Larry and the Law
by Larry Cohen
ウィーク2に応答する
1. 切り札の枚数を数える.
2. 法則を適用しない場合.
3. 法則による競り合いの指針を適用する.
1. 切り札の枚数を数える.
ブリッジを始める人は誰しも,A=4, K=3, Q=2, J=1 として,合計の HCP を数える。そしてパートナーと合計 何点持っているかに基づいてビッドを進める。合計 25〜26 HCP あれば,ゲームに行こうとするし,33 HCP もあればスラムを狙おうとする。
オークションが競り合いの場合には,これと同様に,パートナーと合計 何枚の切り札を持っているかに基づいてビッドを進める。これが有効な理由は,
法則から次の単純な指針が導かれるからである:
法則による競り合いの指針
パートナーと自分の合計切り札枚数に相当する代まで 競り合いに努めよ
自分が持っている切り札の枚数は もちろん ハッキリしているが,パートナーの切り札の枚数は,どうやって分かるのだろうか? 多くの場合,パートナーのビッドがその手懸りを与えてくれる。たとえば,パートナーがウィーク2で 2
オープンした場合,パートナーは良い6枚スートを持っていると想像できる。この6枚に自分が持っている枚数を加えて,2人の合計枚数が得られる。
法則を応用する場合には,これがウィーク2にどう応えるかの出発点になる。
2. 法則を適用しない場合.
法則を必要とするのは,競り合いの場合に限られる。もしも味方が圧倒的に強ければ,相手方がオークションに参入することは無く,その場合には,法則とその教えるところを無視する。
たとえば,このハンドは法則と全く関係が無い。見れば分かるように,この手では5トリックを確実に取れそうなので,パートナーの手と合わせて合計 10 トリックを取れると想像できる。
4人の手は,たとえば,このようになっているだろう。
ディクレアラーのハートのルーザー2枚は,ダミーでラフするか,あるいは,ダミーのダイヤモンドをエスタブリッシュして その下に捨てることができる。
こうして,4
はメークすると期待できる。この場合,切り札の枚数は無関係である。4
をメークしたいと思うので,4
をビッドする。
これと同じ考え方で説明できる例をもう一つ挙げよう。 ここでは 3NT ができそうなので,3NT をビッドしたい。
7トリックと
1 トリックを確実に取れる。残りの 1トリックは,
Q,
K,
あるいは パートナーのスペードで取れるであろう。
要するに,ゲームが確実にあると考えられる場合には素直にゲームをビッドする。このとき,
法則については何も考えない。
パートナーが ウィーク2でオープンして,自分が法則を無視するもう一つの状況は,ゲームへの誘いを掛けられる程度の強さを自分が持っている場合である。
この場合,もしもパートナーの 2
オープンが良い手ならば ゲームがあるし,さもなければ ゲームは無い。
だが,ここで 3
を応えるのは,後述のように,誘いではない。したがって パートナーにその状況を伝えてくれるよう要求するビッドが何か必要である。そのために使われるのが,フォーシング 2NT コンベンションである。
この 2NT にパートナーが 3
を返して余分の強さを示さなければ,こちらは それをパスして,パートスコアに落ち着く。もしもパートナーがスペード以外のスートをビッドして 余分の強さを示せば,こちらは 4
に上がる。
この例の場合,手許の切り札は3枚であるが,こちらは最良のコントラクトを目指しており,相手方が割り込む様子が無いので,法則を適用することはしない。
ウィーク2ビッドへの応えかた
パートナーが ウィーク2 オープンした場合には,
(1) ゲーム・コントラクトを作る見込みがありそうな場合.
・ ゲームをビッドする。
・ フォーシング 2NT により,パートナーから更に情報を得る。
(2) ゲームの見込みが無い場合には,切り札の合計枚数に従って競り上げる。
・ 0〜2枚のとき,パス.
・ 3枚のとき,3の代に上げる.
・ 4枚のとき,ゲームの代に上げる.
3. 法則による競り合いの指針を適用する.
パートナーが ウィーク2 オープンして,自分の手の強さが不足しており,ゲームの見込みが無いと考えられる場合には,競り合いを考える。右オポがパスしている場合には,競り合いは未だ発生していないが,いずれは競り合いになる。この場合には,法則の適用を考え始める。
パートナーのビッドが ウィーク2の場合には,この適用は非常にやさしい。 ビッドすべきか否か,ビッドするとして どの代をビッドすべきか を決めるには,2人の手にある切り札の枚数を数えるだけでよい。
このハンドの場合,自分からゲームに行こうとか,パートナーにゲームの
誘いを掛けようとか,そんなことは考えない。それよりも,"法則による競り合いの方針" を適用して考える。自分はスペードを3枚持っている。パートナーの6枚と合わせて,切り札は合計9枚ある。だから 9枚に相当する代まで競り合って,3
をビッドする。
2
を一つ上げて 3
をビッドするのは誘いではない。パートナーは,これをパスするものと期待されている。自分はこの 3
をメークするつもりなのか? 否, それはどうでもよい。3
で負けることによる失点が,相手側が最良のコントラクトで得る得点を下回ると考えて,このようにビッドしている。私の 3
は,彼らが最良のコントラクトに到達するのを困難にすることを目的とする。
上の例では,East がパスしたので,競り合いは未だ発生していないように見える。 確かに
未だ発生していない。だが,味方2人の手に強さが無く,East も
またパスするような手ならば,West は 必ず オークションに参入してくる。こちらの 3
は,オークションが こうして競り合いになることを見越したビッドである。
それでは,もしも East が テイクアウト・ダブルを掛けるとか, 3の代でオーバーコールした場合には,どうすべきか。その場合にも,やはり 切り札の合計枚数に
従って, 3
をビッドする。
ただし,East がジャンプして 4
オーバーコールした場合には,パスする。切り札の合計枚数を越えてまで 競り合うことはしない。
もう少し強い手を持っていて 3
に上げることもある。右のハンドでは,ゲームに行くだけの強さは無い。したがって,
法則を適用する :「切り札が合計9枚なので,3
をビッド」 右オポがパスしても 何かビッドしても 同じである。この 3
をメークしようというつもりは無い。
このハンドの場合にも,ゲームは 到底 期待できない。切り札の枚数は 合計 6+4=10 枚ある。切り札 10 枚ならば,10 トリックに相当する代 すなわち 4 の代にジャンプして 4
をビッドする。
それでは,このように弱い手で 4
,しかも
最初のハンドでも 4
ということになるが,パートナーは,いったい どうやってこの区別をつけるのだろうか? パートナーがそれを知るのは,ダミーの手が開いた時だ! (私のビッド 4
に パートナーは
関わっていない)。それまでは,パートナーも相手方も みな 私が 何をしようとしているのか推測するしかありません。
それでは,右のように,切り札のサポートが2枚以下の場合には どうなるのか? ゲームの見込みが無ければ,パスする。切り札の枚数が 合計8枚以下の場合には,
2の代,すなわち 8トリックを越えて競り合うことは しない。
合計トリック数の法則 (LOTT)
合計トリック数の法則は,Jean René Vernes が その 1968 年の著書 "Bridge Moderne de la Défense" で提案した。何百もの
ディールについて分析した結果, 彼は
トリック数の合計は,いかなるディールについても 切り札の合計枚数に 近似的に等しい
ことを結論した。
Larry Cohen:
"Responding to Weak Two-Bids" (2004, September/October)