【「何が映画か(黒沢明・宮崎駿)」を読んで】
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  • File 23【何が映画か(黒沢明・宮崎駿)】

    日曜日に静岡県立美術館へ行きました。館内の書籍コーナーでデザインに関する本を何冊か買ったんですけど、その時に、「何が映画か」という題名の本が目にとまったのでついでに買いました。黒沢明・宮崎駿の二人は、共に興味ある監督なのであります。

    ◆「何が映画か」(黒沢明・宮崎駿) 徳間書店2200円 1996/10/25−3刷    ISBN4-19-555272-9

    この本は二人が映画について語る「対談」なのですが、アニメと実写という全くの畑違いの二人の監督の対談という設定に、果たしてどんなものかと期待していたわけです。内容は黒沢明の回想が殆どで、宮崎駿は、終始聞き手にまわっています。「対談」というよりは宮崎駿さんがインタビューしているだけなのでは?・・・と少なからず残念に思いました。「演出をめざす若き人へ」という表紙の言葉にも、つい誘われたのですが、まったく本の題名を考える人というのは気を引くのが上手いですね。

    内容は黒沢明の「七人の侍」や50周年記念作品である「まあだだよ」などの舞台裏。特に、どの様にして映画というフィクションに、リアリティを持たせ映像とするかの話で、小道具から演出までの黒澤明監督の「こだわり」の一部が語られています。アニメーションの制作についての話などは殆ど無かったので、私の様にネコバスが好きでミニバスを買ってしまう様な人など、宮崎駿という名前にとても期待しながら読んでしまうと、少なからずガッカリしてしまうでしょう。

    馬は馬銜(はみ)をしたままで餌を食うのか?、という素朴な疑問から、テレビで見られる時代劇の大鎧での殺陣シーンなどの嘘。実際にはあの重い大鎧などは、初めから騎馬での戦いの為の鎧であったもので、馬から降りて戦うという事は、その時点で「負け」を意味し、日本の大鎧がそのくらいだから美術館などに有る中世の鋼鉄性の鎧などは、あの重い鎧をつけて馬に乗り込むのに起重機で吊り上げて馬に乗せなければならない程で、降りる(落ちる)と身動きが取れないなどという様な話など。テレビアニメにもなっている漫画「名探偵コナン」の話の中で、美術館の老館長が中世の鎧を着て殺人を犯すという設定にとても疑問を持っていた私は「やっぱりそうだよなぁ」と思わずうなづいてしまいました。

    そんな訳で、黒澤映画の小道具から効果までのメイキングの裏話などを 読む事が出来るので、「黒澤明」を読むのならば最後まで面白く読む事が出来ると思います。また「七人の侍」や「まあだだよ」を一度でもご覧になった方やこれから見てみようかなという方には、とてもお勧めの本だと思います。

    この本を読んでから、あらためて「七人の侍(レンタル)」をみました。 全編207分間(途中、親切にも「休憩」の文字が大きく映し出され音楽が流れた時には、思わず劇場気分になり小用に立ってしまいました)40年以上の歳月を感じさせない演出と効果に、3時間半近くでしたが全然時間は長いとは感じませんでした。まあ、銀幕とブラウン管というギャップは大きいとは思いますが、見終わってから数日して不思議な事にモノクロ作品であったにも関わらず、その記憶には何故か映画に色がついていた様な感じがするのでありました。という事で、結論としては「七人の侍」「まあだだよ」を二倍三倍面白くする為の本でした。

    本書は1993年の対談をまとめたものですが、時代物談議の最後の方で 宮崎駿が「私も時代劇を一度はやってみたい」という言葉から、ともすれば1997年(今年)公開の宮崎駿監督作品「もののけ姫」のアニメーションに於ける宮崎駿監督の「こだわり」に、少なからず影響を与えたのでは?・・・と、邪推するのでありました。




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