TWO-OVER-ONE
by Eric Rodwell
2/1 応答に対する オープナーの 2 回目のビッド
オープナーの役割を端的に言うと,
記述者 (describer) です。
オープニング・ビッドがこの記述を開始します。そして,2 回目のビッドにより更に手の強さと形を絞って記述します。そのお蔭で,レスポンダは最善のコントラクトに向かって進むことができます。
そもそも 1
, 1
オープンは,広い範囲の強さを記述します:
切り札は 5 枚以上で,手の形は さまざまです。5-3-3-2 型バランス・ハンドもあれば,
7-5-1-0 のような極端な形もありえます。
1
オープンに対して レスポンダが 2/1 応答した場合に,オープナーが自分の手を
どう記述するかを見てみましょう。
West | North | East | South
|
1 | Pass | 2 | Pass
|
?
|
East のビッド 2
は,レスポンダの新しいスートなので,フォーシングです。
標準システムとは違い,2/1 システムでは これはゲーム・フォーシングです。このシステムの違いが,オープナーの次のビッドに影響を与えます。
2/1 の場合には 既にゲームが保証されているので,それ以上の強さを ここで
示す必要はありません。したがって,そのビッドの仕方は,
手の強さではなく,
手の形により分類できます。
1. バランス・ハンド.
2/1 応答の後で,
バランス・ハンドのオープナーは
手の強さとは無関係に, 2NT をビッドして,手の形を伝えます。
たとえば,この手は下限 13 HCP です。2NT がこの手を最も良く記述します。
K 9 4
|
A J 8 5 3
|
J 8 2
|
A 3
|
|
|
West | North | East | South
|
1 | Pass | 2 | Pass
|
2NT
|
標準システムでも ここで 2NT をビッドしますが,2/1 システムでは
(2が既にゲーム・フォーシングなので) この 2NT もゲーム・フォーシングです。
K 9 4
|
A K J 8 5
|
A 2
|
Q J 3
|
オープナーの手を少し強くして 18 HCP にしてみると,2 つのシステムの違いが分かります。
標準システムの場合,オープナーは ここでジャンプして 3NT をビッド
します。もしも 2NT をビッドすると,ノン・フォーシングなので,パスされる恐れがあるからです。
2/1 システムの場合,オープナーのビッドは 2NT で十分です。
これにより
手の形だけを伝え,多くのビッド余地を残して 以後の探索に備えます。 2NT はパスされないので,レスポンダの次のビッドを聞いてから 自分の
手の強さを記述できます。
結局,オープナーの この 2NT は,下限
または 上限のバランス・ハンドを示します。
中程度 (15〜17 HCP) のバランス・ハンドは,1NT オープンできるからです。
次のような手の組み合わせの場合,この方法の長所が見られます。
West
K 9 4
| A K J 8 5
| A 2
| Q J 3
|
| |
East
A 10 3
| Q 3
| K 4
| K 10 8 7 6 2
|
| |
West | East
| 1 | 2
| 2NT | 3NT
| 4 | 6
| Pass
|
|
West が 2NT をビッドすると,その手の強さを (上限ではなしに) 下限だと仮定して, East は単に 3NT に上げます。今度は,West が上限の強さ,3 枚のクラブ・サポート,スラムへの関心 などを示す番です。この時点で,もっと込み入った方法によりスラムを狙うこともできますが,今は 上のような単純なオークションで済みます。このスラム・トライに対して,East は
に 6 枚の長さがあるので 6
をビッドします。負けるのは
A の 1 トリックだけです。
West | East
|
1 | 2
|
3NT | Pass
|
同じ手を標準システムで扱ってみましょう。
オークションは右のように進みます。West は 3NT にジャンプして余分の
強さを示します。East は,クラブのフィットが不確かなので,3NT より上に進もうとはしません。
要約すると,2/1 応答の後で,オープナーはバランス・ハンドを最低の代 2NT で示します。でかい手の場合にも,同じく 2NT により ビッド余地を稼ぎ,その強さは 後のビッドで伝えます。
2. 2NT とストッパ.
ところで,2NT をビッドするとき,ビッドされていないスートに
ストッパは
必要でしょうか ?
たとえば この場合,West が 2NT によりバランス・ハンドを示すと,最善のコントラクト 3NT に容易に到達します。
West
A 10 5 4 3
| A K 3
| Q 7 3
| 4 2
|
| |
East
6 2
| J 5 2
| A K 5
| K J 10 9 5
|
| |
West | East
| 1 | 2
| 2NT | 3NT
|
|
West
A 10 5 4 3
| A K 3
| 10 7 3
| Q 2
|
|
West | East
| 1 | 2
| 2NT ?
|
|
West の手が左の場合にも,オークションは同様に進みますが ・・・
2/1 応答の後で このように 2NT をビッドするには,ビッドされていないスートにストッパが必要だと考える大家
(たいか) が何人もいます。それなら 2NT 以外にどんな途があるでしょうか ?
(1) 2
は スペード 6 枚を保証するので,今は不可。
(2) レスポンダのクラブを 2 枚でサポートできない。
(3) 新しいスート (
) を 3 枚ではビッドできない。
(ただし,フォーシング 1NT に対しては,3 枚のマイナースートを示すことはあります)
そこで,私のお勧めは:
2/1 GF 応答に続く オープナーの 2NT は,
ビッドされていないスートにストッパを保証しない。
というものです。
上のオープナーの手に対して このような組み合わせでは
West
A 10 5 4 3
| A K 3
| 10 7 3
| Q 2
|
| |
East
8 2
| Q J 2
| J 4 2
| A K J 7 5
|
| |
West | East
| 1 | 2
| 2NT | 3NT
|
|
3NT コントラクトに達します。どちらのプレイヤーも
のストッパを欠いていますが, 3NT は最善のコントラクトです。ディフェンダは
を打ち出さないかも
知れません。打ち出したとしても,4-3 の分かれとか,5-2 でブロッキングが起こるかも知れません。
3. アンバランス・ハンド,セミ・バランス・ハンド.
バランス・ハンド以外の場合には,次のどれかを選択します。
(1) 自分の第 1 スートを もう 1 回ビッド (リビッド) する.
(2) レスポンダのメジャースートをサポートする (1
-2
).
(3) レスポンダのマイナースートをサポートする.
(4) 4 枚以上の第 2 スートを示す.
いずれにしても,既にゲーム・フォーシングの状況なので,ジャンプする必要はありません。
3-1. 第 1 スートを もう 1 回ビッドする.
特殊な例外を除いて,オープナーが第 1 スートを重ねてビッドするのは,
6+ 枚を示します。
West
J 10 8 6 3 2
| A 8
| Q 7 3
| A 3
|
| |
East
Q 4
| K 7 5
| A K J 8 5
| 9 6 2
|
| |
|
West は パートナーのスート
に 3 枚のサポートがありますが,6 枚のメジャースートを優先します。ここで重要なのは長さであって,強さではありません。8 枚のフィットが見つかれば,East はゲームに行きます。3NT や
5 より
4 がずっと良いコントラクトです。
このように,オープナーが第 1 スートを 2 回ビッドするのは,単に 6+ 枚を
示すのが目的であり,その強さは不明です。ゲームが既に保証されているので,
ここでは
どこに コントラクトがあるかを見つけるのが先決です。ゲームか
スラムかは,二の次です。
例を更に いくつか挙げましょう。
[1] | K Q 9 7 6 4
|
| K Q 3
|
| J 4
|
| 9 4
|
West | North | East | South
|
1 | Pass | 2 | Pass
|
2
|
切り札 6 枚の下限の手で,West は 2
をビッドします。
レスポンダにとって,
スペードが 6 枚以上という知らせは 値打ちがあります。
[2] | K Q 9 7 6 4
|
| A K J
|
| J 4
|
| K 9
|
他方,かなりの強さがある この手でも,やはり同じく 2
です。 こうして, 余分の
長さを伝えることを優先します。余分の
強さを示すのは,切り札が決まってからにします。
それでは,このあと オークションはどう進むのでしょうか ?
West
[1] | K Q 9 7 6 4
| | K Q 3
| | J 5
| | 9 4
|
| |
East
A 3 2
| 8 6
| A K 10 6 2
| Q 5 3
|
| |
|
West がスペードを 2 回ビッドすると,East は それを一つ上げて 切り札のフィットを示します。ここでは,標準システムとは違い,4
にジャンプする必要はありません。East は,パートナーがスラムに関心を持つ場合に備えて, ビッド余地を残します。けれども West は下限の手なので,ゲームで打ち止めにします。
West
[2] | K Q 9 7 6 4
| | A K J
| | J 5
| | K 9
|
| |
East
A 3 2
| 8 6
| A K 10 6 2
| Q 5 3
|
| |
West | East
| 1 | 2
| 2 | 3
| 4NT | 5
| 6 | Pass
|
|
今度もオークションの始まりは同じです。しかし,East がスペードのフィットを示すと,West はブラックウッドを打ち上げて,Ace が 3 枚揃った場合には,スモール・スラムを見つけます。
3-2. 1
-2
で ハートをサポートする.
メジャースートでの 2/1 応答は
West (Opener) | East (Responder)
|
1 | 2
|
この場合だけです。合わせて 8+ 枚のメジャースート・フィットが見つかれば,それを
伝えることが 常に第 1 要件です。レスポンダの 2
が ハート 5+ 枚を約束するので,オープナーは 3+ 枚で一つ上げます。
West
A K 8 6 5
| 9 8 3
| J 2
| A 7 6
|
| |
East
7 3
| A J 10 6 5
| A 3
| K Q 8 3
|
| |
|
West はバランス・ハンドを持っていますが,3NT ではなしに,3
をビッドします。このように,バランス・ハンドを持っていても,8 枚のメジャーフィットがあれば,それを優先します。
オープナーはここで,ハートの絵札を持っている必要はありません。とにかく3枚以上のハートがあれば 3
をビッドします。これは 3NT より遥かに良いコントラクトです。実際 上の場合には ダイヤモンドの打ち出しにより 3NT はダウンします。
3-3. レスポンダのマイナースートをサポートする.
レスポンダが 2
, 2
を答えたとき,その長さは 5 枚を保証しません。また,マイナー・スートのゲームはノートランプほど魅力がありません。そこで,レスポンダのマイナースートを上げるには,通常,4 枚が必要です。ただし,強い 3 枚カードとスート向きの手では,サポートすることがあります。
West
J 6
| A K 10 6 3
| 9 4 3
| A Q 10
|
| |
East
A K 3
| J 4
| A Q 5
| K J 8 7 5
|
| |
|
West はレスポンダのマイナースート
に 3 枚しかありません。しかし,絵札が
,
に集中しているので 3
に上げます。この場合には,それが East を元気づけて,見事なスラムに達します。
West
J 6
| A K 10 6 3
| K J 3
| 9 6 3
|
| |
East
A K 3
| J 4
| A Q 5
| K J 8 7 5
|
| |
West | East
| 1 | 2
| 2NT
|
|
同じ 3 枚でも,こういうお粗末なクラブでは,そういうことはできません。2NT をビッドして,バランス・ハンドであることを伝えます。この場合,East は定量 4NT をビッドして スラムに誘ってくるでしょうが,パスして 4NT に止まります。
3-4. 第 2 スートを示す.
オープナーの手が アンバランス・ハンド,セミ・バランス・ハンドの場合には,4+ 枚の第 2 スートがあります。第 2 スートがレスポンダのスートと一致しない場合には,
(1) 第 1 スートを もう 1 回ビッドする.
(2) 第 2 スートをビッドする.
このどちらを選択するかが 問題になります。
次の手の場合には,West は 2
を選びます。
8 4
|
A Q 8 5 4 3
|
K Q 10 2
|
3
|
West | North | East | South
|
1 | Pass | 2 | Pass
|
2
|
2 の代の新しいスートですが,これは 余分の強さを約束するものではありません。ハートを 2 回ビッドするよりも,第 2 スートを示す方が優れた記述です。ハートが 5 枚であることは初回に通知済みなので,ダイヤモンド 4 枚を加えた
合計 9 枚の形をパートナーに伝えました。
ハート 6 枚の この手では,2
をビッドすることも可能です。しかし,それではハートの枚数だけしか伝えられません。記述の点で遥かに劣ります。ハートの長さを急いで伝える必要は無いのです。ゲーム・フォーシングの状況にいるので,ハートの長さは次回以降のビッドで伝えられます。
こちらのハンドは,標準システムでは扱いにくい場合です。
A Q 8 3
|
A Q 9 5 4
|
7 4
|
9 3
|
West | North | East | South
|
1 | Pass | 2 | Pass
|
2
|
2
に対して 2
をビッドするのはリバースであり,ほぼ 1 トリック余分の強さを保証します。この下限の手では,それが許されません。したがって,2
を強いられますが,これは良い記述とは言えません。
他方,2/1 システムでは,2
をビッドできます。既にゲームが保証されているので, このビッドは余分の強さを保証するものではありません。
ただし,第 2 スートを
3 の代で示す場合だけは,注意が必要です。これはビッド余地を多量に消費するので,何らかの
おまけ (余分) を示すものと取り決めます:
・ 第 2 スートが 5+ 枚である。
・ 15+ HCP である。
このような おまけ が無ければ,バランス・ハンド以外でも,オープナーは 2NT をビッドします。
いくつかの例を見てみましょう。
West | North | East | South
|
1 | Pass | 2 | Pass
|
?
|
A Q 9 7 6
| 2
| K J 10 4 2
| Q 2
|
|
下限の手ではありますが, 5 枚の第 2 スートを 3 の代で 3により示します。
|
|
A Q J 7 6
| A 2
| K J 10 3
| Q 2
|
|
おまけ の強さがあるので,4 枚ですが 第 2 スートを 3 の代で 3により示します。
|
|
A Q 9 7 6
| 6 2
| K J 5 3
| Q 2
|
|
第 2 スートが 4 枚で,しかも おまけ の強さが無いので,
(バランス・ハンドではありませんが) 2NT をビッドします。
|
|
また,レスポンダのスートをサポートできる場合には,おまけ の強さが無くても 3 の代に上げます。仮にこれが良いフィットであっても,ジャンプしてはいけません。そういう おまけ は,後のビッドで示せます。
West | North | East | South
|
1 | Pass | 2 | Pass
|
?
|
A J 8 6 2
| K 4
| 8 2
| K J 5 2
|
|
A K 8 6 2
| A 4
| K J 5 3
| A Q 5 2
|
|
レスポンダのスートを 4 枚でサポートできるので,下限の手ですが 3 に上げます。
|
左よりずっと強い手ですが,同じく 3 に上げます。
ゲーム未満に留まる危険はありません。レスポンダの次のビッドを聞いてから,おまけの強さはいつでも示せます。スモール・スラムやグランド・スラムを狙うためのビッド余地を残します。
|
既に上に述べたように,2/1 応答に続いて オープナーが第 1 スートをもう 1 回
ビッドするのは,6 枚を保証します。このとき,オープナーの手は,
(1) 下限の場合.
(2) おまけの強さを持つ場合.
この どちらもありえます。ここまでのどの例も,ゲームが保証されると,
どこに コントラクトが
あるかが先決で,
どの代で (ゲームかスラムか) は 常に
二の次に
なります。
3-5. 6-4 の形.
6 枚 + 4 枚の場合は,第 1 スートを 2 回ビッドするよりは,第 2 スートを示すのが普通です (ただし,第 2 スートが非常に弱くて 2 の代で示せないときは別です)。そして,後に 第 1 スートをビッドして 6 枚を示します。
West
A J 8 7 5 4
| A K 9 3
| 8
| 9 3
|
| |
East
10 3
| 7 5
| A J 7 2
| A K J 6 2
|
| |
|
オープナーが第 2 スートを示すと,レスポンダは 2NT が最善だと提案します。そこでオープナーがスペードをリビッドすると, 8 枚のフィットが見つかります。ここにも 2/1 システムの特徴が現れています。2NT がフォーシングなので,レスポンダは 3NT にジャンプする必要がありません。上のようにすれば,どちらの
プレイヤーも自分の手をよく記述できます。
ただし,第 2 スートのビッドを下限の手に対して禁止する流儀もあります。すなわち, 第 2 スートを示すと,何かおまけの強さを示す意味になります。この流儀には多少の利点がありますが,下に示すハンドでは,私の流儀の方が簡明です。なぜなら,2
リビッドが 4 枚の第 2 スートを否定するので,
West
A Q 8 7 5 4
| K Q 3
| 8 3
| 9 3
|
| |
East
3
| J 7 5
| A K Q 10 5 2
| K 10 2
|
| |
|
ハートの強みを 3
により示せるからです。こうして レスポンダは安心して 3NT に
行けます。
ストッパとは何か
(1)
ストッパとは,相手側が打ち出したスートで全トリックを取ることを邪魔する (
あるいは,邪魔する可能性のある) カードを指します。
(2) ストッパの明白な例は,A,K
Q,Q
J
10 です。
(3) また,第 1 トリックが左オポから打ち出されるので,Q
J
x も
ストッパです。同様に,K
x,K
x
x もストッパです。これらは,オポが第 1 トリックで他のスートを打ち出した場合,実際にトリックを取るとは
限りませんが,
ディクレアラが他のスートでトリックを取る時間的余裕を与えます。
(4) Q
x,J
x
x,10
x
x
x を ハーフ・ストッパ (Half Stoppers) と
呼びます。
二人がどちらもハーフ・ストッパを持っていると,合わせて
一人前のストッパ (Full Stopper) になります。
Eric Rodwell:
"Opener's Rebid After 2/1" (2007 September/October)
Eric Rodwell:
"Opener's Choice of Rebid" (2008 January/February)