HUBをHUBに接続するには

Kengo Jinno
KHB04045@nifty.ne.jp
Apr. 4, 2003


0. 用語の定義

各用語は、次のような意味で使っています。

ケーブル
一般に「LANケーブル」として市販されているものを指す。 ケーブルの内部は、8本または4本の電線を束ねた構造になっている。
電線
ケーブル内部の1本ごとの導線を指す。 これを何本か束ねて両端に端子を付けたものがケーブル。
端子
ケーブルの両端にある、HUB/LANカードに差し込む部分(プラグ)。 あるいは、HUB/LANカード側の差し込まれる部分(ジャック)。
電極
端子内部の金属接点。 端子同士の各電極が接触して電流が流れ、情報が伝達される。
差込口
「HUB側の端子」とほぼ同意だが、より具体的な呼称。
ポート
「HUB側の端子」とほぼ同意だが、より抽象的な呼称。 たとえば、8ポートのHUBが9つの差込口を持っていることもある。

図中の凡例は、図1の通りです。 HUBには端子がいくつかありますが、説明図ではそのうちの一つだけを、電極や電線が見えるように拡大した表現にしています。 なお、パソコン側でLANカード(アダプタ)を使うのは前提条件なので、省略しています。

図1:図の凡例
[図の凡例]

1. 10BASE-Tの端子・ケーブル

電話のモジュラー端子に似たRJ-45型の端子で、電極が8つあります。 ケーブル内部の8本の電線は、両端でそれぞれの電極に接続されています。

10BASE-Tで実際に使われるのは、このうち4つの電線・電極だけです。 「どうせ使わないから」と、電線を4本に減らして、使われることのない電極には配線しないで、コストを下げているケーブルもあります。

各電極には役割(機能)が定められています。 "TX+" "TX-"が「データを送り出す電極」、"RX+" "RX-"が「データを受け取る電極」で、それぞれ1番 2番 3番 6番のいずれかの電極に割り当てられています。

ケーブルは、内部の電線の配線方法(両端の電極をどのように結んでいるか)によって、二種類あります。

ストレートケーブル
1番同士、2番同士…と、同じ番号の電極同士が真っ直ぐ(straight)に結ばれている。
クロスケーブル
1番と3番、2番と6番というように、交差(cross)して結ばれている。

両者は、ケーブル内部の結び方が違うだけで、見た目はほとんど違いがありません。 外見だけで識別するのは困難です。


2. パソコンをHUBに接続

ストレートケーブルを使います。

図2:パソコンをHUBに接続
[パソコンをHUBに接続]

パソコンからのデータは1番2番の電極から出て、HUBの1番2番の電極に入ります。 HUBからのデータは3番6番の電極から出て、パソコンの3番6番の電極に入ります。


3. パソコン同士の接続

クロスケーブルを使います。

図3:パソコン同士の接続
[パソコン同士の接続]

もしここにストレートケーブルを使った場合は、同じ番号の電極同士が接続されます。 1番 2番のTXから送り出されたデータは衝突し、3番 6番のRXには何もデータが来ません。 従って、通信はできません。


4. HUB同士の接続

パソコン同士の場合と同様に、クロスケーブルを使う方法があります。

図4:HUB同士をクロスケーブルで接続
[HUB同士をクロスケーブルで接続]

しかし、ストレートケーブルとクロスケーブルは見分けるのが難しく、間違って使うと正しく動作しません。 クロスケーブルを使わずに済むなら、その方が安全です。

ほとんどのHUBには、ストレートケーブルでHUB同士を接続できるようにするための特別な機能があります。 この機能を使うと、ある特定の差込口の内部結線がパソコン側と同じ状態、つまり「1番 2番がTX」「3番 6番がRX」になります。

その端子を外から(接続先の相手から)見ると、パソコンと全く同じです。 「(本当はHUBだけれども)パソコンをHUBに接続」するのと同じなので、ストレートケーブルを使います。

図5:アップリンク端子を使ってストレートケーブルで接続
[アップリンク端子を使ってストレートケーブルで接続]

このような、HUBと接続するための特別な端子を「アップリンク端子」と呼びます。


5. アップリンク端子の使い方

アップリンク端子は、HUBの機種によりさまざまですが、大きく分けて二種類あります。

5.1 差込口が二つある

あるポートに二つの差込口があり、一方が「パソコンとの接続用」、もう一方が「HUBとの接続用」になっています。 そのポートにパソコンを接続する場合は「パソコン用」の差込口に、HUBを接続する場合は「HUB用」の差込口にケーブルを挿し込みます。

HUBの内部では図6のような結線になっています。 二つの差込口は電気的に共用されているので、両方同時に使うことはできません。 一方を使う時には、もう一方を空きにしなければなりません。

図6:二つの差込口の結線
[二つの差込口の結線]

機種にもよりますが、番号が一番大きいポートに二つの差込口があり、並びの内側がパソコン用、外側がHUB用になっていることが多いようです。 8ポートHUBの場合、7番ポートの隣が8番ポートのパソコン用差込口、一番端が8番ポートのHUB用差込口、というパターンです。

5.2 スイッチで切り替える

最近は、こちらの方式を採用したHUBが増えているようです。

ある端子の内部の結線を、図6のどちらのタイプにするか切り替えるための、スイッチが付いています。 その端子にパソコンを接続する場合はスイッチを「パソコン用」側に、HUBを接続する場合は「HUB用」側に切り替えます。

切り替えの名称はいくつかありますが、表1のような表記が多いです。

表1:切り替えの名称
パソコンとの接続用HUBとの接続用
PCHUB
---Uplink
X||

5.3 確認方法

パソコン上でソフトを起動して正しく動作するかどうかで確認してもいいのですが、正しく動作しなかった場合にパソコン側のソフトや設定に問題があるのか、それともHUBの接続に問題があるのか、これだけでは判断が難しい場合があります。 簡単で確実なのは、HUBとLANカードに設けられている、LINKランプを見ることです。

パソコンとHUBがストレートケーブルで正しく接続されれば、LANカードのLINKランプとHUBの(その端子の)LINKランプが点灯します。 同様にHUB同士の接続でも、接続した双方の端子のLINKランプが点灯します。 点灯していなければ、ケーブルを間違えている、ケーブルの不良、差込口を間違えている、スイッチの切り替えを間違えている、などが考えられます。

スイッチの切り替えに悩むようなら、乱暴ではありますが、とにかくつないでみてランプが点灯する方に切り替える、という方法もあります。


6. 結線の仕組み

図6で、パソコンとの接続用の差込口では、HUBの内部でクロスした結線になっていることに注目してください。 実は、HUBの端子は基本的にすべて内部でクロスした結線になっています。 例外的にストレートの結線になっているのは、

だけで、ようするにアップリンク端子です。

表1の"X"や"||"の記号も、"X"は「HUBの内部でクロスしている」意味で、"||"は「HUBの内部でクロスしていない(ストレート)」意味です。

端子同士をケーブルで接続する時には「どこかでクロスした状態」にする必要があります。


7. 注意点


8. スイッチング・ハブについて

スイッチング・ハブの値下がりが進んでいます。 まだ価格差はありますが、スイッチング・ハブにはメリットが多いため、リピータ・ハブ(ダム・ハブ)は徐々に姿を消しつつあります。

このように、スイッチング・ハブを使うことで、前項までのような制限や注意事項は、ほぼクリアされます。 特に「AUTO MDI / MDI-X」機能は、(故障や断線などの原因を除いて)接続ミスを無くせるので、大変に便利です。