以下は,1966 年に出版された Jean-René Vernes:"Bridge Moderne de la Défense" (Éditions le Bridgeur) 第2章の 筆者 bocosan による日本語全訳である。
  英語訳は 1969 年に "Bridge World" に掲載されたが 今ではアクセスできない。
  しかも,フランス語原本と比較すると,脱落・誤訳がある。
  両方を対照しならが,フランス語原本になるべく近い形で翻訳した。
  英語訳が著者自身ではなかったために, 不思議な誤訳と削除が発生したのだろう。
  原文のイタリック部分を 青で表示した。
  50 年前の先人の苦労を知るよすがとなろう。
  なお,本書は 全部で 14 章から成り,第3章以降は,数多くのハンド例を挙げて,ディフェンスの技法を解説している (したがって,書名が「ディフェンスの現代ブリッジ」)。

合計トリック数の法則

ジャン-ルネ ヴェルヌ

1. 競り合いのオークション

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 [第1章で] これまで見たように,ハンド評価の基本的目標は,どの代までビッドできるかを決めることである。しかし,さらに詳しく分析すると,2通りの異なるビッド状況があることが分かる。
 初めに,オークションがこのように進んだとしよう:
WestNorthEastSouth
1 1 Pass 4
 South の 4 の意味は:「パートナーさん,私の手の内容は ── あなたの手が 1 オーバーコールの下限でも,たぶん 4ができます」 ・・・ ということである。この結論に達するために,South は 古典的ポイントカウント法を単純に適用した。この場合,相手方が これに対抗してさらにビッドしてくるかどうかを South は知らずにビッドしているので,まだ 競り合いの状況にはない と言える。
 しかし,オークションが 次のようであったとしよう:
WestNorthEastSouth
1 1 4 4
 South のコール 4 の意味は,上の場合とは全く異なる。4 ができると見込んでいることもあり得るが,1トリック または 2トリックのダウンを覚悟していることもあり得る。さらには,East-West が 4 はメイクすると考えて,ダブルを掛けられることさえ覚悟の上かもしれない。この場合,オークションは 競り合いの状況にある。
 ところで,このような競り合いの状況は 非常に頻繁に起こるのだが,古典的な [ポイントカウント法による] 規則は,この問題の厳密な解を与えるには無力である。なるほど,バルネラビリティが同じ場合には,ダブルされて2ダウンしても 相手側のゲームをとめる方が損が少ないことは,たやすく計算できるし,相手のパートスコアをとめるのに 1ダウンする方が 多くの場合 僅かながら得になる。古典的規則は,パートナーの手がそのビッドの下限の場合に 何トリック こちらが取れそうかを 教えてくれるが,相手方がコントラクトをメイクするかどうかを決める正確な方法を与えてはくれない。そして,相手方のダウンするコントラクトに対して サクリファイスするほど高くつくものは無い。さらに また,こちらが競り合えば コントラクトをメイクできたはずなのに,相手側にコントラクトを取らせてメイクされてしまうのも,それに劣らず高くつくものである。
 それでは,優れたブリッジ・プレイヤーは,こういう状況で,パス, ダブル, オーバーコールをどうやって選別しているのだろうか?
 我々は 長い経験から,この問題が 何よりもカードの枚数分布に依存することを知っている: 分布が不規則であればあるほど,どちらの側も切り札の枚数が多くなり,それだけ高い代での競り合いが正当化される。[ところで] ブリッジを始めたときから誰もが知っているように,Ace と King を沢山持っていれば,ゲームを作る可能性は高くなる。異なる絵札の相対的な値打ちを規定する正確な早見表 [=ポイントカウント法] が見出されたことは,この分野に大きな進歩をもたらした。しかしながら, カードの枚数分布に頼ってどの代まで競り合えるかを教える法則の方は, 今のところ 誰も知らない。
 ブリッジ・プレイヤーは,この分野では,自分の直感に頼る以外に,何の法則も存在しないということなのか? 本書の第一の目的は,競り合いの問題が,精密な しかも かなり単純な法則により支配されることを示すことにある。そして,オープン側のビッドがハンド評価に基づくのと同様に,この法則を 少なくとも間接的に参照すること無しに 競り合いのオークションの厳密な理論を述べることは不可能であると我々は考える。

2. 合計トリック数の法則

 1958 年の世界選手権で実際にプレイされた次のディール No. 93 を調べてみよう:

North
A 6 ディーラー: North
9 7 Both Vul.
K 9 6 4
A Q 9 3 2
WestEast
Q J 10 9 2 K 8 7
10 8 5 4 A J 6 2
A Q J 10 8 5 2
10 4 6
South
5 4 3
K Q 3
7 3
K J 8 7 5
 閉室では,イタリアの N-S チームがコントラクト 4 に到達し,開室では E-W が 2をプレイすることになった。 このディールを分析してみれば分かるように,どちらのコントラクトも正しい。
 North は,で1トリック, A, A の合計3トリックを負けて を切り札に 10 トリックを取る。他方,West は 開室で を切り札にして8トリックを取る。
 ここで読者に,"合計トリック数" と私が名づけた慣れない概念を お考えいただくようお願いする。これは, それぞれの側が それぞれの切り札でプレイしたときに獲得するトリック数の合計である。
 上の例では,合計トリック数は 10+8=18 (N-S が で 10 トリック,E-W が で 8トリック) である。
 さて,競り合いのオークションの最中に,オポが何トリック取れるかを厳密に決めるのは不可能であるが,合計トリック数ならば,その予想を可能にする手段は 無いものだろうか? 後の節で示すように,そのような予想は 興味が尽きない。[英語訳では "手段 (moyen)"→ "average" と誤訳しているために 意味が通じない。以下同様]
 実は,この手段が存在する;しかも きわめて単純な法則の形に表現できる:
 『1つのディールの合計トリック数は,双方がそれぞれのスートで持つ切り札の枚数の合計に近似的に等しい。
 上の例の場合,N-S が2人で合わせて を 10 枚持っており,E-W が を2人で8枚持っている。したがって,切り札の合計枚数は 10+8=18 である。これは,合計トリック数に等しい。
 この例で,読者は 双方について 切り札の枚数とトリック数が等しいことに気づかれたであろう。すなわち,N-S は 切り札 10 枚で 10 トリック,E-W は 切り札8枚で8トリックであった。しかし,これは単なる偶然である。双方の切り札の合計枚数 18 と双方のトリック数の合計 18 とが 等しいことが,一般的法則の主張することである

以下の部分は Bridge World の英語訳では 削除されたのだが,お読みいただけば分かるように,削除は大間違いなので,フランス語から復元する (以下 枠内部分は同様)。

 これらの着想をさらに正確に定着させるために,1956 年世界選手権から もうひとつハンド例 (No. 111) を借りて来よう。
North
J 8 7Dealer: East
Q J 7 5Both Vul.
A 10 6 5
9 2
WestEast
Q 2 A K 6 5 4
10 9 6
K Q 8 7 3 2 J 4
Q 10 5 A 8 7 6 4
South
10 9 3
A K 8 4 3 2
9
K J 3

 閉室では,フランス・チャンピオン Bacherich が West で 4プレイする。
 K がこの位置にあるので,オポで1トリック,1トリックで2トリック取られることは やむを得ず, 41ダウンとなる。
 開室では,South が競り合って 4 でコントラクトを買う。で3トリック,で1トリックを負けるので,9トリックを取り, こちらも 1ダウンとなる。
 このディールでは,合計トリック数は 9 + 9 = 18 であり,これは 切り札の合計枚数 (E-W 8 枚 + N-S 10 枚 = 18 枚) に一致する。
 我々が たった今 述べたばかりの 合計トリック数の法則は,ちょっと見には まちがい無く 十分に人の意表を衝くだろう。だが ディールを詳しく分析すれば,よく理解できるはずである。
 1番目のディールで E-W は,どちらのオポが K を持っているか 知らなかった。 もしK が South の手にあれば,West は もう1トリック余分に取れたはずである。 ところが その場合には,4 のデクである North の ルーザーが1から2になる。このように,双方が獲得するトリック数は,重要なカードが右オポ/左オポのどちらにあるかによって変わるけれども,双方が取るトリック数の合計は 変わらない。
 2番目のディール では,West が 4 をビッドして,切り札が オポの手に 4-1 に分かれていたとは,運が悪かったと言える。
North
J 8 7Dealer: East
Q J 7 5Both Vul.
A 10 6
9 3 2
WestEast
Q 2 A K 6 5 4
10 9 6
K Q 8 7 3 2 J 4
Q 10 5 A 8 7 6 4
South
10 9 3
A K 8 4 3 2
9 5
K J

 それでは,の分かれを 3-2 に変えて,その埋め合わせを つけることにしてみよう (右)。
 この場合 West は のルーザーが1トリック減るので,10 トリックを取る。
 4 のデク South は,新たに のルーザー1トリックが発生するので,8トリックしか取れない。
 結局 この場合にも, 双方が取るそれぞれのトリック数を正確に予想することはできないけれども,合計トリック数は どちらの場合にも不変である。
 こうして,合計トリック数を問題にするときには,古典的ハンド評価が解決不能な 2大不確定要素 (フィネスが 成功するか? / スートの分かれが 具合良いか?) が消滅する。
 以上の考察に導かれて,筆者は合計トリック数の法則を発見するに到った。この考察は 法則のメカニズムの説明には なっているが,それでも,満足のゆく形でこれを正当化するためには,精密な統計的考察が欠かせない。

3. 合計トリック数の法則の精度

 そこで我々は,1953~1963 年の 10 回の世界選手権のデータを調べてみた。調べたのは,2つのテーブルの片方で N-S が或るスート・コントラクトをプレイし,他方のテーブルで 同じディールを E-W が別のスート・コントラクトをプレイした全てのディールである。これらのディールの数は 340 である。得られた結果は,次の通りである:この表では,(合計トリック数) の (切り札の合計枚数) からの ずれ (上段) に対して 発生ディール数 (下段) を示す。
−3−2−10+1+2+3+4+5
3206511394301221
 はじめに気がつくのは,トリック数の平均値が,法則が指示する数値より僅かに大きいことである。正確には,0.275 トリック,すなわち 1/4 トリックほど大きい
 また,法則の精度について言えば,1/3 [=113/340] の場合に ずれがビッタリ 0 であり,80% (65+113+94=272 ディール) の場合に ±1 トリックである。ずれの平均は,0.93 トリックである。
 この問題に明るくない読者には,このずれは かなり大きく見えるかも知れない。 だが,実際には このずれは,見事と言ってよいほど 小さいのである。ここで考えなければならないのは,実際に取れるトリック数がいくつかということが あらかじめ決まっているわけではなく,カード・プレイに依存する … ということである。 そこには,運の要素が入る。
 そこで 我々は,1953~1959 年の全てのディールを調べた。今度は,1つのディールが,同じコントラクト (代, 切り札, デクがすべて同じ) により2つの異なるテーブルでプレイされた結果を比較した。その結果 得られた平均のずれは 0.52 トリックであった。言い換えると,精度 0.5 トリックでトリック数を予言できる法則は,厳密に完全であると見なすことができる。したがって,この法則の持つ本来の誤差は [0.93 − 0.52 =] 0.40 トリックに過ぎない。
 [こうして,] 統計を基にした詳細な分析は,我々の結論を検証した。この結果は とくに,もしもカードが最善の方針に従ってプレイされれば,すなわち,手を開いてプレイされれば,合計トリック数の法則が 半分以上の場合について 厳密に正しい予言を行なうことを示す。さらに,合計トリック数は 実際に取れるトリック数よりも しばしば 少ない。これは,デクが味方の2つのハンドを知っているということが,かなり有利に働くためである。手を開いてプレイすると仮定すると,合計トリック数は,基本公式が与える理論値に近づく。追加の 0.275 トリックは,ダミーとともにプレイすることによる特典である。

4. 合計トリック数の法則の補正

 我々は,合計トリック数を計算するための極めて単純で,かつ平均的な場合に成り立つ公式 [英:大多数の場合に非常に正確な公式] を示した。だが,場合によっては HCP と DP の計算に補正を加えるのと同様に,さらに正確な研究は,合計トリック数も しばしば 3つの付属的要因により影響されることを示す。
 (1) « ダブルフィット » の存在:双方が 2+ スートに 8+ 枚のカードを持つ状況。
 これが発生すると,合計トリック数は,しばしば 一般公式が与える数字より1トリック大きくなる。サイド・スートが 8枚ではなくて 7-6 の分かれの場合には,公式に従うことが 非常に多い。 ダブル・フィットは 最大の付属的要因である。
 (2) 切り札の絵札の所在:
 双方ともが 切り札の絵札を全て握っている場合には,合計トリック数は しばしば 平均値を越える。切り札の絵札を相手方が持っている場合には,時々 平均値より小さくなる。いずれにせよ,この要因の重要性は,人が何となく考えるよりは 間違い無く遥かに小さい。これによる違いが発生するのは 限られた場合だけであり,しかも 例外的な場合に1トリックを超えるに過ぎない。
 こういう事情があるので,計算を改良する実用公式を発見することは不可能であり,限定された場合について この要因を考慮に入れるほかは無いと思われる。なお この項目に関連して注意しておくと,絵札として持っていると重要なのは,Ace と 10 よりは 中堅の絵札 King, Queen, Jack である。
 (3) サイド・スートのカードの分かれ:
 ここまでのところ,カードが相手方と味方にどのように分かれるかに注目してきたが, 実際には,サイド・スートのカードが 同一陣営の2人にどのように分かれるかも, 重要性が劣るとは言え,完全に無視することはできない。[とは言え,では無視 (笑)]

一般的な言い方をすれば, サイド・スートが2人の手に 不規則に配られていれば, 合計トリック数は,平均値を僅かに上回る。規則的に配られていれば,下回る。
(A)
North6322
South5332
────────
11654
  
(B)
North6142
South5512
────────
11654

 たとえば,右のようなディールで N-S が で,E-W が でプレイする場合,サイドスートの分かれが (B) の場合の方が,(A) の場合より 合計トリック数の平均が僅かながら大きい。

5. 絵札による安全性とカード分布による安全性

合計トリック数の法則からは,非常に多くの実用的な結果が導かれる。その1番目 (そして この後に出て来るものはすべて これに依存する) は, 2種類の安全性を区別すべきだと言うことである:この2種類を 我々は,(1) "絵札による安全性”, (2) "カード分布による安全性" と呼ぶことにする。
 はじめに,オークションが (A) のように進んだ場合を考えよう。
Case (A)
WestNorthEastSouth
Pass 1 Pass 3
  
Case (B)
WestNorthEastSouth
1 1 3 3

 North と South の手は,カード分布という点では 月並みかもしれない ── たとえば,2人とも切り札が4枚とか。しかし,そういう場合には,必ず HCP の強さを持っている;間違い無く 最低 23 HCP はあるだろう。ビッドしたコントラクトが成功するとすれば,それは この HCP の力に依る。このような場合,我々は,3 というビッドは 絵札の安全性により保証されている ・・・ と言う。
 次に,(B) のようなオークションを考えよう。
 North のオーバーコールは,5+ 枚の切り札を示す。これに対して South は,East-West のコントラクト 3 を妨害するために,良いフィットと弱い HCP で 3 をビッドすることがあり得る。
  1. この 3 オーバーコールは,1ダウンにとどまるのであれば, E-W の 3 がメイクする場合,僅かに得になることが多い。その場合,このディールの合計トリック数は 8+9=17 である。
  2. もちろん,3 も 3 も どちらもダウンする場合には,3 をビッドするのは損である。その場合,合計トリック数は 8+8=16 である。
  3. 最後に,3 と 3 がどちらもメイクする場合には,このオーバーコールは 大きな得である。その場合,合計トリック数は 9+9=18 である。
 以上から,合計トリック数 17 以上が保証されていれば,3 をビッドして競り合うのが得であることが分かる。このような場合,競り合いのビッドが カード分布の安全性により保護されていると言う。
こうして 我々は,合計トリック数の法則が 競り合いのビッドの問題に どのような科学的解決を与えるかを理解した。もしも切り札の合計枚数が 18 枚ならば, 合計トリック数が 18 トリックであるのがもっともらしいと予想でき,したがって,3 まで競り合える。もしも 16 枚しか無ければ, 2を越えてはならない。 切り札 17 枚の場合は,ほとんど構わず 3 まで競り合うか, あるいは 2越えないかの境界である。

6. 7 から 12 までの規則

 最も微妙な実際上の問題は,切り札の合計枚数を決めることである。逆説的であるが,オープン側よりもディフェンダ側の方が,この計算は やりやすいことが多い。たとえば, 信頼できるパートナーが 相手側のメジャー・オープンにテイクアウト・ダブルを掛けたとき,切り札の合計枚数は 通常 計算できる。
 多くの場合,プレイヤーは 味方が合計何枚の切り札を持っているかを正確に知ることができるが,オポの枚数は分からない。とは言え,味方の枚数が分かっているだけでも,合計トリックの法則を ほとんど完全に応用できるのである。
 たとえば,先ほどのビッド経過 (B) を考えよう (右に再掲)。
Case (B)
WestNorthEastSouth
1 1 3 3

 (1) ここで,South が を4枚持っていると仮定する。
 1 オーバーコールしたパートナー North は 5+ 枚の を持つと期待できる。すると N-S の切り札は 9+ 枚である。
 このとき,E-W は 2人合わせて 26 枚のうち 高々 13−9=4枚の を持つことになり,3スート が合計 22 枚以上であることが分かる。[22÷3=7.33 であるから,3スートとも7枚ということはあり得ず], 最長スートは 8枚以上であり,E-W の切り札は 8+ 枚である。こうして,切り札の合計枚数が 少なくとも 9+8=17 枚であることが分かる。それならば,3 をビッドするほうが得になるか, あるいは 最悪でもトントンになりそうである。
 (2) 同様の分析を South の が 3枚の場合について行なうと,状況は全く異なることが分かる。この場合 E-W ペアには 切り札が 8枚しか無い可能性が高い。合計トリック数として 18 を得るには,E-W が 切り札を 10 枚持つ必要があり,その可能性は 0 ではないが,非常に低い。このディールの合計トリックは 16 ないし 17 しか無いと考えるのが妥当であり,したがって,2 の代を越えてはならない。

 双方の達成可能なコントラクトの代をさまざまに変えて,どんな問題が生ずるかを1つづつ丁寧に調べていくと,それらの全ての場合について成り立つ実用的な公式が成り立つことが分かる。これは,次のような 単純な一般規則にまとめられる:
 『カードの分布による安全性は,パートナーと2人で持つ切り札の枚数の代までビッドすることを許す。
 たとえば,味方の切り札が2人合わせて8枚ならば,実際上 2の代まで (8トリックまで) 安全に競り合うことができる。9枚ならば,3 の代 (9トリック) まで,10 枚ならば,4 の代 (10 トリック) まで。これらのコントラクトをメイクして得点を挙げるか,あるいは そうでなくとも,相手の競り合いに対して有効にカバーする良い機会である
 この規則は,スモール・スラムまでの全ての代の競り合いについて成り立つ。そういう理由で,我々は これを 「7から 12 までの規則」と呼ぶ。この規則の唯一の例外は,マイナー・スートを切り札として 8枚で3の代に上がることが,時として 有利なことである。

 この規則は,次の2つの条件下で使うことを想定している:
 1°: 2つのハンドの HCP の強さは,掛け離れていては ならない。できることなら 17~23 HCP の範囲,やむをえなければ [英:possibly] 15~25 の範囲。
 2°: バルネラビリティは 同じ または 有利であることを要する。バルネラビリティが不利な場合には (味方 バル,相手 ノンバル),HCP が相手に 少なくとも等しい または ほぼ等しいことを要する。

7. ノートランプでの合計トリック数

 意外に思う人が多いかも知れないが,1つのディールが 片方のテーブルではスート・コントラクトで,他方のテーブルでは ノートランプでプレイされることは 珍しくない。そのような場合に,合計トリック数を予測する公式を見つけられるだろうか?
 我々が見つけることのできた範囲で最も正確な公式を表にまとめる。
切り札枚数 / 短いスート012 または 3
9171615
8161514
7151413
6141312

この表の左側の列は,スート側の切り札の枚数を意味する。第1行は,スート側のサイド・スートで一番短いスートの枚数である。両者の交点に,最も可能性の高い合計トリック数を記入した。
 ご覧のように,切り札が1枚増えるごとに 合計トリック数は1増える。さらに, スート側がシングルトン,ボイドを持つ場合にも,合計トリック数は増える。この流儀は,[当時のフランスでの?] ハンド評価で,スートでプレイするとき シングルトンに +1 点を加え,ノートランプでプレイするとき シングルトンを −1 点減点しているのとよく合っている。言い換えると,一般に,シングルトン または ボイドを持つ側は ノートランプに対抗するには防戦力が弱く,その反対にスート・コントラクトをプレイする場合には,攻撃力が強い。この両方の因子が 合計トリック数を上げるように働く。
 このことから,重要な結果を結論できる:すなわち,ノートランプ・オーバーコールに競り合うのは,一般にシングルトン または ボイドがある場合に限り 得策である。たとえば,5431 の手で,5枚のスートにパートナーの3枚のサポートがあるとするならば,オポが 1NT をメイクする場合にも 2 をビッドして得することはあり得る。
North
Q J 7 5Dealer: North
J 6 2Vul. None
3
A J 9 8 7
WestEast
K 10 8 2 4
10 7 4 K Q 9 5
K 8 6 Q 10 5 4 2
10 3 Q 4 2
South
A 9 6
A 8 3
A J 9 7
K 6 5

 この法則を 次のディールで例示しよう。これは,1959 年世界選手権の ディール No. 49 である。
 開室では,South が 3NT をプレイして 9 トリック取る (400点)。閉室では,East が やや楽観的に介入して 2 をビッドするが,South にダブルを掛けられて 2ダウンする (−300点)。
 このケースは,スート側の切り札が 3+5=8 枚であり,East の シングルトンであるから,先ほどの表が与える合計トリック数は 15 トリックである。したがって,カード分布による安全性から,スート側は2の代のビッドを保証される。
   [解説がほとんど無いハンド例は もう1つあるが,省略]
 最後の問題は:ノートランプに対する合計トリック数の公式の精度や如何に?
 予想と現実のずれの計算結果は,73 ディールで 77 トリック,すなわち 1ディール当たり 1.05 トリックとなった。これは,スートの場合の値 (0.93) より 僅かに大きい。だが,経験が教えるところによれば,ノートランプのカード・プレイは,スートよりも偶然に支配される要素が大きい。
 そこで 今度は,同一のディールが2つのテーブルで どちらもノートランプでプレイされた場合を調べてみた。その結果,実際のトリック数には 平均して 0.90 トリックのばらつき (スートの場合には 0.52 トリックだった) があることが分かった。この結果から,ノートランプの場合の合計トリック数の法則は,少なくとも スートの場合と同程度の値打ちを持つと考えられる。

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