MIザウルスに大きなテキストファイルを転送するには〜その後

1998/11/04 (最終更新:2005/08/28 15:27)
◎ ザウルスはデータベースマシン

ザウルスには、PA 電子手帳の頃から受け継がれている設計思想があります。 そのひとつに、 各データは小さい項目を複数持ったデータベースであり、 その上で分類や整理ができなければならない、 というものがあります。

住所録やスケジューラはもちろんのこと、レポートやフォトメモリーまで、 項目とインデックスを持った一連のデータベースとして常に、 内部では管理されています。

電子手帳からザウルスになり、扱うデータの規模や内容が変化しても、 基本的な仕組みは変わっていません。 電子手帳という閉じた世界の商品であるがゆえに、 通信インターフェースさえ決めてしまえば、内部のデータ構造は自由なのです。

メモリ容量が小さかった時代、小さなデータを効率よく格納するために、
電池寿命と小型化でCPUが遅かった時代、 少しでも表示切替と検索を速くするために、
画面が小さく表示が限られていた時代、少しでも効率よい描画を行うために、
このような構造が生み出されたのでしょう。

◎ 構造を持たないデータの世界

世の中には、構造を持たないデータも多数存在します。 その代表例は、今まさに世界規模で拡張を続けるインターネットであり、 多種さまざまな情報が無秩序に並べられています。

そんな html に記載された文字列も、 強力な検索エンジンがあればキーワードひとつで探し出してくれます。 有益なものから細かいものまで、冗長性は多いものの ありとあらゆるものを無秩序に見つけ出してくれるのです。

機種間を超える高い互換性があればこそ、構造を持たない情報ながら、 世界規模の実に巨大なデータベースフォルダとして、 情報を参照することができるのです。

◎ OSとテキストデータ

パソコンの世界では、きちんとしたデータベースを作らず、 このような無秩序な構造のまま情報を扱うケースが少なくありません。

これは今のパソコン用 OS が、UNIX の影響を強く受けているからです。

もともと UNIX では、OS としてファイルシステムにはデータ構造の情報を定めず、 テキストだろうがバイナリだろうが、単なるバイトイメージとしてのみ 扱うことができました。 ファイル内容はアプリケーションの判断に任せて、 OS はその構造(レコード)にまでは関与しません。

つまり OS で標準のデータフォーマットというものが存在しません。 各アプリケーションが独自にバイナリデータの構造を決めてしまっては 互換性が取れなくなります。 そこで、各ファイルは人間がそのまま読める文字のみのデータとして記述し、 各ツールも人間が読める文字データのまま取り扱いを行うという、 独自の文化が広まり定着しました。

これが、テキストファイル(プレーンテキスト)と呼ばれるもので、 改行コードや漢字コードといったごくわずかな(ツールで吸収できる程度の) 違いを除けば、異なる機種 OS 間でも、非常に高いデータ互換性を保っています。

◎ 電子手帳かパソコンか

テキストデータは取り扱いがきわめて簡単なので、 実にさまざまな場所で使われています。

そんな、パソコンにとってはごく当たり前のデータを、 ザウルスはうまく扱うことができません。 本当にこれまでできませんでした。

MIザウルスになって、 やっとテキストファイルを標準で転送できるようになりました。 しかしそれはあくまで内蔵機能のデータベースの1データとして 組み込まれるだけであり、単一のファイルとしては扱えません。

当然容量制限もあり、巨大なファイルは参照できません。 データベースマシンでプレーンテキストを扱うという矛盾から、 使い勝手もよくありませんでした。 (ちなみに PI ZAURUS の頃から通信記録を使うという技や、 ZauSH というパソコンのテキスト文化に挑戦する試みはいくつかありました)

マルチメディア機能をうたい、よりパソコンに近くなった機能を持ちつつも、 やはり根本的な思想がパソコンとは違うのです。

パソコンと電子手帳の深い溝、 それは
「汎用のデータを 不特定のアプリケーションが操作することを前提にしている」
のか、
「内蔵の固定ソフトから、 決まったデータのみ操作することを前提にしている」
のか、 この違いです。

◎ MOREソフト開発キット

1998年夏に、待望の MI Zaurus 用 MORE ソフト開発キット、 SZAB が一般発売になりました。

MORE ソフトというのは、MI Zaurus に後から組み込んで、 任意の機能を追加できるアプリケーションプログラムのことです。

MORE ソフトは市販されていることからもわかるように、 MIザウルス用のかなり本格的なアプリケーションを作ることができます。 この点において、 ユーザーに使わせることを前提に機能や能力が大幅に限定されていた PI ZAURUS 用の Addin とは大きく異なっています。 市販ソフトと同じクラスのものを、SZAB で作ることが出来るのです。

MORE ソフト開発キットが極めて高価(約10万円)なのも、 また開発キットの一般発売が行われるまでかなりの時間がかかったのも、 Zaurus 内部にまで深くかかわれる本格的なソフトが作れるからではないでしょうか。

専用ソフトの実行専用機であった Zaurus ながら、この MORE ソフトによって自由なアプリケーションを動かすことが 出来るようになります。 パソコンに比べると制約はありますが、MORE ソフトによるアプリケーションの可能性は、 決してパソコンに引けを取るものではありません。

◎ MIザウルスで長いテキストファイルを扱うには

久々なので、いつにもまして長い長い前置きを書いてしまいました。 ここからが本文です。お待たせしました。

テキストファイルの扱いにおいて、これまで制約が多すぎた MI Zaurus の環境が かなり変わりつつあります。

1998年夏に SZAB が一般発売されたのち、 ネット上から入手できる MORE ソフトが増えました。

まず、SHARP の SZAB サポートページ 上で、サンプルとして Zaurus で動くテキストエディタが公開されています。 ここでいきなり、MI Zaurus 上でテキストファイルを扱うツールが入手できてしまいます。 サイズ制限(約80Kbyte)はあっても、これまでとは比べ物にならない自由さといえます。

さらにL.Force's さんによって、まさに巨大なテキストファイルを扱える待望の MORE ソフト LfLogBrowser が公開されています。 比較的大きなテキストファイルでも、 Zaurus に転送しておけばこのソフトで 簡単に閲覧できるので、MI Zaurus を持ち運び可能な簡易テキストビュアとして 活用できます。(表示できるのは、最初の 100Kbyteまでのようです)

表示領域は、フォント最小時で横 半角80桁、全角40桁と、 パソコンのテキストデータを見るのにぴったりな文字量です。 必要に応じてフォントは拡大表示できますので、まさに待望のソフトです。

◎ MIザウルスで読書!

Zaurus掲示板アジュガ さんが 教えてくださった Zaurus の活用方法を元に、 ここで実例つきでいくつか紹介させていただきます。

その1・転送方法

  1. パソコンから Zaurus へデータを転送する環境は すでに整っているものとします。筆者はノートパソコン + IrDA による転送を使っています。Zaurus は Pocket MI-110M です。
  2. まずL.Force's 氏の LfLogBrowser を導入し、使えるようにしておきます。
  3. 転送したいテキストファイル(.txt)を用意します。ファイル名は拡張子を .doc に変更しておきます。
  4. MIザウルス付属のザウルスパワーコネクションで Explorer を開き、 拡張子を変更したテキストファイル *.doc を「パソコンデータ」 にドラッグして転送します。

その2・使い方

  1. LfLogBrowser を起動します。 本体メモリか Card なのかを選び、ファイルタイプを DOC にします。
  2. これで転送したファイル一覧が見えるので、選択すると読み出すことが出来ます。
  3. 使い方は、画面タッチでページ切り替え(上半分・下半分で方向が変わる)、 その他 [順送り]・[逆送り]や、上部のアイコンで操作できます。
  4. [機能]+[順送り]/[逆送り] で、フォントサイズを4段階に 変えられるのでぜひ覚えておきましょう。
  5. その他 [メニュー] から、しおり(ブックマーク) などの機能を使うことが出来ます。
  6. ここでの説明は v1.03 時のものなので、詳細は マニュアルを参照してください。

その3・読書しよう

  1. Zaurus でテキストを読む例として、読書があります。
  2. 青空文庫 を活用すると、 テキスト形式の作品も入手できますので、ぜひお試しください。
  3. 情報提供の アジュガ さん及び、月間モバイルプレス11月号、そして 青空文庫 製作の方々に感謝です。

◎ 巨大テキストファイルの今後

やはり、 検索機能つき、かつ扱えるファイルサイズの制限が無い ツールの登場が望まれるところでしょう。

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Hiroyuki Ogasawara <ho>