私説ヤマト論 その6


第19話「宇宙の望郷 母の涙はわが涙」

さてさて、今回は19話。19話とサブタイトルを言われても、まだよくわからない人も「相原の発狂物語」といえばわかるでしょう。
この話も、ヤマトの中で重要な位置を占めるものですが、他の話のようにガミラスへの敵愾心を描いたものではなく、地球への慕情と自己との戦い、人間関係を描写した、ヤマトのなかでは少しユニークな話です。

地球をはるか後にして、不安定な目標を目指す旅の中で、当然起こるべき乗務員の葛藤を相原に代表させて表現していましたが、さすがは沖田艦長、鋼鉄の意志と信念を持った男の一部をちらりと見せてくれました。「信じようではないか、成功を。人生確かなものなどなにもない。人間一寸先は闇なのだ。かといって、いたずらに不安がっていては何もできん。不安を克服し、明日を信じる。それも我々に科せられた心の戦いなのだ。」・・
ここで、注意してほしいのは、ヤマト搭乗員の中でそのことを一番心配し、不安に思っていたのは、他ならぬ沖田艦長であることは当然です。しかし、艦長としてとるべき態度を心得、皆の不安を静めることのできる言葉をちゃんと用意していたのです。
これは沖田艦長の練られた思想、深い信念あってこそ出る言葉なのです。決して一朝一夕にして出るものではありません。それが出ているのは次のシーンです。
そう、古代のセリフ「艦長に報告する」、そして島のセリフ「地球へ戻るさ。イスカンダルで放射能除去装置を受け取ったらな。」この2つの言葉が相原を絶望の淵につきおとしたのです。
つまり、古代も島も、艦長の言葉で自分自身を納得させるのに精一杯で、他人にそれをわからせる余裕などとてもできなかったのです。やはり沖田艦長はすばらしいですね。
一方、相原は、艦長の言葉を聞く機会もなく、通信班長という立場にあるが故に地球の様子を見てしまい、親の死を目の当たりにし、ついでに古代等の冷たい言葉を受け、ついに精神錯乱に陥ってしまいました。べつに相原が特別軟弱な訳ではありません。むしろ、ガミラスのリレー衛星を見つけ、それがガミラスの罠であることにきづいた途端、正気に戻ったとこなんかは、さすがにヤマトの戦士の一人ですね。

さて、そのガミラスの罠としてのリレー衛星ですが、ヤマト制作スタッフの想像力はすごいですね、毎回々いろんな罠を考えているのですから。特にこの通信衛星というトリックはよく考えています。正面きってせめていく、壮大なバラン星の太陽、デスラー機雷、反射衛星砲、ガス生命体などとは一味違って、精神的に陥れるこの作戦。沖田艦長の言葉をならずとも「みごと」です。ヤマトに沖田という艦長がいなければ、ここから地球に引き返したかもしれません。

戦法はこのくらいにして、今度は内容を見ていきましょう。さっきも書きましたが、この話はヤマト全体ストーリーに一貫して流れるテーマを少し離れて、乗務員の心の動きを扱っています。もし、この回も全体テーマに沿わせるつもりであれば、家族を全部失った古代と、目の前で父を失った相原に共感めいたものを出すように展開してゆくはずです。そうせずに、孤立状態の相原をヤマト乗員に代表させて描いたのです。
面白いことに、ヤマトでは普通の航行中に、銀河鉄道999や、パート2以降のヤマトのように、背景に無意味な惑星が通りすぎるというシーンがありませんでした。これはヤマトの孤立状態を、無限の静寂の中を進んでいく様子を、表現するために位置されているのかも知れません。そうです。ヤマトは孤立していたのです。「ガンダムは補給部隊の存在があるというだけでも、ヤマトより優れている」と言ったバカがいますが、なんという単純で安直な考えでしょう。ヤマトは孤立無援なのです。そして、自分らの死が人類すべての死につながるのです。この「待ったなし」が多くの危機を乗り越える原動力となったのでしょう。人間の真価が発揮されるのはこういうときなのです。

話は変わりますが、他の多くのアニメで宇宙人との戦争を扱ったものが多くありますが、遥か彼方から宇宙を渡ってきて、地球を調べ尽くして襲ってくる宇宙人に勝てるわけはないのです。しかし、ヤマトでは、イスカンダルからの援助、少しの偶然とそれを最大に利用する人間の知恵で勝ってきたのです。ぎりぎりの立場まで追い詰められた人間が死線すれすれで生き延びてきたのです。<

う〜む、今回はいまいちペンの乗りが悪い。
ここらで余談。雪はなんつー格好でねとるのじゃ。男しかいない艦内であんな挑発的な姿でいるとは・・。そして、その姿で古代と島に相原のことを伝えているときの島の視線。あきらかに雪の顔を見てはいませんでした。しかし、古代は雪の顔を見ていた、ということはもう見飽きていたとか・・。
もう1つ。相原の父親の顔はどことなくこの回の作画監督の岡迫さんに似ているような・・。この前アニメージュに顔写真がでてましたよ。見ましたか?

うーん、今回はいまいち。