【嘘】(uso)
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『 私は嘘つき 』


私は「嘘つき」です。
嘘つきが「嘘つき」と言っているのだから、実は正直者なのかもしれない。しかし、正直者は嘘をつかないから当然自分を「嘘つき」などとは言わないだろう。と言うことは、・・・やっぱり私は嘘つきなのだ。
そう、嘘つきがたまたま正直に自分を「嘘つき」だと白状しただけなのだ。まあそんな事はどうでも良い。

実は中学生の頃、私に家庭教師というものがついたのである。
某国立大学生の家庭教師である。私はその先生がとても嫌いであった。テストの成績が悪いとゲンコツをするのだ、それも手加減無しなのである。まあそれ以前にその家庭教師の顔じたいが嫌いだった。しかしこればっかりはどうしようもない。「生理的に」というやつだ。しかしテストの度にゲンコツを頂くので、2年生の頃から私はテストが終わる度にウソをついては学校の答案用紙を余分に貰っておいて、それを自分で書き直して採点し、家庭教師にだけは嘘の答案用紙を見せるようになったのである。

少なくともゲンコツを免れるレベルの回答を嘘の答案用紙には書き込まなければならないのである。オマケにその問題を解くプロセスまで家庭教師は聞いてくれるので、いちいちプロセスを説明しなければならなかった。だからテストに出た問題で、間違えたものやプロセスが解らなかったものは、その都度友達に聞いたり先生に教えてもらったりしたのであった。


結局それが「勉強」になり、実際の成績も徐々に上がり、学校の先生からもその姿勢が過大に評価され「推薦」まで貰ってしまったのである。これは「嘘から出た誠」と言うのであろうか。うーん、なんか違う気がしないでもないが、まあよい。

で、その家庭教師はというと、実際の成績も上がり、ゲンコツこそ貰わなくなったのだが、最後まで相変わらず嫌いであった。やっぱり「顔」だけは好きになれなかったのである、「生理的に」と言うやつだ。

こればっかりは、どうしようもなかったのである。



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