ニホンアマガエル

うちの子

[葉っぱの上の写真]  うちの子(笑)はニホンアマガエルで、性別は鳴かないのでたぶん女の子。 体長は約2.5cm。近所の神社の裏の草むらでつかまえてきました。もう1匹、変態 したての子ガエルもつかまえてきましたが、この子も成長してもう立派なオトナです。
 写真では、白っぽい地に黒っぽい模様が入っています。周囲の明るさなどに応じて、けっこう色々な体色に変化するんですもんねぇ。実際に飼ってみるまで、知りませんでした。でも、自然下ではすごくきれいな緑色なんですが、飼育してしばらくすると、緑色にはならなくなりました;_;なぜ〜。薄緑くらいにはなるんですけどねぇ。

分類

 ニホンアマガエル(Japanese tree frog)の学名はHyla japonica。アマガエル科アマガエル属のカエルは、日本にはもう一種、ハロウェルアマガエル(Hyla hallowellii)が沖縄に分布している。
 ニホンアマガエルは、北海道から九州まで広く分布し、個体数も非常に多い。

注意

[!]ニホンアマガエルの皮膚は有毒である。粘液が傷口や目などに入るとかなり痛むらしい。ニホンアマガエルに触った後は、必ず手を洗うように。もっとも、カエルは不必要に触るべきではない(カエルに強いストレスを与えることになる)。また、ニホンアマガエルに限らず、動物に触った後に手を洗うのは「常識」であるし、さらに、万一、掃除の際などにカエルに触らなければならない時には、その前に手を洗う(人間の手は油などで汚れている)のも「常識」ではある。

飼い方

 ニホンアマガエルは樹上棲。いわゆる「Tree frog」と呼ばれるカエルである。比較的 乾燥した環境に適応しており、水場には産卵期以外は近づかないで、通常は草むら や低木の上などで生活している。このため、ケージもこういう生態に合わせる必要がある。
[ケージの写真] 私は、幅550mm×奥行き180mm×高さ320mmのアクリル製のケージを自作して使っている。ニホンアマガエルは小型なので、2匹を飼っても、この程度のケージで十分 狭くなく飼えている感じ。上面は1/3を網にして通気が良いようにしている(本当は下の方にも通気孔を付けた方がよいのだけど…)。また、前面の上下に、シール式の温度計を貼って温度をチェックしている。中には、植物を入れて生活の場にしてやる。私はシンゴニウムとネペンテス(ウツボカズラ)の鉢植えを入れている。プラスチック製の模造の植物でも良いのだけれども、植物に水を与えることで乾燥を防ぐことができるし、植物を育てる楽しみもあるので、やはり本物の植物がいい。
 水容器は、必ずしも必要ない。ただ、数日以上 世話ができない時などは、乾燥防止のために、水容器を置いておくと保険にはなるだろう。
 照明は20Wの蛍光灯を1本。タイマーを使って、1日に約12時間点灯するようにしている。しばらく「トルゥーライト」と呼ばれる、紫外線の多い蛍光灯を使ってみたこともあったが、植物の育ちが良くないのと、カエルがやや黒っぽくなるような気がしたので、今はNationalの植物育成用蛍光灯「ホモルクス(FL20S-PG)」というのを使っている。
 どうも、ニホンアマガエルは日光浴をするようで、ライトを点灯すると、ライトのすぐ下の葉っぱの上に登ってくるのをよく見かけた。このため照明の質については、改善の余地があるかもしれない。海外のイエアメガエルの飼い方の本などでも、日光浴用のライトの設置をすすめている本があったし…もしかしたら、ソバージュネコメアメガエルみたいに、ホットスポットも設けた方がいいのかもしれない。
 温度は、部屋のエアコンで冬は25℃、夏は28℃くらいに設定。国産のカエルなので、普通の温度でOKのはず。冬眠は今のところさせていない。
 日常の世話は、まず、毎日の植物への水やり。霧ふき で葉に水をかけてやるのも、カエルへの水の供給になる。あとは掃除。葉っぱの上のフンなどは、鉢の土に入れてやれば肥料にもなる。ケージはタマに水洗いしてきれいにしてやる。私のケージは、前面のアクリル板がまるごと外せるようにしてあるので、掃除はそれほど面倒ではない。
 寿命は不明だが、両生類の飼育で有名な、池田純さんの8年11か月の飼育記録がある。他の種のカエルと同様に10年以上の飼育も可能かもしれない。

エサ

[子ガエル] これまでに、ショウジョウバエとフタホシコオロギをエサに使用してました。
 ショウジョウバエは、特に子ガエルのエサには最適なようだが、オトナのニホンアマガエルのエサにするには、ちょっと小さすぎて満腹にさせるだけの量を確保するのが大変です。ショウジョウバエの飼い方に関しては、後の章にまとめておきました。(右の写真:変態したてのニホンアマガエルの子ガエル。まだ目元にオタマジャクシの時の雰囲気を残している。かわい〜。)
 フタホシコオロギの飼い方に関しては、ベルツノガエルのページの方にあります。ニホンアマガエルに使えるサイズのを用意するなら、自分で増やす必要があります。でも、メスの交尾をすませたコオロギを買ってきて、産卵させる(数週にわたって卵を産みつづける)という方法を使うと、そんなに面倒ではない。
 他に、釣りエサとして売られている「サシ」(ウジ:イエバエの幼虫)にチーズを与えて、室温に放置しておくと成虫のハエになるので、与えることができる。しかし、イエバエは扱いが やっかい(よく飛ぶ!)なので、使いにくい。でもニホンアマガエルは、ハエは大好きみたい。なお、サシそのものは、食べたけれども消化できずに吐き出してしまいました。絶対、与えないように。
 コオロギは、できれば爬虫両生類用のビタミン/カルシウム剤の粉末をまぶして与えた方がよいのは、ベルツノの場合と同じ。ショウジョウバエの場合は、これがやりにくい。
 エサの量は…これが大食い(^^;。与えれば、与えただけ食べるようなので、太りすぎに注意して、調節したほうがいいみたい。今は1日おきにコオロギを2〜3匹程度。これでもちょっと多いような感じ。

ショウジョウバエの飼い方

 ショウジョウバエ(Drosophila)は、小型で、1世代の期間が短い(約2週間)という利点から、古くから遺伝研究の材料として、生物学で多用されてきました。飼育方法も確立されています。エサ用として、飛べない品種(フライトレス,ウィングレスなど)が売られていて、これを使うと便利とのこと。でも、アマガエルは飛ぶ虫の方が好きなようなので…
 飼い方は、 などが参考になる。
 私がやった方法は、千石先生の「爬虫両生類飼育図鑑」のやり方。バナナをつぶして、ドライイーストを加えたものを、2Lのペットボトルの口を切ったものの底に入れて、数日放置しておくと、野生のショウジョウバエが集まってくるので、目の細かい網をかぶせてつかまえる。吸虫管で集めて、培地を入れた適当な容器に入れて飼う。培地は
 寒天粉末    2g (普通のスーパーなどで売っている)
 てんさい糖  10g (さとうきび から作った砂糖でない方が良いらしい)
 コーンミール 10g (とうもろこし の粉。製菓材料の店で売っている)
 水      100mL
 ―――――――――――――――――――――――――――――――
  ↓よくまぜて、数分煮る。
 冷める前に、容器に分注する。冷めたら、ドライイーストを数粒加える。
という組成のを使った。製菓用のデジタルの はかり が¥5,000くらいで売られているので、これを使うと便利。
 容器には、脱脂綿を丸めたもので栓をしておく。高温(25℃以上)だと、増えにくいようなので、夏期などは涼しめのところを選んだ方がよいだろう。

文献

 ニホンアマガエルの飼い方を詳しく書いてある本は、私は見つけることができなかった。千石先生の「爬虫両生類飼育図鑑」で、「飼いやすく、カエル飼育の入門種としてすすめられる」などと書いてあったのが唯一の情報か。他に、何冊かの本でも似たような記述があったが、具体的な情報がない。こっちは詳しい飼い方を知りたいのにぃ〜。

「爬虫両生類飼育図鑑」で、「ソ連のロケットに乗った」と書かれていますが、

Izumi-Kurotani A, et al.,
Frog experiment onboard space station Mir.
Adv Space Biol Med. 1997 Jan 1; 6: 193-211.
という論文で、実験結果が報告されています。ロシアのミール宇宙ステーションに8日間に渡って滞在して、無重力下での行動を観察してます。また、地球上に帰ってきてからの、様子なども観察したみたい。
 また、
Naitoh T, et al.
Amphibian amplexus in microgravity.
Zoolog Sci. 1995 Feb 1; 12(1): 113-116.
という論文では、北九州のスペースワールド(アミューズメントパークですな)のフリーフォールに乗っけられて、無重量状態での抱接の様子を観察しています。かわいそうに…(^^;

関連リンク

 さすがに海外でニホンアマガエルを飼われている方はいないようですね(^^;
生きた蛙の観察
[日本語]千崎さんのページ蛙の棚・蜥蜴の尻尾つきより。ニホンアマガエル、イエアメガエル、ヒメツメガエルの飼育情報がある。
あまがえる日記
[日本語]かわよし さんのページ
趣味のページ-あまがえる
[日本語]藤山正昭さんのページのアマガエル写真集。ほかに、アマガエル2アマガエル3というページも。
雨蛙
[日本語]山本さんのホームページかえるの世界より。
ニホンアマガエル他
[日本語]MarkさんReptiles & Amphibians Pageより
研究室のペット
[日本語]北海道大学大学院 地球環境科学研究科 生態環境科学専攻 生態遺伝学講座で飼われている、ニホンアマガエルなど。
アマガエル
[日本語]北星学園新札幌高等学校のページ夏の野幌森林公園より。
アマガエル
[日本語]奈良教育大学自然環境教育センター発行の冊子「身近なカエルとヘビ」より
附小の自然39
[日本語]奈良教育大学附属小学校のページより
青いアマガエル
[日本語]伊丹市昆虫館のページより、色彩変異のニホンアマガエル
アマガエルの体色変化
[日本語]岡山大学教育学部理科教室 動物研のページ。アマガエルを使って両生類の陸上適応を研究している

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