前へ次へオリジナル

このところのあれこれから著作物について考えた事

(2014/03/20 03:00 投稿)

最初に:
このエントリの内容は、CardWirth周辺の話に特化しています。
著作権、或いは著作権法について広く知識を得たい方は、この辺りからリンクを辿ってみる事をお勧めします。



それでは本題。

CardWirth(以下「CW」と略します)界隈は、著作権絡みについては割と厳しい方です。
成立がかなり昔だという事情もあるかもしれません。
作り手の許可がある事を確認してから行動し、分からない場合は問い合わせ、断られたり回答が無ければ諦めるのがあるべき姿勢だという昔ながらの雰囲気が、今まで保たれてきました。

一方、作品が消失したり、作者と連絡が取れなくなった際に様々な問題が起こり得る事は、以前から考えられていたようです。
作品を自分で管理できなくなった場合を考慮して規約を作成する製作者の方が以前より増えたと感じますし、消失作品の復活を目指したOBギルドや音信不通時を想定した「if」を始めとする規約テンプレート企画など対応する動きもありました。ただ、残念ながら現時点ではCWの標準と言えるほどには広まっていません。

そんな現状の中、公式ファンサイト併設の掲示板の最近の投稿を見て、色々考えさせられました。
具体的に言うと、6番16番18番のトピックスです。


●作り手が活動停止し、音信不通になったら……

音信不通時に起きる問題は、作者の意思が確認できない事によるものが大きいと思います。

分からないから自粛したものが実際は問題ないかもしれないし、逆に分からないから見切り発車というような事例が発生する恐れもあります。
良く言われるシナリオや素材の消失問題にしても、事前に作者から再配布許可の意思や条件等が明らかにされていれば、今に残った作品があったかもしれません。
また、16番のトピックで話題になったような使用時報告必須の条件で配布されている素材は、報告できなくなった時どうするのかの規定が無いと、入手可能なのに使えない残念な状態になってしまいます。

現役で活動している間は「分からない事は問い合わせて下さい」でいいでしょうが、人生何があるか分かりません。不測の事態によって突然活動停止を余儀なくされたり、何かがきっかけでもう一切CWには触りたくない今後は絶対に関わらないという心理状況になるかもしれません。
活動停止した後についての意思表示は、通常の活動ができているうちに行うのがベターです。作る側が自分の作品をどう扱われたいにせよ、それを形にして残した方が、自作品を望む形で扱ってもらえる可能性が高まるだろうと思います。

……と、そんな事を考えたのをきっかけに、音信不通用テンプレートを作ろうと思い立ちました。ここの話は、「音信不通用テンプレートを作成しよう計画・準備編」に続きます。


●ネット上の素材における権利切れ・権利放棄

どちらも確認し辛いのが困りものです。

幸いCWではまだ見ませんが、ご自由にお使い下さいとされているものが本人の作品でない例などいくらでもあります。問題のない配布だと確信できるまでが面倒な場合もありそうです。

権利切れの方は、そもそも今ネットで活動している人の死後50年(※)が分かるのか疑問です。ネットでしか知らない人の生死確認が、果たしてできるでしょうか。人間の寿命を考えると作品公開から180年程経てばほぼ確実に死亡していると推定できるかもしれませんが……
どなたか掲示板で書いておられたように、ネット普及以後に制作されたと考えられる作品は、今現在権利切れは無さそうですね。


●作者につながるものを一切排除した素材配布、という形

18番のトピックをきっかけに、ハンドルネームや入手場所に関する情報など作者につながるものを一切出さない事を利用規約で謳っている素材を初めて目にしました。CWで同種の規約を見た事はありませんが、どのように配布するかは作者の自由であり、今後自分は一切表に出たくないという方が出てくる可能性はあるでしょう。

作者につながるルートが閉ざされているのは音信不通と似たところもありますが、このケースの特殊さは、作者の活動内容や自作品の扱いについての考え方を第三者が確認するのが極めて困難な点にあります。
そして、その事によって発生するリスクは、利用者が全て負わねばなりません。

私がこんな事を考えるのは、たぶん、以前にそこそこ長く参加していたゲーム(念のためですがCWではありません)が、一部ユーザーの問題行動によって性善説が崩壊している場所だったからではないかと思います。
私自身、自作だからと作者名を省略していたら、無断転載を疑われた事があります。

そんなこんなで自分は万一が怖くて手を出せないと思いましたが、恐らく警戒し過ぎなのでしょう。
ただ、もし将来CWにそのような素材が現れた時、利用を検討する方はある程度リスクがある事を一応は考えてみて、覚悟ができてから使う方が良いのじゃないかとは思います。

(※補足:CW愛護協会の方針は著作者情報は必ず書く、しかし作者が匿名希望ならその意思を尊重して匿名OKという事らしいです。入手場所も含め一切何も書かない事に対する見解は現時点で不明、恐らく自己責任という事になるでしょう。)


※※※
こんなところです。
著作権関連に厳しいCWだけに、これまでこの手の事はあまり考えずに済んでいました。
今後もずっと考えずに済むために、今考える……

何か矛盾していますが、この辺で〆。




(3/22追記)
読み返してみると上の文章で自分が言いたかった事が伝わるか疑問を感じましたので、少し追記します。追記の対象は、3つのテーマのうち後ろ2つです。

これらは、○○だから怪しいという話をしようとしているわけではありません。
ネット上で素材として提供されている作品の中には配布者に権利が無いものも混じっていて、それを利用者が絶対確実に見分ける方法は無いという前提のもと、
というような事を言いたかった……
や、最初からそう書けば良かったのか;

それより、言いたかった事をまとめ直して読んでみると、なぜ今時こんな当たり前すぎる事を書いているのかという感じなのが。最初書く時何も感じなかったという事は、CWでの活動に戻って割と時間が経ち、周囲の雰囲気に慣らされてきているのかもしれません。

そう、幸いCW周辺にはいまだ性善説を信じていられる雰囲気が残っており、前述のような心配を身近なものとして感じた事はありません。今後もこの雰囲気が残っていくことを願ってやみません。
この願望を実現するために何か、と思いますが。自分個人としてできる事は、とにかく利用規約を守るぐらいしか無いですかねー。

※※※
イラストや写真は画像検索である程度調べられますが、音声や楽曲の素材のオリジナル確認はどうしたら良いのか。絵で言う絵柄のようなものが音の作品にもあるのではと思いますが、そちらの分野は全く素人なので分かる自信が無いです。

[▲上へ]

(※)「〜死後50年」
この記事を書いた2014年には、著作物の保護期間は原則として著作者の生存中及び没後50年間でしたが、TPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)が2018年12月30日に発効したことにより、没後50年の部分が70年に延長されました。
今後も変わる可能性があります。最新の情報を確認してください。

前へ次へオリジナル