの 2 トリックは頭から取られます。ダイヤモンドは,ディフェンダーの 6 枚が ぴったり 3−3 の分かれならば 1 トリックの負けで済みますが,4-2 の
分かれが多いので,その場合には,ダイヤモンドの 4 巡目をダミーでラフする必要があります。
ダミーの切り札が 3 枚のために,ここでディクレアラーは板ばさみになります。切り札を全部刈り上げてしまうと,ダイヤモンドをダミーでラフできません。そうかと言って,刈り上げを 2 回に留めると,ダイヤモンドを
8 でラフしたとき,East がそれを
J で上切りします。
それでは,ダミーの切り札が 4 枚ならば どうでしょうか ?
|
K 8 5 3
| J 7 4
| A 6 3
| K 8 6
|
|
|
10 3
| K Q 10 6 5
| Q 10 7 4
| J 9
|
|
|
J 7 2
| A 8 2
| J 9
| Q 10 7 4 2
|
|
|
| A Q 9 6 4
| | 9 3
| | K 8 5 2
| | A 5
|
|
ダミーの手の強さと形に変化は ありません。しかし,クラブが 1 枚減って, 切り札 スペードが 1 枚増えました。
この場合には,切り札を 3 回
刈り上げても なおダミーに 1 枚
残るので,ダイヤモンドの 4 巡目をラフできます。
したがって,4
は メイクします。
このように,ダミーの切り札 4 枚は極めて重要です。このため,標準システムでも 2/1 システムでも 3 枚と 4 枚を区別してビッドします。
[2]. 3 枚で上げる
パートナーのスートをサポートする場合には,長さ点
(Length Points, LP) の
代りに
ダミー点 (Dummy Points, DP) により 自分の手を評価します。これは,
ダミーに短いスートがあると,ラフによりトリックを稼げるからです。
切り札が 3 枚の場合のダミー点は,次のように数えます。
切り札 3 枚のときのダミー点
ボイド | 3 点
|
シングルトン | 2 点
|
ダブルトン | 1 点
|
後述する切り札 4 枚の場合に比べてダミー点が少ないのは,3 枚であるためにラフの
回数が限られるからです。
2/1 システムでは,点数範囲の刻みかたが標準システムとは少し異なり,次の
4 つの
範囲に刻みます。
この 4 通りの場合について,ビッドの仕方を一覧表で示し,それぞれを以下に説明します。
点数 | 3 枚の切り札で上げる場合のビッドのしかた
|
5〜6 | フォーシング 1NT,次回にプリファー.
|
7〜10 | 2 の代へ上げる.
|
11〜12 | フォーシング 1NT, 次回に 3 の代へ上げる.
|
13+ | 2 の代で新しいスートをジャンプせずにビッド,次回にサポートを示す (ゲーム・フォーシング).
ただし,1 オープンに対して スペードが 4 枚ある場合には,1 をビッドする。
|
切り札が 3 枚の場合,標準システムでは 6〜9 pts で 2 の代に上げます。
他方,2/1 システムでは,5〜6 pts の場合,フォーシング 1NT で つなぎ,次回に 2
に戻すと,こういう弱い手だということが伝わります。これは,フォーシング 1NT の
一つの長所です。
West
A Q 9 6 4
| 9 3
| K 8 5 2
| A 5
|
| |
East
J 8 5
| J 7 4
| Q J 6 3
| 9 8 6
|
| |
|
2 の代に上げます。標準システムと比べると,点数範囲は ほぼ同じですが,1 点だけ高くなっています。
West
A Q 9 6 4
| 9 3
| K 8 5 2
| A 5
|
| |
East
K 8 5
| J 7 4
| Q J 6 3
| Q 8 6
|
| |
West | East
| 1 | 2
| Pass
|
|
この場合には,1
オープンする下限の手なので West はパスしますが,何か強さがあれば
(あるいはオポが競り合えば) ビッドを続けます。
フォーシング 1NT でつなぎ,次回に 3 の代でサポートを示します。
このビッドは,ダミーの切り札が正確に 3 枚であることを伝えます。
オープナーは ダミーの切り札枚数を考慮に入れて,何をコールするか判断します。
West
A Q 9 6 4
| 9 3
| K 8 5 2
| A 5
|
| |
East
K 8 5
| J 7 4
| A 6 3
| K 8 6 3
|
| |
|
これだけの強さがあれば,何か ゲームがあります。
したがって,新しいスートを
(ジャンプせずに) ビッドします。
・ 2 の代で新しいスートをビッド.
2/1 のビッドはゲームを保証します。
West
A Q 9 6 4
| 9 3
| K 8 5 2
| A 5
|
| |
East
K 8 5
| J 7 4
| A Q 3
| K 8 6 3
|
| |
|
|
・ 1 の代で新しいスートをビッド.
West
8 4
| K J 10 6 3
| Q 4
| A Q 9 2
|
| |
East
A K J 6 5
| Q 9 2
| 9 8
| K 4 3
|
| |
|
|
1/1 のビッドは 1 回のフォーシングですが,ゲーム・フォーシングではありません。
したがって,以後も East は フォーシングを掛け続ける必要があります。
[3]. 4 枚で上げる
ダミーに切り札が 4 枚ある場合には,ダミーでラフする可能性が上がるので,
ダミー点を 次のように数えます。
切り札 4 枚のときのダミー点
ボイド | 5 点
|
シングルトン | 3 点
|
ダブルトン | 1 点
|
また,切り札の強さを反映して,点数区分を 1 点だけ下に拡げます。
この 4 通りの場合について,ビッドの仕方を一覧表で示し,それぞれを以下に説明します。
点数 | 4 枚の切り札で上げる場合のビッドのしかた
|
4〜5 | フォーシング 1NT,次回にプリファー.
|
6〜9 | 2 の代に上げる.
|
10〜12 | 3 の代にジャンプして リミット・レイズ.
|
13+ | 以下に説明.
|
フォーシング 1NT でつなぎ,次回に 2 の代に戻します。
West
A Q 9 6 4
| 9 3
| K 8 5 2
| A 5
|
| |
East
J 8 5 3
| J 7 4
| 6 3
| Q 8 6 3
|
| |
|
2 の代に上げます。
West
A Q 9 6 4
| 9 3
| K 8 5 2
| A 5
|
| |
East
K 8 5 3
| J 7 4
| 9 6 3
| K 8 6
|
| |
West | East
| 1 | 2
| Pass
|
|
直ちに 3 の代にジャンプして,切り札 4 枚を示します(リミット・レイズ)。
West
A Q 9 6 4
| 9 3
| K 8 5 2
| A 5
|
| |
East
K 8 5 3
| J 7 4
| A 6 3
| K 8 6
|
| |
|
[4]. 13+ pts と 4 枚で上げる
この場合には,少なくともゲームがあります。切り札も強いのが見つかっています。
したがって,ここでは スラムの有無に目を向けます。
スラムには一般に 33 pts が必要ですが,今のように良い切り札があれば,
少し
不足でも スラムはできます。
ただし,その他にコントロール
(Ace,King,シングルトン,ボイド) と サイド・スートでの
フィットが重要です。
これらをレスポンダが調べる道具としては,
・ ジャコビ 2NT,
・ スプリンター,
・ 新しいスートをビッド,
といった手段があります。
[5]. ジャコビ (Jacoby) 2NT
1
, 1
オープンに対する 2NT 応答は,切り札 4+ 枚と 13+ pts を示します。 これは ゲーム・フォーシングであり,スラムへの関心を示し,オープナーにその手をさらに
記述するよう要求します。
これに オープナーは 次の順位により答えます:
ジャコビ 2NT に対するオープナーの答えかた
◇ シングルトン/ボイドが
ある場合.
(A) 5 枚の
良い内容のスートがあれば,それを 4 の代で示す。
(B) シングルトン/ボイドのスートを 3 の代で示す。
◇ シングルトン/ボイドが
無い場合.
(C) 切り札 6+ 枚,15+ pts の強さがあれば,3 の代に上げて, キュービッドの開始を要求する。
(D) 15+ pts の セミ・バランス・ハンドでは,3NT。
(E) 下限の手では,道草せずに 4 の代に跳ぶ。
以下に (B), (C), (E) のハンド例を示します。
Hand-1-(B)
|
West
A J 7 5 3
| K 9 3
| 5
| A 9 8 5
|
| |
East
K Q 9 6
| A Q 5
| 7 4 2
| K Q J | (17 HCP)
|
| |
West | East
| 1 | 2NT
| 3 | 4NT
| 5 | 6
| Pass
|
|
East の ジャコビ 2NT に答えて,West は
(たとえ下限の手であっても) シングルトンのスートをこのように示します。East は,"無駄なく" 4 スート全部にコントロールがあることを知って,ブラックウッドにより Ace の枚数を確かめます。こうして,合計僅か 29 HCP でスラムが実現します。
ここで オープナー West の
と
を入れ換えると …
Hand-2-(B)
|
West
A J 7 5 3
| K 9 3
| A 9 8 5
| 5
|
| |
East
K Q 9 6
| A Q 5
| 7 4 2
| K Q J | (17 HCP)
|
| |
|
West はクラブのシングルトンを 3
により伝えます。このとき,East の
KQJ = 6 HCP は全て
無駄であり
(West でラフできるので) 屑札でも十分です。結局 East の手の値打ちは 17 HCP → 11 HCP に下がってしまうので,4
で打ち止めます。
Hand-3-(C)
|
West
A J 10 7 5 3
| 9 3
| A Q
| A 8 7
|
| |
East
K Q 9 6
| A Q 5
| 7 4 2
| K Q J | (17 HCP)
|
| |
West | East
| 1 | 2NT
| 3 | 4
| 4NT | 5
| 6 | Pass
|
|
今度は West の手は 6-2-2-3 セミ・バランス・ハンドです。15 HCP + 2 LP = 17 pts なので,
3 によりその長さと強さを示し East にキュービッド開始 (4
) を求めます。
Hand-4-(E)
|
West
A J 7 5 3
| K 9 3
| 9 8 5
| A 7
|
| |
East
K Q 9 6
| A Q 5
| 7 4 2
| K Q J | (17 HCP)
|
| |
West | East
| 1 | 2NT
| 4 | Pass
|
|
オープナーは 下限のバランス・ハンドなので,直ちにゲームをビッドします。
ジャコビ 2NT を使う場合,どちらのプレイヤーが主導権 (captaincy) を握ってスラムの判断をするかが重要です。普通は,2NT をビッドするレスポンダの方が強いので 主導権を取り,オープナーは記述者となります。ただし,上の Hand-3-(C) のように,オープナーも強くて自分から判断できる場合もあります。
[訳注:ジャコビ 2NT に必要な手の強さとして,著者は 13+ pts を挙げていますが, 上のハンド例は どれも 17 HCP です。シングルトン/ボイド を持たないレスポンダが主導権を取ってスラムを判断するには,13 pts では不足でしょう。]
[6]. スプリンター (Splinter)
1
, 1
オープンに対して,
新しいスートをダブル・ジャンプして ( 2 つ跳んで) ビッドするのは,
スプリンターと呼ばれ,
・ ゲームを保証する.
|
・ 切り札 4+ 枚を保証する.
|
・ シングルトン/ボイドがある.
|
・ シングルトンは Ace, King ではない.
|
を示します。これにより オープナーにキュビッドの開始を求め,スラムを視野に
入れています。
West
A 8 5
| K Q J 6 2
| K Q 10 5
| 4
|
| |
East
J 6 3 2
| A 10 5 4
| 4
| A J 7 3
|
| |
|
1
オープンに対して,レスポンダは 10 HCP + 3 DP = 13 pts を持つので,
スプリンター 4
により
のシングルトンを示すと同時に,ゲームを保証します。このとき, West の
KQ = 5 HCP が無駄点になるので,West は ゲームを
ビッドします。
ここで,レスポンダの
と
を
入れ換えてみます。
West
A 8 5
| K Q J 6 2
| K Q 10 5
| 4
|
| |
East
4
| A 10 5 4
| J 6 3 2
| A J 7 3
|
| |
|
East はスペードのシングルトンを スプリンター 3
により示します。これにより,スペードの負け札 2 枚がダミーでラフできることを West は 知ります。
あとは,ブラックウッドを使い,Ace の枚数を確認すれば足ります。このディールでは,合計わずか 25 HCP でスラムができます。
[7]. 新しいスートをビッドする
レスポンダの手が強いと言っても,ジャコビ 2NT とスプリンターにより
全て
処理できるとは限りません。
たとえば,シングルトンの手であっても,
スプリンターするには強すぎる手の場合には,スプリンターしても,オープナーから役に立つ情報は得られません。特に レスポンダが良いサイドスートを持っており,それにより沢山のトリックを取れる場合がこれに
当てはまります。
また,下に示すような 2 スーターの手の場合には,ジャコビ 2NT を使ってオープナーからシングルトン情報を得ようとしても
(ゲームのビッドが返ってくるだけで),
役に立ちません。
2/1 の手法を使えば,はじめに ゲーム・フォーシングを掛けて,
ゆっくり法によりスラム探索できます。
West
A Q 9 5 3
| K 9 7
| Q J 5
| 7 4
|
| |
East
K J 6 2
| A 4
| 6 2
| A Q J 5 3
|
| |
|
West が 1
オープンすると,スペードにゲームがあることを East は知ります。
East から見て,スラムが可能なのは,
(1) クラブでフィットがある.
(2) オープナーが
のコントロールを持っている.
この両方が満たされている場合です。
ここで ジャコビ 2NT を使っても (4
という返事が返ってくるだけであり),上のような情報は得られません。そこで先ず 2
によりゲーム・フォーシングを掛け,スペードのサポートを後回しにします。
これに対する West の 2NT は,
クラブをサポートせず,また 4 枚の第 2 スートも
示さないので,East はゲームに落ち着きます。
オープナーの手を少し変えてみます。
West
A Q 9 5 3
| 9 7
| A 5
| K 9 7 4
|
| |
East
K J 6 2
| A 4
| 6 2
| A Q J 5 3
|
| |
West | East
| 1 | 2
| 3 | 3
| 4 | 4NT
| 5 | 5NT
| 6 | 6
| Pass
|
|
2
に 3
が返ってくると,スラムの条件 (1) が満たされていることが分かります。そこで初めて 3
によりスペードのサポートを示します。(2/1 を使っているので,ここで ジャンプ 4
の必要はありません。)
West がキュービッド 4
に
よりダイヤモンドのコントロールを示すと,ブラックウッドに入れます。
Eric Rodwell:
"Major Suit Raises" (2007 May/June)
Eric Rodwell:
"Major Suit Raises ─ Part II" (2007 July/August)
この講座は隔月に連載されたので,前号の説明の繰り返しが登場します。
煩わしいので,重複部分を削除して翻訳しています (以下の号も同様)。