私説ヤマト論 その5


予定では今回パート3をするつもりでしたが、どうせ悪口ばかりになるのでやめにしておきます。その代わり、今回からパート1を1話ずつ取り上げて、それについてじっくりと書いていくことにしました。

第16話「ビーメラ星 地下牢の死刑囚」

なぜこの話を最初に持ってきたかというと、ヤマトの中で一話内に含まれるテーマが最もわかりやすいのがこの話だからです。他の話では内容の中にテーマが巧妙に隠されているのですが、、この話ではアナライザーのセリフとして、又、雪の行動となって直接表れてきています。
但し、ここでこの話を見たとき、アナライザーのセリフとして出てきた言葉に気をとられて、制作者の言いたいことを誤解してしまうのに気をつけなければなりません。
地下牢でアナライザーはこう言いました。「班長、僕が死ぬのはたかが鉄屑に帰るだけのことなのですか?・・僕にも命はあります。・・・人間に与えられた命も、神様からもらった命も、命の貴さにかわりはないはずですよ」・・たしかにいい言葉ですが、この言葉自体がこの回のテーマではありません。雪はこの言葉を聞いたとき、自分の過ちに気付きました。そしてアナライザーに抱きついていったのです。この時の雪の気持ちに偽りはなかったでしょう。・・が、しかし、古代達が助けに来たとき雪はどうしたでしょうか。
それまでアナライザーに抱きかかえられいてた彼女はアナライザーをふりはらい、古代の胸に飛び込んでいったのです。

ここに制作者達が作品に秘めている重大な皮肉があるのです。
・・・「人間ってそんなもんだ」・・
ヤマトの登場人物でそのことに気付いていたのはアナライザー一人でした。そしてたった一人でした。彼はあきらめの、又、自分を慰める2つの意味を込めて寂しげにこう言ったのです。
「そうだ。僕は人間じゃない、ロボットだ」


・・人間と同じ感情を持ちながら、こんな言葉を言わねばならなかったアナライザーの気持ちがわかりますか。こんな悲しい存在が他にあるでしょうか。
この前の「名セリフ集」の内容とダブりますが、もう一度ここで書いておきます。アナライザーは人間と同じですが、同じとは認められていないのです。ヤマトはここまでリアルに、そしてシビアに描いているのです。回りの人はそれだけ冷たいのです。もちろん僕もそうですし、あなたも例外ではないでしょう。アナライザーは1つの象徴としてヤマトに描かれているのです。わかっているひともいると思いますが、わからない人も気付こうとしないだけなのです。


・・現実問題はここらでおいておいて、もう少しヤマトの描写を見ていくとしましょう。
ヤマトに帰った雪は理性をとり戻し、あの時の自分がとった態度を恥じていました。しかし、今度同じ状況に出くわしても、又自分は同じ態度をとるであろうことが理解できていたのです。ですから、「あなたの気持ちはとっても嬉しいのよ。・・だけど・・」とつまってしまったのです。。もとよりアナライザーにはわかっていました。そして雪の正直な態度に少し救いを感じながら、しかし、改めて自分の立場を認識して最後に言いました。

「でも人を愛していけないことはないんでしょ」
これは何と悲しい言葉でしょう。愛されることはもう望まない。しかし、ただ愛することだけは許して欲しい。という切なる望みが込められているのです。
古代は一人ぼっちだというけれど、肉親がいないというだけなのです。しかし、アナライザーは本当にひとりぼっちなのです。唯一、佐渡先生のみがアナライザーを人間同様に扱ってくれているのがせめてもの救いでしょう。


この作品固有のテーマはこの位にしておいて、今度は第24話へとつながっていく作品全体を流れるテーマへの伏線を見てみることにします。
いつもは非好戦的な艦長が輸送船を攻撃する命令を出したことに疑問を持った人は多くいるでしょうが、これは作品構成上やむを得なかったことなのです。ですからそこには目をつぶって、その結果を見てください。ガミラス輸送船がビーメラ星に着陸する前後です。

雪らが人質となったとき、女王が機転をもって革命を押さえる、しかし、ガミラス艇の爆発により、本格的な暴動が始まる。・・ここには実に面白いヤマトの縮図があります。が、あまり書き尽くしたのでは皆さんか考える余地がなくなりますので、敢えてここでは書きません。じっくりと考えてみてください。
ほんとにこの話は割とわかりやすい回なので、少し注意をして見ていると実に面白いことに気付くでしょう
・・原稿が余ってしまった。いつものことながら、下書きもせずじかに書いていくので、マス目を合わすのに苦労するのだ・・。
ところで、今回はめずらしく西×の悪口が1つも出てこなかった。なぜなら、パート1について書いたからなのだ。ヤマトは何度考えてもパート1で終わるべきだったのだ。