沖田十三の星の世界 No.11


前回はさぼってしまいました。ごめんなさい。
今回は天体写真について、少しお話しましょう。写真の撮りかたについては、本屋さんに行けば詳しく解説した本がいくらでもあるので、そちらに譲るとして、ここでは「写真の見方」についてお話しします。見方といっても、こういう見方をしなければいけない、といった類のものではなく、こういう見方もあるよという、ひとつの見方の紹介です。

まずは、アンドロメダ大星雲(M31)
これは、非常に有名な天体だから、写真ぐらいどこにでもある。天体写真集と名がつく本なら必ず載っているだろうし、百科事典にだってよくでてくる。ではここで、写真を用意してもらいましょう。

・・・恐れいりますが写真を探してきてください・・・

用意できましたか。 僕の用意した写真を見ると、画面一杯に小さな星が散らばり、その中に大きなアンドロメダ星雲が横たわっています。
星雲の中心部は明るく、外側は雲のようにモヤモヤしています。以前に星の世界No.7で銀河系の大きさとアンドロメダまでの距離について書きましたが、アンドロメダまでの距離を遠いと感じるか、近いと感じるかはあなたにまかせます。人間の大きさと比較すれば、その距離はとてつもなく大きいだろうし、銀河系の大きさと比較すれば、案外近いといえないこともありません。
今、アンドロメダの写真を前にして、どのような距離を感じますか。
想像しようがしまいが、あなたは銀河系の中にいます。そして目の前にある写真は銀河系の中から、銀河系の外にあるアンドロメダ星雲を写した写真です。星雲のまわりにいっぱい散らばっている小さな星々は、全部銀河系の星です。そして、それらの星の向こう側には、星がほとんどない空間があり、アンドロメダと銀河系の間に大きな隔たりを作っています。つまり、小さな星々はアンドロメダよりもずっとずっと手前にあるのです。しかも小さな星々の間の平均距離が約5光年であるのに対し、アンドロメダまでの距離は約200万光年もあります。写真そのままにアンドロメダのまわりには、小さな星が散らばっているのではないのです。
いわば、星をたくさん散りばめたガラス窓を通して、向こうの方のアンドロメダ星雲が見えているという写真なのです。

こんどはかに星雲(M1)です。
写真の用意はできましたか。
これも有名な天体だから、写真くらいどこかにあると思いますが、できれば大きなカラー写真がいい。
僕の用意した写真は、手のひらくらいの大きさで、かにというより、佐渡島のような形をした星雲が写っています。この星雲は、太陽系から約7000光年離れた所にあるのですが、もちろん銀河系の中です。写真には、星雲と一緒に・・大小様々な星が写っています。星雲の向こう側の星は星雲と同じ色に霞んで見えています。
写真上での星の大きさは、星自身の大きさ、明るさや星までの距離、あるいは写真の感光剤の特性などの要因によって決まりますが、ここではややこしく考えずに、単純に距離だけを考えてみます。すなわち、写真上で大きな星=近くの星、小さな星=遠くの星と考えてみるのです。かに星雲は、自分自身が光っているのではなく、星雲内部にある星、あるいは星雲周辺にある星の光によって照らし出されているのだそうですが、その照明係はこの星だろうかなどと目星をつけてみてください。ちょっとした立体写真になりませんか


注:本ページの星雲写真はNASAフォトギャラリーから直接呼び出しています。
興味のある方は、
カニ星雲
アンドロメダ大星雲
まで、